「他の誰かのショウを観てから俺たちのショウに来るとなると、ミルクシェイクとスピードボール(訳註:麻薬の一種)くらいの差があるだろうよ」――Diamond David Lee Roth、Sammy Hagerとのダブル・ヘッドライナー・ツアーを称して。
いずれも、かつてVan Halenのフロントマンをつとめ、一時期は果てしない対立関係にあるとされていたDavid Lee RothとSammy Hagerが、この夏、ダブル・ヘッドライナーのツアーに乗り出すことを発表し、仰天したファンや評論家は、信じられない思いに大きく開いた口が塞がらないままでいる。どういうこと? 和解したわけ? Van HalenとDaveの復縁なら、そりゃあ微妙に可能性はありそうだったが……。よりによってあのSammyとの復縁なんて、まずありそうになかった――というか、永遠に不可能と思えていたのに。
これでもまだ驚かし足りないとばかりに、このダイナミックなデュオ――ロック史において最も考えにくいチームの1つともいわれる――は2人そろって会見し、ツアーの日程を発表して、困惑したマスコミからの質問を受け付けるというじゃないか。この記者会見で一番意外だったのは、敵対していると思われる2人が居心地良さげに同席しているというシュールな光景ではなく、実はその仲の良さと、何ともダイナミックで陽気でプロフェッショナルなロックンロール・ツアーになりそうだという予感だった。これはものすごいチームだぞ。'02年の夏は、もう何年も観たことのない巨大ビーチパーティにようやくお目に掛かれそうだ。
さて、その記者会見が終わって、私はDaveと差し向かいで彼のホテルの部屋――思った通りというか期待通りというか、そこは小人やモデルたちで溢れ返っている――で、来たる“Sam & Dave”ツアーや彼の新しいDVDについて語り合っている。ダイヤモンドな彼は、'96年の不運のVan Halen再結成からこちら、必ずしも第一線を退いていたわけではない。自らのDLR Bandを率いて1枚、大作アルバムを発表した後、自らのルーツを再認識するようなツアーを何本もやっているし、一度はVan Halenの曲のみでセットを構成してファンを大喜びさせもした。そして、ここ1年取り組んでいたのが、もともとは長めのEPKの予定だったものが発展に発展を重ね、Dave TV時代のコントから最近夢中になっているという拳銃、テクノ、海賊、そしてマンボまでを網羅することになったDiamond Daveの長編映画だ。
「そもそもは、マスコミに送る資料を作ろうと考えてたんだ」と、ハイネケンをすすり、タバコをくゆらせながらDaveは力説する。「“Daveはこのところ釣りに凝っていて、今度スタジオに入る予定で、最近のお気に入りはDjango Reinhardtです”なんて文章にするよりは、カメラを持ってビーチへ出て、Djangoを流せばそれが一番俺らしいじゃないか! 俺は歌って踊る人、だからな。職業欄にもそう書いてるし。自腹を切って作るなら、ビデオのほうが俺にはよっぽど理にかなった選択だ。60万ドルは優に出したんだぜ。文字通り、財産を投げ打ったってやつさ。俺ももう、“人生、こんなものさ”って生活は卒業したんだ。だって今の俺の毎日は、ファンタジーと文学で溢れてるんだぜ」
様々な状況(地下道やら、水中の洞穴やら、うっそうとした熱帯雨林やら)を舞台に、様々な音楽に合わせて小人や激マブな女たちと走り回るDaveをフィーチャーしたDavid Lee Rothの『No Holds BBQ』は、目のみならず耳と脳味噌の保養にもなる。剣を振り回す彼、完全武装の彼、なまめかしい豊満な美女たちと戯れる彼……と、こちらの予想を少しも裏切らない。
このDVD(彼のウェブサイト、davidleeroth.comを通じてリリースされ、最終的には一般発売になる予定)では、DaveとそのバンドがVan Halenの曲もいくつかやるし、ロックの名曲あり、テクノの再解釈あり、味のあるサルサのグルーヴありと盛り沢山だ。
「これだけいろんなことをやってて、しかもそれが映像なんだから、瞬きなんかしてらんないだろ。これを買えば、Fast & Furiousから、Mystikalのヒップホップから、最新Metallicaまで付いてきて……おまけに、おっと、今のはMorisetteじゃないかぁ? みたいな調子なんだから、瞬きしてるヒマはないよ。こいつはサウンドトラックなんだ。いいかい?」
「しかもチャンネルが変えられるってわけ。『Beavis & Butt-head』がビデオを片っ端から途中で変えちゃうの見て大笑いしたの、覚えてるか? みんな家でやってたろ? 俺は今もやってるよ。俺が1つだけこだわってるのは、信憑性のある音楽をパフォーマンスし続けていくってことでね。例えば俺がカントリー&ウエスタンを歌ったんじゃ、ちっとも信憑性はないが、ダンスフロア向きのナンバーを歌えばめちゃくちゃ信憑性があるってこと。何たって俺は、Studio 54の時代に育ったんだからさ」
「あと、DVDにはアルバム1枚分の新曲も収録したんだ」「他にも、ボツになった写真や映像や壁紙がごっそり入ってるから、ご自由に。レコードと一緒に壁紙も手に入るんだぜ! それでも値段はそこらのディスクと変わらない。家族みんなで楽しめる3時間半だかの素材が、だよ。まぁ、家族の構成にもよるけどさ!」
実は去年の夏、Daveをツアーに送り出し、シアトルのBumbershoot Festival出演をはじめ、アリーナ級の観客を前に立て続けにショウをやって大成功を収めるきっかけになったのが、このDVDだった。引き続き昔の曲に絞ってファンを喜ばせることに努めたと大絶賛されたDaveだが、実は裏側では、資金がこの『BBQ』に還元されていたのである。
「あの一連のギグは、この映画を完成させる手段と考えていたんだ」とDaveは説明する。「“もうひと仕事しようぜ。このまま頓挫させるのはもったいない”ってことでね。金欠になってばかりいたんで、1年もかかっちまった。B級バラエティと違って、第一級の撮影だったから。スタッフはみんな、Van Halen当時に組んだ連中で、アートディレクターは“Hot For Teacher”のビデオをやった人だし、衣装の女性は“California Girls”とか、そんな具合。それぞれやっぱり業界で力をつけていて、第一級だから値段も一級でさ。俺は何度もツアーに出ては、次の支払いに当てる羽目になったんだ。でも、おかげで反応はものすごくいい」
反応の良さの一環として、Daveは業界のとある重鎮から、Van Halen再結成を待つのにしびれを切らした元Halenのシンガー同士ということで、Hagerと一緒にツアーをしてみないかと持ちかけられた。実のところ、Daveはこの考えに抵抗がなかった。一度顔を合わせてみれば、かつて泥を擦り付け合っていたフロントマン同士も、いくさ話に花を咲かせ、カクテルをちびちびやりながら、思った以上に共通点が多いことに気が付いたのだという。
「もちろん、ライバル意識はあるよ。健全な競争意識がね。お互い、予断は許さないだろう。でもそれは、優秀なラグビー・チームがそうなのと同じで、夜も更ける頃にはもう、ビールまみれになってるだろうよ! 俺はどっちにしろ、この夏はツアーに出るつもりだったし、何か予想もつかないような、世間をアッと言わせるような、何だそれ? と思わせるようなことをやりたかったんだ。ただ黙って受け入れたのかって? う~ん……でも、Dylanのコンサートじゃないんでね!」
あの9月11日以降、アメリカが初めて迎える夏とあって、古き良きドンチャン騒ぎのロック・パーティが町に戻ってくるには絶好のタイミングだ。それにもしかして、もしかしてだけれども、対立しているように見えるロックの大物が2人、手を携える姿を見れば、他の大物たちも目が覚めるかもしれない。SamとDaveが平和にやれるなら、世界の指導者たちにできないわけはないだろう? こんな困難な時代にあって、我々アメリカ人が世界に向けて発することのできる最大限にポジティヴなメッセージがこれなのかもしれない。甘ったるいって? まぁ、確かにそうだけど。
「今回のショウは、単なる“楽しい”って言葉とは違って、少なくとも自由な世界は生き残っているんだっていう思いを象徴しているんだよ」とDaveは宣言する。
「“楽しい”なんて言葉は、俺に言わせりゃドクター・ペッパーのCMみたいでさ。俺たち、どっちもペッパーじゃないしな。“彼はペッパー、きみもペッパー”…って、俺たちはペッパーじゃないっての。俺たちは、ピチピチ前向きの頭ブッ飛びの脳味噌焦げ焦げのエロエロで上がるも下がるもてっぺんもドン底もハレルヤも地獄もどんと来い主義ってことで。脂肪はゼロだが、砂糖はドッサリ(Fat-free and loaded with sugar)さ!」
上手い!
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