メンバーもサウンドも流動的。それがAOAだ。

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メンバーもサウンドも流動的。それがAOAだ。

形のない音響空間でふわふわと遊び、次第にリズムがビルド・アップ

渋谷クラブ・クアトロ
【3 Hours Live】
2001.08.13

ライヴの模様はこちら↓



【出演メンバー】
E-da(Drum、Percussion、Machines
HILAh:Bass、Machines
TATEYAMA:Machines、Piano、Keybord
SINKICHI:Machines、Electoricdrum、Drum BRAVO
KOMATSU:Guiter
MIYA:Dedgeridoo
AI:Percussion
Shimon:Percussion
GUITOO BRAVO:Guitar
KOMATSU:Guitar
YAMAMOTO:Guitar

最新アルバム

『emotion vacation』

Comma 発売中
IDCC-1005 2,835 (tax in)

1 Passport For Life (Ready to Go?)
2 Quiet Beach Film (Daydream Groover)
3 Zoo Zoo B.B.Q (Drive Through Party Underground)
4 What's This Heat? (What's This Meat?)
5 Dolphin Rider (Silent Summer's Theme)
6 New Born New Life (Still Walking

アルバム『Emotion Vacation』の発売に合わせて、8月13日、渋谷クラブ・クアトロで【3 Hours Live】と銘打たれたAOAのライヴが行なわれた。

当日は、その名の通り3時間に渡る長丁場(実際は開演が押したため、2時間半程だったが…)。そんな配慮か、会場の後ろにはゴザが敷かれ、レイヴ・マナーで飾り付けられたチルアウト・スペースが用意され、準備は万端といった感じだ。僕もまずはビールを飲みながらここに陣取って、客入れとして流れていた緩めのエレクトロニカに和む。

ぶっちゃけた話、僕はAOAの演奏する音楽が大・大・大好きなわけではないし、彼等が近い所にいる日本のトランス・カルチャーの良き理解者でもない。彼等が持つ闇雲なポジティヴィティには茶々を入れたくなるような、性格の悪い人間なのである。そんなタイプへの配慮とも取れるような(もちろんそんな訳はない)このスペースには、普段は僕が積極的に行くようなアンダーグラウンドなクラブ・ミュージックのイベントでは絶対見かけないような、所謂ギャルっぽい女の子も不安そうに座っていて、友達に促されて恐る恐るフロアに向かって行ったりする。

なるほど。トランスの人気はこんな所にまでだ。彼女に続いて(結構可愛かったんだよ)僕もフロアに行って周りを見渡せば、ごりごりのレイヴァーだろーなと思われる人と、レイヴ・ファッション好きなオシャレな子、ロック・ファン、そしてさっきの一見場違いな子達が入り混じった感じだ。もちろん、思いっきり見た目だけで判断してるが…。

そんなスノッブな気分を味わっていると、メンバーがゆっくりとステージに現われ出し、かかっていたエレクトロニカに合わせてセッションを始める。実にスムースなオープニング。

しばらくは形のない音響空間でふわふわと遊ぶ、といった感じだったが、徐々に打ち込みのドラムが4つ打を刻みながら中心を作り出していく。それに合わせてセッションの方向が定まり、グルーヴが徐々に立ち上がってくる。

それが30分位経つと、リズムがビルド・アップされ、それまではふらふらと体を揺らしていたフロアも爆発する。ドラムはブレイク・ビーツを意識したような人力ループに方向を転換し、主役に躍り出る。あとは30分強、完璧にグルーヴを保ちながら、ぐいんぐいんとこの場を引っ張っていく。そして、実に上手い所で、フロアをじらすようにメンバーは演奏を止め、ステージ裏に下がってしまう。

ふぅー。まだ半分だ。とりあえずチルアウト・スペースに戻る。AOAは流動的なグループなので、レコーディング/ライヴによってメンバーが違うのだ。

さてさて、後半戦はスタートから急激に演奏のテンションを上げていく。僕は完全にもう一度フロアに出るタイミングを失ってしまった。フロアは完全にロックされていたし(トランスしていたと書く方がこの場合、正しいか)、不満を覚える人もいなかっただろうが、僕にはそのグルーヴはとても雑なものに感じてしまった。まぁ、好みの問題だろう。

しかし、この日も彼等の演奏は、生でやっているのと、インプロヴィゼーションが中心であるのが信じられないくらい、しっかりとダンスミュージックとして機能するものだった。そこがAOAを始めとする日本のジャム・バンドが、海外のジャム・バンドに多い、演奏に耽溺するフュージョンくずれみたいなバンドと大きく違う点であり、また魅力である。そして彼等の音には愛嬌がある。生である意味がそこにある。

2時間強の演奏の後、アンコールを求めて鳴り止まない拍手に引っ張り出されたメンバーは、さすがに体力の限界なのか(会場の時間の限界もあっただろうが)、再び楽器を持つことはなかったが、満面の笑みでつないだ手をフロアに向かってあげ、声に答えていた。その会場全体を包む満足感には、僕も水をさす言葉を飲み込んだ。

でも、ひとつだけ。この会場でやるからこそ来れたお客さんもいたのだろうが、やっぱりAOAには外が似合うかな。

文●磯部 涼

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