<BBOY PARK2003>期間中に行なわれたイベント【神輿】のレポート

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8月15日、川崎クラブ・チッタでヒップホップ・イベント<神輿>が開催された。ここ数年、拡大化、多様化の一途を辿ってきた日本のヒップホップ・シーンだが、今年にきてそれもとうとう飽和状態に至ってしまった感は否めない。キック・ザ・カン・クルーのクレヴァという説明するまでもない大スターにかわって、MSCという知る人ぞ知るアンダーグラウンド・クルーのリーダー、カンがチャンピオンになった2002年と、判定の結果に満足がいかなかったアーティストの抗議に端を発するトラブルが起こった<BBOY PARK2003>のMCバトルを、どちらも体験した人にはそれが嫌というほど実感できただろう。例えばミリオンに手が届きそうなアーティストと、数えるほどの人しか知らないアーティストが対等に扱われるイベントがロックで考えられるだろうか? それが健全に機能してきたのが昨年年までの<BBOY PARK>であり、それが崩壊したのが今年の<BBOY PARK>だ(<BBOY PARK>はシーン、と置き換えられる)。

前置きが長くなったが、<BBOY PARK>期間中にあえてぶつけられたイベント<神輿>とはつまり、その拡大化、多様化の飽和状態に異義を申し立てるイベントであり、ハードコアな側面からシーンを再編しようとする試みだったのだと捉えることは出来ないだろうか? 今回の目玉がまさに日本のハードコア・ヒップホップの象徴的存在である雷の再結成ライヴであり、会場も古いリスナーにはお馴染み、その雷がイベント<鬼だまり>を開催していた川崎club CITTA'が選ばれたことなどからいっても、そう考えない方が難しい。この日会場に集まったヘッズも思いは同様だったに違いない。

その熱気と言ったら、雷(MCの中心となっているのはリノ、ツィギー、GKマーヤン、ユー・ザ・ロック……だ!)がステージに現れた瞬間、ぎゅうぎゅうだったフロアが、誰もがステージに向かって走り出したせいで、後方がスカスカ(前方は……よく怪我人がでなかった!)になってしまったぐらいだ。イベントは、妄走族に始まり、風林火山、ラフ・ライマーズ、走馬党、M.O.S.A.D、マグマMC'S、ボーイ・ケン、そして雷と続いた雷家族やヤング・ガンズを中心とした前半と、ロメオ・SP(アレルギー+サブゼロ)→オジロ・ザウルス→UBG(ジブラ、ウヂ、他)→ダブル→アイ→ダボ→ハイD→ソウル・スクリームという、フューチャー・ショック、デフ・ジャム・ジャパンを中心とした後半の2部構成。スタイリッシュな後半よりも、荒々しい前半に盛り上がりのピークがきたのも、この日のヘッズの気分のあり方をよく表わしていただろう。日本語ラップ・マニアのために、今年中には発表されるという般若のソロ・アルバムからの曲の素晴らしさ、M.O.S.A.D、マグマ・MC'S、交通事故から復帰したオジロのマッチョによる東京初披露(ひょっとして史上初なのか?)、ヤング・ガンズのマイク・リレーなどが見所であったことも記しておく。

文●磯部 涼
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