【インタビュー】KIRITO、3rdアルバム『CROSS』が描く多次元な世界線「再び交わるとはどういうことなのか」
KIRITOが11月13日、ソロ通算5作目にしてKIRITO名義によるソロ本格始動から3作目となるアルバムをリリースする。『CROSS』というアルバムタイトルが発表となったのは、2024年春のツアー<ALTERNATIVE SPECIES>ファイナル公演のこと。Angelo時代から今作に至るまで、毎年継続してフルアルバムをリリースし続けるペースは驚異的だが、振り返ればKIRITOは、PIERROT時代から止まることなく歩みを続けてきた。加えて、発想の源が枯渇することなどない彼にとって、ソロ第一弾『NEOSPIRAL』、第二弾『ALPHA』、そして今作『CROSS』という流れは早い段階から決まっていたのだという。
◆KIRITO 画像 / 動画
「いつまでやれるかなんて定かじゃない世の中で、こうしてやれるということには何か意味があるんだと、俺には役割があるんだと思います。それを素直に受け止めて、役割を果たしていきたいと思うので。その全てが幸せなことで、感謝したいと思います。そういう前提でいろいろと仕掛けていく」とは、前述のツアー<ALTERNATIVE SPECIES>ファイナルでのKIRITOの言葉だ。リリースツアーをはじめ、バースデイライブやアコースティックライブなどの恒例公演に加え、アルバムリリース前となる8月にはKIRITO × 有村竜太朗によるツーマン<THE CHEMICAL DESTRUCT -ANTI-PARTICLE- KIRITO vs 有村竜太朗>、10月には国立代々木競技場 第一体育館2DAYSの規模で行われたPIERROTとDIR EN GREYのツーマン<ANDROGYNOS - THE FINAL WAR ->など、持てる全ての力を注ぎ込むような活動スタンスでKIRITOは第一線を走り続けている。
そしてリリースされるアルバムが『CROSS』だ。タイトルに冠された“CROSS”という言葉は、十字架、交差点、横断、すれ違いなど様々な意味を持つ。収録は全10曲。果たしてアルバムに注ぎ込んだ「血と汗と涙と深い傷、素晴らしい愛」とはなにか。2025年2月にはPIERROTとして、約10年ぶりワンマンとなる有明アリーナ2DAYSも控えたKIRITOにじっくりと話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■時間軸、世界線、次元という世界観は
■PIERROTの時から散りばめてきた
──『CROSS』ボーカルレコーディングの最中だった今年8月、この象徴的なアルバムタイトルの意味について、「縦軸と横軸のラインが交差するポイントという意味での“CROSS”」ということや、「今まで生きてきた中で背負ってきたものがあって、それは“十字架を背負う“というカルマ的な意味合いとも重なる」といった話をしてくれました。
KIRITO:ただ、夏の時点で話した意味はもちろん含まれているけど、さらに突き詰めていって、自分の描きたいものがより深くなっていったし、僕が考えるコンセプトの本質的なものを突き詰めていくと、ちょっと言葉で表現しづらい軸が増えていったというか。そもそも自分が描こうとしている世界線の軸というのが、実は縦と横だけじゃなくて、もっと奥行きがあるものだったりしたので。
──制作を進めていく中で、リアルタイムでさらに見えてくるものがあったということですか?
KIRITO:自分が描こうとしているものの本質を作り込んでいくほどに、“ああ、そういうことなんだな”と分かってきたんです。漠然としていたものが、ソリッドに形にしていくことによって見えてくる軸があって、それは縦と横だけではないなっていうことですよね。もっと立体的になっているものであって。もともと自分の中でも“これは何が言いたいんだろう?”っていうところがあるんですけど、こうして形にしていくことで、それがより映像として見えてくるっていう感じですかね。
──また以前、前作『ALPHA』について「KIRITO/キリト史が見える作品」と語ってくれましたが、今作はそこをさらに濃く煮詰めたような形で、歌詞にはかつてないほどいろんな情景が甦る言葉がたくさん散りばめられていると感じたんです。
KIRITO:そこは聴いた人それぞれが感じることだと思うんですけど、その世界観に奥行きを持たせられるように考えて作ったので。
──それは今回のテーマが“CROSS”だったことと関係していますか?
KIRITO:うん、そうですね。
──そして、1曲目「CROSS OVER THE WORLD LINE」は、これもまた象徴的なタイトルですし、“散らばった時間軸は 思惑どおり書き換わった”という印象的なフレーズもあります。まさに今がそういう時だと感じているんでしょうか?
KIRITO:まあ、そういう表現やメッセージ自体はずっと世界観として持ってきていたと思うので。時間軸とか世界線、あとは次元だったり、いわゆる量子論的な世界観というのはPIERROTの時からずっと、どこかしらに散りばめてきたものですからね。たしかにそれらが今とリンクしてると思うし、それは見てる人たちにとっても見え始めてることかもしれないし。それに今後、より見えてくることかもしれない。そういう意味でもリアルに感じられる人がいると思いますけど。
──この曲のタイトル通り、さまざまな世界線がクロスオーバーしていくような生き方になってきているということでもありますか?
KIRITO:ただね、自分自身がどうこうというよりは、僕が解釈するそういうものを聴いている人たちと共有できるような、共通解は何なのかっていうところを考えて作ってるんです。単に僕自身の自叙伝を書いてるわけでもなくて、自分が解釈する“こういうことなんじゃないか”っていう部分、その共通解を作っていきたいなと思ってるので。
──ああ、自叙伝を書いてるわけじゃないというのは重要なところですね。
KIRITO:ええ。もちろん表立って自分自身をモチーフにしてるのも確かですよ。そういうものも見てもらいながら、作品として投げかけるものを都度共有してもらった段階で、聴いた人が“これは自分にも重なるな”と感じたりして、いろんなものが重なった時に、“きっとこれはこういうことなんだろう”っていう解釈みたいなものを共有できれば…ということなんです。それって僕だけのことじゃないし、誰かの特定の人のことだけでもなくて。世の中ってそういうものなんじゃないのかなってところに行き着けばいいなという意味での“共通解を作っていきたい”ということです。
──なるほど。
KIRITO:やっぱりエンタメとして、たとえば量子力学的なものや物理学的なことをロックバンドの歌詞世界に持ってくること自体が他ではないと思うけど、だからこそ新しい発見が生まれるはずで。そういうアプローチの世界観の中で“自分自身にも当てはまる”って感じることは可能だと思うんですよね。なぜなら、それは物理の話なので。
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──たとえば、ラストの「A NEW BIBLE」では“全てが筋書きだったと知る”と書かれてますが、それこそ神の視点で言うなら、すべてのことが必然によって突き動かされて今に至っているという風に感じてたりしますか?
KIRITO:“CROSS”というテーマやキーワードに関して、キリスト教の十字架を意味する“クロス”というところの世界線で言えば、それは“神”というものの視点かもしれないですよね。ただ、その“CROSS”というものも、それを解釈するレイヤーが複数重なっていて、ひとつは宗教的な神というものだったりするし、もう一方では量子論的なものだったりする。それはすごく矛盾するものなんだけど、量子力学的なことで言えば、いわゆる“神はサイコロを振らない”という考えに反した捉え方で、神の存在がないという前提で、物事は観測した時点で決まるものだと言っているんですよね。
──はい。
KIRITO:観測する前はその存在が波としてあるんだけれども、観測したり意志を働かせた時点でその波が粒子に変わってひとつの事実に変わるというところでは、神の視点での考え方とはまったくもって矛盾してるんですよ。でも、その矛盾しているレイヤーが立体的に合わさっているけど、ひとつの絵に見える。……というところで、“現実ってどういうことなんだろう?”と感じてレイヤーを分解することになって、そこで何か共通解が見えるんじゃないかって思うんです。ややこしい話なんですけど。
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