【インタビュー】KIRITO、3rdアルバム『CROSS』が描く多次元な世界線「再び交わるとはどういうことなのか」

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■“なぜそうなのか”っていうことを
■人が表現しないやり方で表現していく


──まさにKIRITOさんの世界観が全開の背景ですが、どちらの考え方もそこにあると。

KIRITO:そう。そのレイヤーは完全に矛盾してる…でも、制作を進めていく中で思ったんですけど、レイヤーが矛盾してるのは当然なんだろうなと。やっぱり、そこがひとつの解釈で言いきれないからこそ現実なんだろうなって。それは人間の感情にも似てますよね。その物事に対して好きだという感情と、でも同時に嫌いだという感情が混在していて、それらを立体的なレイヤーとして考えると、結果すべてが合わさった上でひとつの形を成している。二次元的に見た時にはレイヤーが重なっていることは分からないんだけど、ひとつの絵の部分部分が実はレイヤーとして立体的に重なってるという。その一つひとつは矛盾していて当然なんですよ。だからこそ人間って深いんだなと改めて思ったりしたし。

――その幹の部分は昔からテーマにしているところですね。

KIRITO:それは音も一緒なんですよ。パッと聴いた時はひとつのものとして聴こえるんだけど、そこには音のレイヤーがあって、それらが重なることによって創り出している。それはカオスなんだけど、でも矛盾しているように思えて、しっかりとひとつのものとして聴いた人の感情につながっていくという風に捉えてます。そこは作品で伝えたかったし、聴いている人の意識にどう反応するのか楽しみですしね。

──歌詞に用いられた言葉だけじゃなく、今作は世界観自体がより濃く煮詰められたものなんだということが伝わってきます。

KIRITO:そうですね。世の中に起きていることって、ひとつの単純な言葉じゃ言いきれないよねって。昔からそういう価値観を持っていることで、二極化させたコンセプトの作り方などをずっとやってきたと思うけど、今回は二極化だけじゃなくて、たとえば二次元的な縦軸・横軸だけじゃなく、三次元的なもうひとつの軸が加わったりしたし、“さらにもうひとつ加わるとどうなるんだろう?”というところで、次元のレイヤーというものを考えながら作っていきましたね。いろんなものをクロスさせていくと何が見えるんだろう?って。だから結果として、すごく難解なところに行ったなと。


──同じく「A NEW BIBLE」では、“あの日描いた 願いが連なって現在(いま)が出来た”とありますが、人間の意志によって今が作られているという考え方はKIRITOさんの根本としてあるのかなと感じますね。

KIRITO:たしかにその辺りは一貫してそういうコンセプトでやってきたと思うんですけど、ただ、自分としては単純にそういうことだけではなくて、もっと奥行きを持たせて考えていて。分かりやすく言うなら、たとえば“未来は自分が考えた通りになるんだよ”という言い方をすれば、それは受け取る人によってはすごくポジティヴに捉えて、“あ、やっぱり望めば望んだ通りの未来が来るんだ”みたいな前向きなメッセージに聞こえると思うんです。だけど、やっぱりそれは、言ってみたら量子論なんですよ。

──はい。

KIRITO:さっきも言ったように、本来は良い未来も悪い未来も、あなたが意識を持ってチョイスするまでは両方混在してるものなので。あなたがチョイスした時点で現実化するという繰り返しなんだって考えれば、それはまさに量子力学なんです。『シュレーディンガーの猫』(オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーが1935年に発表した、猫を使った思考実験)というかね。観測するまではハッピーエンドもバッドエンドも両方とも在る。踏み込んで“それ”をチョイスした時点で現実が都度決まっていくんだって考えた時に、それを前向きなものとして捉える人もいれば、その一方で、どこまでが現実で、果たして実在しているものって何なんだろう?っていう恐怖感につながっていく人もいると思うんですね。

──一見ポジティヴに見える歌詞も、人によってはそうではない場合もあると。

KIRITO:ただ、できるだけポジティヴに捉えていこうという考えではあるんだけど。大事なのは、そういうことをイメージすることで作品に奥行きが生まれると思うんですよ。そこをどう仕掛けていくか、それが僕の表現の仕方の難解さのひとつではあるんだろうけど、それをやらなければ、そこにある言葉がただ陳腐なもので終わってしまうのかなと。そこでいろんな選択肢や奥行きなどがあるべきだし、“なぜそうなのか”っていうことを、人が表現しないようなやり方でレイヤーを重ねて表現していくということですよね。

──そこは“CROSS”というテーマで制作していく中で、期せずして深いところまで入っていったような感覚もありますか?

KIRITO:そうですね。その辺りの難解さは、作業を進めていく中で自分自身感じていきましたけど。


▲通常盤

──また、話は変わりますが、全体的にはKIRITOさんのナチュラルな歌声が多く聴ける作品でもあると感じました。

KIRITO:やっぱりそこは自分のボーカルの特性というものを考えながらやっているので。ただ、そういったアプローチをみせる中でも、ボーカリストとしてはどれだけ幅を広げていけるのかというチャレンジはしてますけど。聴く人によってどの部分が好きなのか、好みはいろいろあるんでしょうけどね。

──リードトラックが「瓦礫の花」だったこともそう感じた理由のひとつかなと思いますが、この曲を先行して発表した理由はどういったところからだったんです?

KIRITO:アルバムにはヘヴィな曲もあれば、メロディの立った歌に特化した曲もあるのは当然ですけど、前作や前々作では結構ヘヴィでハードなものを突き詰めていった流れがありましたから。今回は「瓦礫の花」みたいな曲をリードトラックにしたら驚きもあるだろうし、アルバムへの想像が膨らむだろうと。いずれにしても、どういう曲を持ってきたとしてもアルバムの全体像は見えないんですけどね。


──では、特段今が優しいKIRITOさんを打ち出していくモードだったというわけではないんですね。

KIRITO:そうですね。というか、そういう優しい部分も昔からあります。

──ええ、もちろんそれは知ってます(笑)。

KIRITO:ははは。

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