新作と隠れた名曲をフィーチャーしたムード満点のライヴ

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新作と隠れた名曲をフィーチャーしたムード満点のライヴ

ロスアンゼルスのGreek Theatreで行なわれたNeil Youngの3夜連続ギグの初日に関しては、ビールをがぶ飲みした30代の男が終演後に車へと向かう途中で、予想どおりのまるで検死報告のようなコメントをするのを聞けたことであろう。

「何だよ、「Cinnamon Girl」も「Southern Man」もやらなかったぜ。さあ、家へ帰ってCDできかなくちゃな」

駐車場エリアの別の一帯では、その日の夜に演奏されなかったいくつかの曲に対する思い入れを共有していたようだ。例えば「Rockin' In The Free World」「Heart Of Gold」「Helspless」「Like A Hurricane」「Sugar Mountain」「Hey Hey, My My (Into The Black)」「Down By The River」「Cortez The Killer」「Ohio」そして「The Needle And The Damage Done」などである。こうしたファンの気持ちもわからないではない。

彼らの多くは最高で128ドル50というチケット代(プラスいまいましいTicketmasterの手数料)を払ったうえ、おそらくは45ドルのTシャツを勝って、駐車場やビールと食料に20ドル程度を出費しているからである。このような金額を考えれば、確かにお気に入りの1-2曲を聴きたいと思ってもばちはあたるまい。(ところでNeil、この料金はいったい何なんだ?)

だが、これはEaglesのような黴臭いクラシックロッカーの話ではない。つまり、子供をシッターのところに預け、今ではきつくなったロックっぽい衣裳のほこりを払い、人生で最初で最後のアリーナロック的スタイルのライヴに参加したベビーブーマー世代のためにヒット曲を連発するようなアーティストとは違う。彼はNeil Youngなのだ。

ドラマチックで肥沃な彼のキャリアを注視してきた人なら誰でも、彼がひとつの決まったコースに留まることがないのを知っているだろう。時にはCrazy Horseとのパワフルロック路線、あるときはひなびたムードのStray Gators、あるいはソロでせつせつと歌いかけるNeil Young。

また短い期間ではあるが、最大の失敗作といわれる『Trans』などの試行錯誤もあった。

今回のツアーはHarvest路線の最新作『Silver & Gold』をサポートするためのもので、軽快なサウンドのバックバンドには素晴らしいメンバーを揃えている。Ben Keith(ギター/スティールギター)、Spooner Oldham(キーボード)、Donald "Duck" Dunn(ベース)、Jim Keltner(ドラムス)、Pegi & Astrid Young(バッキングヴォーカル)といった面面で、アルバムのデリケートなトーンを再現するのに一役買っていた。

したがって、セットの内容もメロウな面を打ち出した部分が多く、「Buffalo Springfield Again」や「Daddy Went Walkin'」といった新曲が、「From Hank To Hendrix」「Unknown Legend」などのやや古い曲と混在していたのである。これがしばしば素晴らしいムードを演出しており、特に絵画的な「Harvest Moon」では偶然にも満月が南カリフォルニアの夜を照らしムード満点であった。

しかしながら、この穏やかなトーンが最新の作品の一部に聞かれる中庸さとあいまって、セットの中盤ごろにはあくびをする聴衆も見られた。

だが、そのときYoungはトレードマークであるガチャガチャのエレキギターリフを復活させたのである。

彼のようにちょっと弾くだけで観客を眠りから叩き起こしてしまうギタリストは、世界中でもほとんどいないだろう。しかもYoungは自分の作品群のなかでもあまり知られていない「Walk On」「Motorcycle Mama」「Everybody Knows This Is Nowhere」「World On A String」といったナンバーでそれをやってのけるのである。

今回の優れたミュージシャンのグループの手によって、当夜がもうひとつの愛すべきNeil Youngコンサートになったのは、まぎれもなくこうした隠れた名曲の数々のおかげであろう。

このことによってYoungのレコードカタログには大きな深みがあることが思い出され、一度考えたことでも常に進んで再考する彼の姿勢に気付かされるのだった。

その一方で壮大な叙事詩「Cowgirl In The Sand」のアンコールヴァージョンでは、彼の音楽が今でも大自然のパワーのように存在していることを改めて認識させられた。

この曲は20分間も続き、54歳のアーティストが6本の弦と身悶えしながら格闘して、超音速的な輝きのコラージュを描くのである。この音楽こそが首の後ろまで伸びた髪を逆立てさせるのだ。そんなアンコールを聴いた後では、ファンが不満を漏らすはずもないだろう。

前座を務めたPretendersは必ずしも、Neil Youngのような音楽的境地に到達しているわけではなかった。その代わりにChrissie Hyndeと20年に及ぶバンドの2000年モデルは、限られた時間を使って彼女が過去に作ってきた優れた作品群をファンに思い出させたのである。

「Back On The Chain Gang」「Talk Of The Town」「Middle Of The Road」などの曲は、彼らが初期に拠点としていたパンク/ニューウエイヴ時代を超えて、タイムレスかつ本質的な響きを放っていた。

Hyndeは今でも最もオリジナルな女性ロックヴォーカリストであり、信じられないほどクールなペルソナであり続けている。

彼女は非常に成功したレコーディングアクトでありながら、やる気をなくさせることの多いウォームアップのギグという役割を引き受けただけでなく、その夜のイヴェントに適切な視野を与えたことによって、謙遜の美徳でも大きなポイントを稼いだ。

つまりPretendersは何度もYoungへのオマージュを捧げたのである。オープニングは彼の「The Loner」で、クロージングも彼の「The Needle And The Damage Done」であった。

さらにセットの途中でHyndeは、まもなくYoungが登場するステージにひざまづいてキスをしたのである。行為としてはチャーミングなもので、Hyndeは評価すべきアーティストではあるが、このことがPretendersとNeil Youngの間の差異を裏付けることにもなった。

結局のところ本気で立ち上がる観客はほとんどいなかったのである。

by Neal Weiss

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