――早くも2枚目。いつの間に作っていたのって感じなんですが、今作を作る上で意識した点は?
「実は4~6月くらいで作ってたんだよね(笑)。今回意識した点は、自分達で作り上げた感を出したかった。トラック、プロデューサー、フィーチャリングも同世代の人たちで、スゲェがんばっているけど、誰かのサイドMCとか運転手、レコード運びやってるとか、まだ芽が出てないやつらをどんどん上げていこうって。具体的に自分の中で何が変わったっていったら余裕ができたのかな。1枚目を出すことのプレッシャーだったり、スタジオに入ってこもるのとか、インタヴューとかも慣れてなかったりとかあったけど、そういうのにもライフスタイルが完全に慣れてきたっていうか」
――アルバムのタイトル『ATLANTIS』=“失われた楽園”って壮大ですね。そんなタイトル通り、幅広い楽曲と共に個性的な作品に仕上がってますよね。
「ATLANTISっていう大陸に興味あって。系でいうと世界ふしぎ発見!とかDISCOVERYチャンネルとかそういうのをガキの頃からよく観てて(笑)。ATLANTIS大陸は昔すごい文明が発達してて、みんなピースに生きてたんだけど、ローマから支配者がきて、国がめちゃくちゃになって、神々が怒って地震や噴火が起こってATLANTISは沈んでしまった…っていう話なんだけど。ジャケ写を撮影しに新潟のサントピアワールドっていう遊園地に行ったら、なんかここATLANTISじゃねぇみたいになって…(ジャケットを手掛けたのは中野正貴氏)。ちょっと古びてて、でも前は栄えてたっぽいみたいな。やっぱあのタイトルにしようよって」
――確かに、ジャケにすごいオーラがありますよね。
「すごいでしょ(笑)。で、本当の意味っていうのはなんか今の日本とかヒップホップとかの現状っていうか、ヒップホップだったらビーフだったり、日本だったら政治とか世界だったら戦争のもめごとだったり、自分達で作り上げた文明を自分達の手で滅ぼすみたいなところがあるっていうか。だから、『ATLANTIS』、あの楽しかった時代を取り戻そうよ、っていうのがこのアルバムのコンセプト。で、さらに狙ったわけじゃなくてかなり後付けなんだけど、曲順は今からタイムラインを逆算して遡る流れなんだよね。「HIPHOP☆STAR」が今流行りな80’sをサンプリングした曲で、「STICKY-ICKY」とかは’90年っぽい、そして「BACK IN THE DAY」、「WALK THIS WAY」で戻るって言う感じで」
――そんなアルバムコンセプトに通じるような社会的なメッセージをこめた「NOTHIN’CHANGE」ですが、今までの作品の中ではなかったメッセージ・ソングですよね。
「うん。ちょうど戦争とかが起きててスタジオに居たときも戦争だったし、雰囲気というか、現実がそういう時だったから、より出たのかな。(この曲を手掛けた)HIROSHIMAからトラックがきた時に、「この曲結構ディープだよね」っていろいろ話してて、トラックの構成的にはフックがない構成だったから、じゃあフックなしに全部続けてヴァースをやったらおもしろいんじゃんみたいな話をしつつ、テンション的にもワンマイクみたいな感じでやったほうがいいかもってことで、座ってレコーディングしたりとか。座って語ってるみたいなレコーディングをしつつ、だんだんテンションを上げていくみたいな(笑)。それがこの曲の録音の仕方だった」
――前作のテーマだった日常から今作では全体的に幅広いメッセージ性のリリックだと思うんですが、それでもストレートで現実的ですよね。
「常にね。常に実体験。自分に正直なSPHERE(笑)」
――じゃあ、もちろん、このストレートなラヴソング、「FALLIN’」もですよね?
「もちろん。これが一番、俺ができて他の人ができないことでしょ(笑)。まあ、「LOVE YA」もそうだけど、ある意味、曲を人に捧げるとかって最高のプレゼントだよね」
――納得です(笑)。で、1枚目より、日本語と英語のバランスがとれていて、SPHEREらしさが出てる気がしました。特にDABO&TOKONA-Xをフィーチャーした「YA HEARD!? Pt.2」は英語のリリックが効いてます。
「1枚目では逆に日本語を使おうって意識してたのかな…。「YA HEARD!? Pt.2」は俺が英語でやることでDABOは相変わらずクールにマイク握りつつ、TOKONAはうぁ~って感じのそれぞれの個性が激しくさらに出たよね。リリックもみんなそこに行って書くタイプで、フックもそれぞれここはこういう感じでってみんなブース入ったら即興だったね」
――確かにライヴ感が出てるかも。意外といえば、D.O. (雷家族)も…。
「D.O.はよく移動中の羽田空港とかで会うんだよね(笑)。なんか、おれ一匹狼系だから常に、そこにいるっていうより、いきなりここにいて、あそこにもいてって、いろんなところにいるって感じかな。一個のことがずーっとできない。飽きっぽいのかな。常に新鮮なものを求めちゃうんだよね」
――でもそれはある意味刺激となって今作でも反映されてますね。でも、今作ではより明確に自らのクルー、CIGをレペゼンしてますね。
「DJのMAROKとL-VOKALと俺で CIGというクルーをやってるんだけど、『INFLUENCE』のツアーを廻ったりして、みんなにも俺らがんばるよっていう意識が出てきて、じゃあ、どんどんフックアップしていこうよって」
――そういえば、GICODEの11/19にリリースされるアルバムもクルー名が…。
「そう。JESSEのクルーEDO、とCIGで『E・D・O・C・I・G』(反対から読んで!)。GIはやりたいっていうのがずっとあったし、とにかく自分達の好きなことを形にしたいって。ホント、1ヶ月くらいのタイトなスケジュールで作ったけど、仲間全員で作った感じが出ているから聴いて欲しいな」