地球上で最も影響力が強く、最も高いオリジナリティを誇り、最も愛されるミュージシャン
地球上で最も影響力が強く 最も高いオリジナリティを誇り 最も愛されるミュージシャン |
NARAS(National Assn. Of Recording Arts And Sciences、通称Recording Academy)のMichael Greene会長は語る。 「ほとんどすべてのミュージシャンがStevie Wonderを話題にするのは、彼のことをみんながよく知っているからだ。こんなことが当てはまる音楽関係者は、決して多くない」 ほとんどあらゆるタイプのジャンルに真にクロスオーヴァーしたミュージシャン、そして文字どおり無数の人間に影響を与えたミュージシャンがこれまでにいたとすれば、それがまさにWonderだ。 12歳でドラムやハーモニカを鳴らしまくったStevie Wonder坊やのイメージから、あらゆる方面に手を広げ、人種の壁を破った『Songs In The Key Of Life』を作った真にファンキーな天才へと、Wonderは成長を遂げて、地球上で最も影響力が強く、最も高いオリジナリティを誇り、最も愛されるミュージシャンの1人になった。 しかしStevland Morrisは、慈善事業や社会政治の分野で、主要な主唱者でもある。その好例は、(Coretta Scott Kingと一緒に)マーティン・ルーサー・キング牧師の偉業を称えて、国民の祝日にしようという運動を成功させたことだ。この運動の模様は、Wonderがキング牧師に捧げた歌「Happy Birthday」に美しく記録されている。 WonderはMotown Recordsで最初に頭角を現して以来、音楽界の巨大な力となっている。全世界でアルバムが1億枚以上売れ、21のグラミー賞を獲得し(ノミネートされたのは全部で62回)、トップ40ヒットを49曲生み、ナンバー1シングルに至ってはなんと25曲もある。コラボレーションやプロデュースの仕事をしていないときは(今年Wonderは、Herbie Hancockとの仕事で、さらにグラミー賞を2部門受賞)、自ら主催するCharge Against HungerキャンペーンやSAP/ Stevie Wonder Vision Awards(盲目と戦おうというもの)など、無数の運動のために募金活動を行なっている。 |
'99年2月、WonderはNARASの'99年度MusiCares Person Of The Yearに選ばれた。これは、毎年ミュージシャンのなかで人道主義者を表彰する賞だ。 このイベントのハイライトとなったのは、準正装によるディナー、ひっそりと行なわれるオークション、スター総出のコンサートだ。このコンサートで彼を迎えたのは、Quincy Jones、Tony Bennett、BeBe Winans、Mariah Carey、Babyface、Gloria Estefan、Take 6、Luciano Pavarotti、Trudie Styler、Stingといった人たちで、さらにクリントン大統領、Elton John、Curtis Mayfieldがヴィデオで出演している。 Wonderは最初の(そしてずっと延び延びになっていた)ボックスセット『At The Close Of A Century』のリリースに伴い、LAUNCHの独占インタヴューに応じてくれた。 そのなかで彼は、特定の宗派にこだわらない祈りと癒しの全国的普及を目指すIn Prayer Circleという計画を打ち明け、賞、アドバイス、James Dean、みんなが待望しているニューアルバムをいつリリースできそうかなど、たくさんのことについてどんどん語ってくれている。 LAUNCH: MusiCaresのイベントでは、著名な仲間やすごいアーティストに栄誉を称えられ、そういった人たちとジャムセッションを繰り広げましたが、そのときはどんな気持ちでしたか。 STEVIE: 信じられない気分だったよ、本当に信じられなかった。あの日のことは絶対に忘れないだろうね。人に称えられるなんて信じられなかった。あれがいつまでもずっとずっと続けばいいと思ったよ。自分が称えられて気分がよかったからというんじゃなくて、あの夜のエネルギーとスピリットが素晴らしかったんだ。そして、またいつまでもインスピレーションを受けて、これまでやってきたことをもっと、いつまでもいつまでも、生きている限りやっていきたいね。 LAUNCH: In Prayer Circleとは、いったいどういうものなんですか。 STEVIE: イスラム教の信仰で僕が感服している1つのことは、1日3回お祈りをしていることだ。また祈りには、アメリカ人に必要なことが含まれていると思うんだ。いろいろな民族の人たちが一緒になることがそうだ……自分が何であれ、自分には違いない。でももし一緒にお祈りにやってきて、同じような精神で同じことを言えれば、物事のうち非常にたくさんのもの、たとえば、我々が毎日抱える病気で、本来ならこれまでに撲滅されているはずだったものがなくなるんじゃないかな。みんなが同じ精神でいるわけだからね。僕はそのことを信じているよ。本当に本当に信じているんだ。 LAUNCH: どうやってそれを実現させようと考えていますか。 STEVIE: 今計画しているのは、全国を廻って、都市の中心部など、いろいろな場所を決めるということだ。このアイデアが本当に生まれたのは、僕のアルバム『In Square Circle』からなんだ。あるときこのことを考えて、都市の中心部でもどこでも、人々が定められた時間に会って祈ることのできる場所があれば素晴らしいと言って、それを“In Prayer Circle”と呼んだ。いろいろな宗派の人々が集まるんだ。 LAUNCH: すると、実にユニテリアン的ですね。 STEVIE: そのとおり。そして毎日、祈りの中心にすえる特定のことがある。それは、失った子どもでも、人殺しでも、コミュニケーションの向上でもいいんだ。土曜日とか日曜日とか、僕らはお祈りにほんのわずかな時間しか使っていないけど、それでは不十分だ。もしみんなが一堂に会して、祈りのための場所を定めることができたら素晴らしいだろうね。もしそうなれば、犯罪、ギャング、まあ何でもいいんだけど、そうしたもろもろの不思議がなくなると本心から信じてるんだ。だって僕らは、より良い人間になりたいとか、みんなに最善を尽くしてもらいたいというように、同じ精神でいるわけだからね。あと、子供たちを触発したい。僕らは子供たちに何を残そうとしているんだろうか。価値観も崇高さもない場所を子供たちに残そうとしているんじゃないだろうか。僕らが次の世代に残そうとしているのはそんなものなのだろうか。僕らは架け橋なんだ。 LAUNCH: いつ立ち上げる予定ですか。 STEVIE: 人繰りがつき次第だ。今の僕には一番大事な仕事なんだ。(マーティン・ルーサー)キング牧師の祝日の件以来だね。 LAUNCH: あのときはさぞ嬉しかったでしょうね。 STEVIE: 今考えても嬉しいよ。本当にみんなを呼び集めるような歌(“Happy Birthday”)を作るスピリットを、神が僕に与えてくれたことがとてもハッピーなんだ。あの歌で、人種間そして民族間の壁が壊された。みんながあの歌を祝福してくれたからね。(マーティン・ルーサー・キング牧師記念日が)3月に最初に実現したその年、僕らはとても偉大な人間を2人失った。Bob MarleyとJohn Lennonだ。この記念日がアフリカンアメリカンの休日ではないことを、みんな理解しないといけない。これはすべての人のための日なんだ。 LAUNCH: 普遍的なものでもあるわけですね。 STEVIE: 君自身や僕自身のようないろいろな人間は、みんな実際にコミュニケータじゃないか。でも僕らみんなには、責任を果たす対象となる人たちがいる。上司とかとか何とかいろいろいるけど、大事なのは、自分の行動に本当に違いを持たせることのできる場所があるということだ。Tupacが最後に出演した映画を見たけど、実に素晴らしかった。彼があんな死に方をしたのは本当に悲しいね。才能溢れる人間だったし、たくさんのものを与えられる人間だった。本当にたくさんのものをね。また赤ん坊のような人間だった。まさに世界を見つけた矢先だったんだ。彼の遺作となったアルバムなどからは、何かを発見してまとめあげるような境地に達していたことが聞こえてくるんだ。若い子の大半は、父親を亡くすととても辛い気持ちになるんだ。これを読んでくれている人たちにはわかるよね。「おい、そいつは間違ってるぞ」「おい、こうしたらいいんじゃないか?」「おい、この本を読むといいぞ」「あれやこれには、こんな見方もできるんだぞ」と言ってくれる人がいなくなったんだ。 LAUNCH: ある種のお手本ですね。 STEVIE: そのとおり。僕は若すぎて本当にはわからなかったけど、James Deanにも同じことが言えたんじゃないかな。手本のようなものを与えてくれて、「おい、そいつは違うぜ」なんて言ってくれる人がいないというのは、本当に大変なのが現実なんだ。僕の場合は、14歳以上の人はみんな僕の親だった。Motownでは、成長期に周りにいた人たちは、あることを僕にやらせてくれなかった。まあズルしていくつかやってみたけどね、意味わかるかな。まあその話はやめておこう!でもたいていは、地位のある人たちが「だめだ、そんなことするな」と言ってくれた。あるいは、自分は上手に音色を奏でたりピアノソロを弾いたりできると思ってると、「おい、お前もひどいもんだな。こいつをやってみろ!」なんて言われたよ。そして僕は「冗談じゃねえ!」と言うんだよね。母は「自分のことを大したもんだと思っていても、実際はそんなにすごくはない」ということをわからせてくれた。改善の余地は常に残っているんだ。 LAUNCH: 若くてやる気のあるミュージシャンを励ますとしたら、どんなことを言いますか。特に、競争が激しくて利益ばかり気にするようなこの業界で。 STEVIE: 競争が激しいこと自体に問題はないと思う。問題なのは、競争を真剣にとらえ過ぎることだ。もし「こいつが俺よりレコードを売ったら、もうそいつのことは嫌いだ」「こいつは俺より優秀なラッパーだと思っているから嫌いだ」「あのグループは自分たちの方がカッコいいと思っている」なんてとらえ方をしたらクレイジーだよ。現実には誰も十分なものを持っているんだから。そして「これは実にシリアスだ。実に奥が深い」と本心から考えるようになったら、この言葉を思い出してほしい。「聞いてくれよ、これは君が生まれるずっと前からあるんだ。僕の生まれるずっと前からもね。そして僕らが死んだ後もずっと残っていく。だから楽しもうじゃないか、力を抜いてさ」。つまり僕の場合だと、Babyfaceとのことになるけど、僕は彼の作品が大好きなんだ、本当だよ。彼の方も僕の作品が好きだと言ってくれている。そして本当のところ、「おい、僕は自分のほうにもう少し手を加える必要があるけど、この男はいいね!」と僕が言ったんだ。でも大事なのは、こういうことを感じるのには愛情と理解がいるということだ。自分が他人にインスピレーションを与えた人間だなんて光栄だからね。でも他の人だって僕にインスピレーションを与えてくれるんだ。Lauryn Hillは信じられないくらいすごいよ。Shania Twainの声は素晴らしくて、彼女の歌を聞いているとKaren Carpenterをちょっと思い出すよね。Karenだけじゃなくて、他の人たちの声も聞こえてくる感じがするよ。 LAUNCH: 好きにならなきゃだめだということですね。 STEVIE: 好きになって理解しなくちゃね。どこかの作曲家が映画用にやったオーケストレーションを聞いたら、「これはすごい。僕もやってみたいな」と言うんだ。音楽にはやることがたくさんあるんだ。とても大きなものなんだ。 LAUNCH: 今の言葉を受けて、次の質問です。ニューアルバムはいつ頃聴かせてもらえますか。 STEVIE: 何とか'99年中に出したいと思ってるけどね。次のミレニアムに入る前に出したいね。 LAUNCH: 楽しみにしています。どうもありがとうございました。 STEVIE: どうもありがとう、元気でね。 by Roger Len Smith |
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