バークスメンバーへ、本人からメッセージをいただきました!
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| ススムヨコタの新作『Sound of Sky』は、文字どおり「空」をイメージして作られたという。広がりのある空の下で、深呼吸をする感じ。もしくは、喉ごしのいい天然水が、ちょうどいい浸透圧で染み入ってくる感じ。
「ダンスミュージックを作ろうという気負いなく、素直に作った」と本人が語るように、新作は驚くほど“自然体”なのだ。ヨコタ氏が届けてくれた新しい音が、ぎゅうぎゅうのフロアで、半ば酸欠状態で踊るためではないことは明らかだ。彼が得意としてきたデカダントな音とグルーヴの高揚感を求めるとしたら、その期待は、良い意味で裏切られるだろう。
'92年、独フランクフルトのレーベル、ハートハウスから世界デビューし、世界最大のテクノ・フェスティヴァル<ラヴ・パレード>に日本人として初参加したススムヨコタ。その後、多様なジャンルの音を自らに取り入れ、10名義以上でリリースされた膨大な数の作品は、東京のみならず、世界中のクラブ・シーンに多くの影響を与えてきた。
そんなヨコタ氏が世紀末のクラブ・シーンに残した置き土産が、最高に濃密でゴージャスな前3部作、『1998』『1999』『ZERO』だった。そして、デビュー10周年目となる今年にリリースされた『Sound of Sky』では、これまでの繊細さと力強さはそのままに、まるでヨコタ・サウンドを“ろ過”させたような、純度の高い仕上がりを見せてくれた。
「どちらかと言うと、3部作のほうが時代の空気を感じ取って、どういうふうに時代が変わっていくかっていうことを楽しんでいたけれど、今回は時代っていうよりも、より自分を見つめていった感じです」
繊細なローズピアノの音色が美しいこのアルバム。内面的で情緒的な旋律は、聴く側にとってイマジネーションの空間の中をふわふわと漂う。思えばこの穏やかな浮遊感は、最近東京を離れ郊外に移ったという、ヨコタ氏自身の引っ越しにも理由があるようだ。
「今までは、東京とか渋谷だったりとか、シーンだったり。割と新しいものがインスピレーションだったりしたけれど、最近はやっぱり自然であるとか、山であるとか(笑)。今までずっとクラブ・シーンの中にいて、同じ事を繰り返すのが嫌だっていうのもあるし、まぁ、飽きちゃったっていうのもあるんですけど、離れることによってまた違う音楽ができるっていうこともあると思うんです。離れたからって、そういう音楽を作らないのではなく、“違う視点から見る”っていうこともあるし」
なんと、ここしばらくはDJの活動も控えめにしたいとのコメントもあったが、それは自身の活動の「緩急をつけるため」と言う。
「今って、クラブ・シーンにしても、いろんな音楽が出て、いろんな人がいる。そういう中で、自分が溺れてしまうのが嫌ですね。そうならないために、自分をはっきり出していかなくちゃいけないと思う。周りがどうのこうのっていうよりも、自分のやりたことをはっきり出せる環境を作りたい。それは曲作りをするところでもそうだし、活動するところも、レーベルもそうだろうし。そういうのは、自分の中ではクリアになってきているんですよね。けれど、一作品一作品、自分の作品をちゃんと打ち出していくことを、もっといい状態でやっていきたいっていうのもあるんです」
これまでのように、いろいろな名義を使わず、“ススムヨコタ”名義のみに絞って活動するというのも、そのためなのだろうか。
「そうですね。あれから、もっと前に進んだし、もっとはっきりしてきた。いろんな名義を使っていた頃は、自分の中でもちょっとわからないっていうか、逆に一度広げて、自分を混乱させるっていうのかな。一度ぐちゃぐちゃにしちゃったほうがいいのかなっていうのがあったんですよ。それで、あえていろんなものをいろんな名義で出してきたんですけど、今はそれを絞る時期。3~4年前から名前もススムヨコタだけにして、僕全体からのひとつの作品っていうのを見てもらいたい」
このインタヴューが行なわれた2月初旬、新作のリリースから間もない時期でありながら、ヨコタ氏は自身のレーベル、SKINTONEから出される次の作品を制作中(ひとつは6月にリリース予定)と訊いた。
「これからの作品は、もっと『Sound of Sky』みたいなものも出てくると思う。ボケッとする時間とか、夢心地な時間だとか、そういう環境の中じゃないとできない音楽を、多分これからもっともっと作っていくと思うんですよね」 |
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