――『American Life』を自分で聴いて、アーティストとして今までと最も違うところ、あるいは飛躍したと思える部分はどこですか?
MADONNA:ソングライターとしては明らかに成長したと思うわ。自分でも曲作りが上達したと思うけど、多分それは数年前にギターを始めて、全曲ギターを使って書くようになったことが最大の要因ね。
――他のプロジェクトに参加したことが、アルバム制作に影響を与えたと思いますか?
MADONNA:このアルバムは一気に作り上げたものじゃないの。ちょくちょく中断して他のことをやってたわ。自分のやってることを形にする十分な時間が欲しかったから、一旦中断してロンドンでライヴをやって、戻って変更を加えて、それからジェームズ・ボンドの曲をやるのにまた中断して――あの時はキツい仕事が数カ月続いたけど――その後、夫と作った映画のプロモーションをやるのにまた中断して。いろんなことが起こって、いろんな経験をして、その度にアルバムの仕事に戻ってたわ。こういった経験がすべてサウンドや私の曲作りに表れているはずよ。
――イラクで起こっている戦争と「American Life」を巡る論争についてどう思いますか?
MADONNA:そうね、確かに今イラクで起こっている戦争は、すべてに影響していると思うわ。誰もがテレビに釘付けで、本当のところは誰にもわからなくて、皆が怯えてて。でも、私には皆が大して本気で心配しているようには思えないの。ある意味エンターテイメントになっているか、もしくは一時的に気を取られてるだけ。分かるかしら?
要するにこのビデオもそういう意味なの。だって冒頭からして究極の娯楽なのよ――ファッション・ショー、キャットウォーク、綺麗な人たちに完璧な男、身長180cmもあるアマゾンの女たち。社会全体が、そういったイメージを手に入れたり、それに憧れたりすることに取りつかれてるの。でも、私は実際に世界で起こっていることの対比としてそれを必要とした。イラク戦争じゃなくても、いつだってどこかで戦争は起こってるわ。それが今の世の中の二律背反というか、パラドクスなのよ。だって、一方では誰もにとってもすごく便利な世の中になってるわよね。私たちは技術の進歩によって、あらゆるものを生み出してきたわ。時間や空間、一瞬にして崩壊し消滅するものまで。だけど、一方ではかつてないほど混沌とした世の中になってしまった。だから、このビデオは、“ああ、そう、こんなことが起こってるのね。じゃあ、この先どうしたらいい?”って意味なの。私から皆への問いかけなのよ。
確かにある意味では、すべてが完璧なタイミングで起こっていると思うわ。まるで韻を踏んでいるかのようにピッタリよね。でも、私がこのビデオを企画してコンセプトを立てたのは去年の11月で、アルバムのリリース時にこういう世の中になっているなんて知る由もなかったのよ。
(編集者註:3月31日、Madonnaはイラクにいるアメリカ軍に“敬意を表し”、このビデオの発表中止を決めた)
――あなたは様々なことを実に上手くこなしていますが、自分では何が一番やっていて楽しい、もしくは得意だと思われますか?
MADONNA:自分ではとてもいいダンサーだと思うわね。
――全くいわれのないことについて、不当に非難されていると感じることはありますか?
MADONNA:そうね、私が出ている映画について批判したり暴露したりすることとなると、信じられないくらい世間は残酷になると思うわね。少なくともここ最近の何作かはそうだったわ。彼らは映画について批評しているのではなく、個人的に私を攻撃しているのよ。それは明白。彼らだってそれを隠そうとさえしないもの。
――誰にも気付かれないで外を歩けたら、もう少し人生を楽しめるのに、と思うことはあります?
MADONNA:いいえ。有名になる前に起こっていたらよかったのに、と思うことはたくさんあるけどね。そんなのは些細な問題よ。
――あなたが自分の名声の巨大さに対処するうえで、心に残るアドヴァイスをくれた人はいますか?
MADONNA:特に誰がどんなアドヴァイスをくれたということは言えないわね。実際、上昇気流に乗っている時に、有名になることについてアドヴァイスをくれた人なんていないもの。でも、Gabriel Garcia Lorcaが言ったことは気に入ってるわ。“名声は誤解の1つの形である”という言葉なんだけど。これは忘れられないわね。
――キャリアという視点で振り返ってみて、あれは正解だったな、と思うことはありますか?
MADONNA:ギターを習ったのは本当に正解だったなと思う。これまでずっと、MirwaisやWilliam Orbitをはじめ、数多くの本当に才能溢れるミュージシャンやソングライター、プロデューサーと組んで仕事をする幸運に恵まれてきたこともね。自分でもその辺はいい勘してると思うわ。これも得意なことの1つね。才能を見出すこと。
――著名人のプライベート・ライフに興味はありますか?
MADONNA:そうね、人生のお手本にしてる人はいるから、ある特定の人たちのことについては知りたいと思うわ。
――世間があなたのことを知りたくてしょうがない、という事実に共感できます?
MADONNA:人々が私について知りたいのと同じくらい、私は他人のことなんか知りたくないわね。
――「Hollywood」という曲の中に、“I'm bored with the concept of right and wrong ”(正と悪という概念に私は飽き飽きしてる)という部分がありますが、母親になった今、正と悪の区別が子育てに影響を与えていますか?
MADONNA:ええ、でもあの曲で言っているのは、“政治的に正しい”かどうかってことなの。あれにはちょっとイライラするのよね。
――ご自分のキャリアを振り返ってみて、最もエキサイティングだったと言えることを1つ挙げてください。
MADONNA:初めてツアーをやった時に決まってるじゃない。生まれて初めてのショウ、今でも本当によく憶えてる。ワシントン州シアトルで、『Like A Virgin』のプロモーションだったんだけど、初めてステージの上を歩いた時のことは決して忘れないわね。それから、キャリアを重ねる中で、いろんな場所でいろんな瞬間があったわ。Blond Ambitionツアーがあって、『Evita』という映画に出て、ああいう曲もすべて勉強して、映画製作にも携わって……すべての経験がエキサイティングだった。ここ数年はミュージシャンになることを学んでるし、これまで光栄にも一緒に仕事をすることができた素晴らしい人たちもいる。すべてが最高ね。
――年齢を重ねることによってキャリアに伴う危険、もしくはそういったことに対する恐怖心はありますか?
MADONNA:誰でも何かに対する興味がなくなったら、他に興味を持てることを見つけるものでしょう? それを恐れたりはしないわ。
――この15年間にあなたが出会った人は、おそらく皆あなたから何かを求めているのではないかと思いますが、そういった考えについてはどう思いますか?
MADONNA:そうね。でも、逆に私に何かを与えたいっていう人だっているし、それはいいことよね。
――そうしたギヴ&テイクには上手く順応できると?
MADONNA:私は物事を上手く運ぼうと思っているだけ。要するに、お互い1つの回路の一環なのよ。今あなたは私に質問してるわよね。でも私は自分の作品について話すためにここにいる。要するにあなたも私もこのインタヴューから何かを得ているわけ。だから、あなたが私を利用しようとしているとか、そんな風には思わないってことよ。
By Dave DiMartino (C)LAUNCH.com