レディオヘッド 『アムニージアック』最速レビュー
20世紀最後の問題作”となった『キッドA』。賛否をめぐる激しい論争が収束をみないうちに、レディオヘッドは早くも次なるアルバムを世に送りだした。『キッドA』と同時進行で制作されていたこのアルバムの名は『アムニージアック(記憶喪失者)』。生まれは『キッドA』と同時期ではあるが、“その性格は全く異なる”とかねてから噂されたこのモンスター第2弾が早くもベールを脱いだ。
冒頭からいきなり鋭角的なエレクトロニカ・リズムの嵐。日常生活の機械音そのままのその曲には、一瞬『キッドA』の再来が垣間見られる。しかし、楽曲が進行していくにしたがって、彼らが言うところのその明確な差異が少しずつ露になってきた。前作の冷徹で隙のない音空間に若干、柔らかで温かな音の膨らみが生まれ、そこにトム・ヨークが本来持っていたハートフルな歌心がチラリチラリと顔を覗かせる。音色もラップトップと格闘して生み出した電子音のみならず、前作で封印されていたギターやベースの音が戻ってきている。前作ではギターのジョニー・グリーンウッドによるラップトップ・コンピュータの感覚に若干推され気味にも映ったトムであったが、ここではその唯一無二の痛々しい表現力に満ちた声の力を最大限にアピールしている。
とはいえ、決して以前のようなバンド・アンサンブルに回帰したわけではない。ギターもベースも音のバリエーションのいち素材として使われているに過ぎず、それらがラップトップの電子音やホーン/ストリングスと混然一体となって格闘していると言ったほうが正解だろう。20世紀のジャズが楽器と楽器のせめぎあいなら、21世紀のジャズは様々な音の原子核反応なのだろうか。そんなことまで考えさせてしまうほどに、やはり本作もヘヴィではある。しかし、どこか救いのない前作に比べ、やはりどこかホッとさせる余地があるのは、前述したトムの声の存在があまりにも大きいからだろう。
21世紀初のジャズロック・アルバムと言える本作。ビリー・ホリデイとマイルス・デイヴィスがもし今この世にいて共演していたら、ひょっとしたらこんな作品を作っていたのかもしれない。そんな比喩でさえ決して誇張にはならない風格がここにはある。
タイトル:『アムニージアック』
発売日 : 2001年5月30日発売
商品番号: TOCP-65800
価格 : ¥2,548(Tax in)
<先行シングル>
タイトル:「ピラミッド・ソング」
発売日 : 2001年5月16日発売
商品番号: TOCP-61053
価格 : ¥1,500(Tax in)
冒頭からいきなり鋭角的なエレクトロニカ・リズムの嵐。日常生活の機械音そのままのその曲には、一瞬『キッドA』の再来が垣間見られる。しかし、楽曲が進行していくにしたがって、彼らが言うところのその明確な差異が少しずつ露になってきた。前作の冷徹で隙のない音空間に若干、柔らかで温かな音の膨らみが生まれ、そこにトム・ヨークが本来持っていたハートフルな歌心がチラリチラリと顔を覗かせる。音色もラップトップと格闘して生み出した電子音のみならず、前作で封印されていたギターやベースの音が戻ってきている。前作ではギターのジョニー・グリーンウッドによるラップトップ・コンピュータの感覚に若干推され気味にも映ったトムであったが、ここではその唯一無二の痛々しい表現力に満ちた声の力を最大限にアピールしている。
とはいえ、決して以前のようなバンド・アンサンブルに回帰したわけではない。ギターもベースも音のバリエーションのいち素材として使われているに過ぎず、それらがラップトップの電子音やホーン/ストリングスと混然一体となって格闘していると言ったほうが正解だろう。20世紀のジャズが楽器と楽器のせめぎあいなら、21世紀のジャズは様々な音の原子核反応なのだろうか。そんなことまで考えさせてしまうほどに、やはり本作もヘヴィではある。しかし、どこか救いのない前作に比べ、やはりどこかホッとさせる余地があるのは、前述したトムの声の存在があまりにも大きいからだろう。
21世紀初のジャズロック・アルバムと言える本作。ビリー・ホリデイとマイルス・デイヴィスがもし今この世にいて共演していたら、ひょっとしたらこんな作品を作っていたのかもしれない。そんな比喩でさえ決して誇張にはならない風格がここにはある。
文●太澤 陽aka沢田太陽
タイトル:『アムニージアック』
発売日 : 2001年5月30日発売
商品番号: TOCP-65800
価格 : ¥2,548(Tax in)
<先行シングル>
タイトル:「ピラミッド・ソング」
発売日 : 2001年5月16日発売
商品番号: TOCP-61053
価格 : ¥1,500(Tax in)
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