名声への秒読み
アルバムがミリオンセラーになって悪い気がするわけがない。Sugar Rayが、'97年にリリースしたアルバム『Floored』の成功を最初に耳にしたのは少し変わった状況だった。David Lettermanが彼の番組でSugar Rayの曲を紹介するとき 「彼が番組で言ったんだ“このレコードはプラチナを記録しました”ってね」とベースのMurphy Kargesは言う。 「まったく驚いたよ。このとき初めて知ったんだから」 L.A.を本拠にする5人組のSugar Rayにとって、『Floored』からリリースしたグルービーでレゲエのリズムいっぱいのシングル「Fly」を皮切りに、これはその後のヒット街道爆進の始まりに過ぎなかった。 「あの年は楽しかったよ」とKargesは言う。 「すべてを楽しんだ。後になって振り返ってみても、人生で一番いい年だったと思うんじゃないかな」 前身のShrinky Dinxとして活動していた'80年代中頃から、Sugar Ray(ベース:Karges、ボーカル:Mark McGrath、ギター:Rodney Sheppard、DJ Craig "DJ Homicide" Bullock、ドラム:Stan Frazier)は陽気なバンドとして知られていた。 最初のLP『Lemonade And Brownies』が完成したときは、ブーツとサポーターだけの格好で、マスターテープをレコード会社に持ち込んだ。そして、音楽業界に関する話の記者会見の資料一式が用意された。『Floored』が売れに売れている頃、Sugar Rayの面々は余暇を思う存分楽しんでいた。この後も成功が続くという保証は何もないことを十分に承知している。だから、苦労して稼いだお金を賢く使い、精一杯楽しい時を過ごした。 そのおかげかどうか、次のレコードを作るとき、メンバー全員にストレスはまったくなかった。「プレッシャーも感じなかったし、“もっとできるはずだ”って言うものもいなかった」とKargesは言う。事実、ニューアルバム『14:59』では、『Floored』のときに比べて苦労なく進み、必死なところなどもなく、よく練られた作品に仕上げている。『Lemonade And Brownies』がチャートをにぎわした後、メンバーたちは、Atlanticレーベルでの活動を認めてもらえるだろうと確信していた それに反して『14:59』では、ごちそうの後に出てくるデザートのように、うまく流れに乗ることができた。このときのプロデューサもDavid Kahneで、『Floored』ではSugar Rayの魅力を最大限に引き出した。 この曲のくつろいだ感じは「Falls Apart」や「Someday」にも引き継がれている。ハードロックを見捨てたわけでもない。奮い立つような刺激の「Glory」と「Aim For Me」がその証明だ。ファンキーな「Live And Direct」では、KRS-Oneとチームを組んでいる。 幸いにも、いずれの新曲も、「Fly」での成功を再現するのに自意識過剰になることはなかった。たとえこれが、Sugar RayのWarholian「15分間の名声(15 minutes of fame)」が終わろうとしていることを意味していても、それはそれでかまわない。『14:59』のタイトルはそのためなのだ。 しかし、先のことは誰もわからない。「Every Morning」に引き続いて、ニューアルバムも堅実なスタートを切っている。『14:59』で、Sugar Rayの名声は20分に延びるだろうか。 by Janiss_Garza |