『Phalanges』 Nanophonica/musicmine NPCD-006 2,100(Tax in) 1 Stop Funk 2 Ohh! Baby 3 Echo Logic 4 S.S.S. 5 The Fever 6 口笛のバラード |
●トークイベント | 2002/7/27(土) 新宿ロフトプラスワン 「札幌兄弟仁義~饗宴の盃!」 出演/増子真二(DMBQ)、増子直純(怒髪天)
[問] ロフトプラスワン 03-3205-6864 | ●ライヴイベント | 2002/8/9(金) TOWER RECORDS 渋谷店 B1 「Phalanges 発売記念 FREE LIVE」 [問] TOWER RECORDS 渋谷店 03-3496-3661 | | ――タイトル『Phalanges』の意味は?
増子真二(以下/増子): ホウジンです。方角の“方”に、陣地の“陣”。方陣。
――またどうしてそんなタイトルに?
増子: バンドの音の成り立ちに近いかなと。ドラムがいて、ベースがいて、ギターがいて……バンドって方陣を組むようなもんじゃないですか。そんな感じです。
――ということは、今作は特にバンドらしい面を意識したのですか?
増子: いや、そうでもないんです。今回はちょっとプロセスが変わってて、今、秋にリリースするフルアルバム作ってるんですよ。で、20ちょいくらい曲ができて。ちょっと多いねぇ、ストックしておくのも好きじゃないね、じゃ、先にちょっと出しておこうかってことになってね。曲の傾向で振り分けた結果、先に出すのがこのミニアルバムなんです。
――なるほど。で、相変わらずですが、今作もDMBQのサウンドは一歩踏み込められれば快感の世界ですが、そこを越えられない人にとっては苦痛の音楽になってますね(笑)。
増子: ああ、そうかもしれないですね(笑)。
――そういう点で、聴きやすい方向へのサービス精神は考えないですか?
増子: なにがどうサービス精神なのかってのもありますけど、そういうサービス精神はないですね。でも僕らなりのサービス精神はありますよ。それはいわゆる一般的な尺度でいう音楽の楽しさ、聴きやすさってのとはちょっと違うけど、DMBQってそんなにマスなものではないなって自分達でも最初から思ってるんで、そこに意識を広げていこうって感じはハナからないわけですよ。好きな人が聴いてくれればいいし、新たに好きになってくれる人がいればそれはそれですごくありがたいんだけど、自分達のやりたいこと、好きなことを凝縮していくことが、自分の音楽と関わりを持とうとする人たちへのサービス精神だと思いますよね。
――具体的にそのサービス精神が形になっているところって、なんでしょう?
増子: 感覚だと思いますね。僕ら、長渕剛みたいに戦争に対する強いアンチテーゼがあるわけでもなく、熱いラヴソングを歌うわけでもなく……世の中に対する不満はな~んもないんですよ。生かしてくれてありがとうって。だからムードですよね。それ以外ないです。
――そこをリスナーに“提示”するという姿勢については?
増子: うん、そこらへんを人に対して嗅覚的に、感覚的に汲み取りやすくしてはいるんですが、そういう感覚がハナからない人には……まったく有効じゃないですよね。あるOLさんがハーレクイン・ロマンスを読んで「すごい感動的な恋愛小説だわ」って思っても、僕なんかは、「ええ?」って思うようにね、共通項がない者同士っていますから。だからDMBQのリスナー層の間口を無理やり広げて……って野望はないですよ。それにこうやって作品を出していくのも、ある意味“現状報告”だと思ってる。やっぱりレコーディングってそれはそれで楽しいことだし、意外とダイナミックな作業だったりするんですよ。それを味わった以上はやっていきたいなと。
――なるほど。ところで、今作『Phalanges』は6曲入りで、DMBQなりにバラエティに富んだ楽曲が揃っていますが、1曲目にヘヴィな「Stop Funk」を据えて「これがこのアルバムの顔です」という感じにしたのは?
増子: ただその曲が1曲目にしか収まらなかったんです (笑)。曲順としてね。
――5曲目「The Fever」と、6曲目「口笛のバラード」のヴォーカル・スタイルが今までとは違い、叫ぶ歌い方から、かなり力の抜けた歌い方をしていますね。
増子: ちょっとだらしなく歌ってみましたね。今までライヴでできる状態を考えて曲や歌を作っていたんだけど、やっと今レコードはレコードで完結する曲があってもいいかなって。あとね、「口笛のバラード」は実は練習曲だったんですよ(笑)。コード進行とか簡単でしょ? DMBQで一度こういった和風な、昔の歌謡曲みたいなものができないかなと思って、試しに持っていって、いろいろこねくり回していたんだけど、それがうまくいって、みんなが気にいって。
| ▲ユルユルと引き込こんでいくしゃべり方の増子真二サン | ――前回リミックス(『Resonated』)が出ましたよね。そこからも影響を受けたとか?
増子: ん~そういった面はないですね。僕らがやるべき作業を経て形となったものをリミックスに使ってくれた、って思ってるから。でも、DMBQを素材として使ってくれたのはすごく嬉しかったですね。
――今、秋リリースのフルアルバムをレコーディング中ということですが、そちらはどういったアルバムになりそうですか?
増子: ん~。いい音で録れてるんで…、ま、ロックなアルバムになると思いますよ。ん~、音はやっぱりうるさいですね。僕ら……機材が好きなんですよね、結構。たとえば、これは会社の物ですか?(といいつつ、編集部がセッティングしているソニーのビデオカメラを指差す)。こういったビデオ好きならば、レンズはソニーじゃなくてカールツァイスでワンランクアップのがほしくなるじゃないですか。それみたいに僕らも楽器機材が好きで、……マッチョなアンプとかあるんですよ(笑)。繊細なヤツもヒステリックなヤツもいる。機材って楽しいんですよ。で、僕らのライヴだとどうしても骨太なヤツを選ぶ。そうすると音がデカくなる。ま、ヤツらは俺らの兵隊ですからね、ガンガン使っちゃうんですよね。
――では、最後に、多趣味な増子さんの、今のマイブームは?
増子: 中世ブームですね! いろいろ本を読んでるんですけど、特に中世ヨーロッパ後半ですかね。歴史はあまり好きじゃないんですけど、宗教的な弾圧があったり、魔女であったりがおもしろくて。社会史には暗黒的な時代と言われてて、国と国とが血族で分かれているんですよ。増子ちゃん家みたいな感じで、増子ちゃん王国がある。で、たとえば隣にバークス王朝があったとしたら、サブ・バークス王朝もあると。で、増子ちゃんの娘に「ちょいとバークスさんのところ嫁に行ってこいよ。その代わりにサブ・バークス王朝を増子ちゃん王国の支配下の、サブ・増子ちゃん王国にするから」とかなるんだよね。で、しばらくしてそこにいる別の権力者が気に食わなくなって、増子ちゃんに焼きを入れようとして分裂してまた国ができる。で、嫁に出した娘が、実は増子ちゃん母が大嫌いで、嫁に出たことをいいことに断絶して、増子ちゃん王国は没落していったりで。で、庶民は庶民で振り回されてるんだけど、どっこい……。
その後、“中世話”は延々と続き、……筆者が訳分からなくなっていると、カメラマンS氏に向かって話し続けていた増子サンでした。取材/文●星野まり子 | |