【ライブレポート】BRAHMAN、全4時間全75曲の全身全霊「30年という塊じゃない。1曲1曲の大事な物語だ」

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BRAHMANのライヴは、音楽を楽しむにとどまらない。それはBRAHMANという何ものにも変えがたい体験だ。2024年11月4日16時40分から20時40分、横浜BUNTAIでの<六梵全書 Six full albums of all songs>は、それを今まで以上に確信させるものだった。

◆BRAHMAN 画像

歌を、音を、奏でるための肉体と精神が4時間、いっときも休むことなく、ステージで燃え上がっていた。その熱量は5000人を巻き込み、アリーナもスタンドも一丸となって歌を、音を、呑み込んでいた。曲が進むほどに引き込まれ、疲れるどころか終わる頃には4時間が一瞬だったかと思うほどだった。

会場に流れるSEがBRAHMANの定番SEであるブルガリア民謡「Molih ta, majcho i molih」に変わった瞬間、怒号のような歓声が響き渡った。4時間72曲が刻む新たな歴史が幕を開けた瞬間だ。メンバーがステージに登場すると一段と大きな歓声がステージに向けられた。天井からのライトに照らされたKOHKIが弾き始めた「真善美」のイントロ、ギター1本のヒリヒリするようなフレーズが、これから起こることを予言するように身体中の血をたぎらせた。「幕が開くとは 終わりが来ることだ」と歌うこの曲ほど、この日の幕開けにふさわしい曲はない。そして曲の最後にTOSHI-LOWが歌と重ねて語った。


「幕が開くとは終わりが来ることだ。一度きりの人生の中で、まだ俺たちは終わりが来るってことを知らない。なのに、いつか必ずその終わりが来る。だから、誰よりも、高く高く飛ぼうと思ってやってきた。深く深く、みっともなくても這いずりまわってやって来た。30年は30年という塊じゃない。その1年1年、1日1日、1秒1秒。今日やる4時間72曲というのは72曲という塊じゃねえ。1曲1曲の、大事な物語だ。4時間後、ここに立ってるかどうかわからねえ。あんたらもそうだ。でも、そんなのは知ったこっちゃねえ。ずっと全力でやって来たんだ。さあ、幕が開くとは終わりが来ることだ。一度きりの意味を、俺たちが、問う。30年分のBRAHMAN、始めます」──TOSHI-LOW

このステージでのMCは、これだけだった。この言葉にTOSHI-LOWが込めた重みを今改めて思う。30年でオリジナルアルバム6作は、日本のアーティストにしては寡作だが、それだけにTOSHI-LOWが言ったように1曲1曲、1作1作に大きな意味と重みがあるのは言うまでもない。曲を作れば徹底的に体に叩き込み、ライヴを数え切れないほど重ねて自分たちで咀嚼し、国内外を問わずオーディエンスに伝えて来た。その時間が大切なのだ。それが積み重なった30年だ。その長い時間を彼らは巻き戻し始めた。





気がつけば「真善美」に始まる目下の最新作『梵唄』(2018年)の収録順に曲が進んでいる。MAKOTOがロングヘアーをなびかせながらベースを響かせ、RONZIのドラムが次の曲へと繋いで行く。TOSHI-LOWは全身でパフォーマンスしながら歌い続ける。息つく間もないステージの空気が、ふと穏やかになった「満月の夕」が終わると、再び「Molih ta, majcho i molih」が流れた。

「初期衝動」で一気に熱を取り戻し『超克』(2013年)に突入。BRAHMANの意識を大きく変えることになった2011年3月11日を経て作られたのが『超克』だ。日本語の歌詞がメインとなり、楽曲はますますソリッドになった作品でもある。じっくり歌う場面もあった「俤」にハンドクラッブが起こった「露命」、軽やかな「JESUS WAS A CROSS MAKER」などこの作品ならではの曲が沁みた。そして「虚空ヲ掴ム」の後はまたも「Molih ta, majcho i molih」が流れ、この日は作品毎にひとつの物語として進んで行くのだなと気づいたオーディエンスからどよめきが起こった。


アルバム2作分25曲。普通のライヴならこの辺りで終わりとなるが、この日はここからが本番と言わんばかりに「THE ONLY WAY」に始まる『ANTINOMY』で、アリーナが一段と熱気を帯びた。

この作品を出したのは結成10年を過ぎた頃で、半端ない数のツアーを行いバンドの熱量も半端ない時期だ。そのための楽曲といっても過言ではない激しく起伏に富んだ曲が並ぶ。リズム隊の容赦ないプレイにアガる「EPIGRAM」、ドラマチックな「SILENT DAY」などの後に、ギターだけで穏やかに歌って締めくくった「KAMUY-PIRMA」も印象的だった。


ここまでくると「Molih ta, majcho i molih」はちょっとした休憩タイム。ステージの4人も楽器を整え汗をぬぐい次に備えている。「THE VOID」が始まり、ここから3作目『THE MIDDLE WAY』だ。と思ったら『A FORLORN HOPE』の「BASIS」のイントロのギターリフが鳴り、歓喜の声が起こりハンドクラップが鳴り響く。ここからは2nd『A FORLORN HOPE』や1st『A MAN OF THE WORLD』も加えた初期3作の曲が入り乱れてのセットリストになって、一気呵成に35曲、BRAHMANとオーディエンスは転がり続けた。

折り返し地点を回ったマラソンランナーさながらにBRAHMANの4人は、これが自分たちのペースだと言わんばかりのスピード感で1曲また1曲と進めて行く。見ている方もランナーズハイならぬBRAHMANハイとでも言いたくなる興奮状態になり、疲れなど感じる余地もない。冒頭でTOSHI-LOWが言った通り、BRAHMANの4人は1曲1曲の物語を全身で伝えていた。


初期からのライヴでは定番となっている曲を畳み掛けるように次々と繰り出していても、気を抜いたように見えた瞬間は微塵もなく、常に全身全霊で冷静に演奏していく4人には本当に心を打たれた。オーディエンスも少しも緩まず彼等の演奏に応え声を送って鼓舞し、手を挙げ足を動かし踊り回って楽しんでいた。3時間を超えているというのに、普段のライヴと変わらない盛り上がりっぷりだ。気づけば47曲目「DEEP」のあたりからアリーナに大漁旗が2旒立ち上がり、左右へとはためいていた。

ステージの真ん中に普段の練習と同じぐらいの距離感で4人は演奏していたが、左右のスペースを存分に使ってパフォーマンスしながら演奏し続けた。尋常ではない彼等の体力と、少しも緩まない精神力は全くもって感服するしかない。だからこそ我々オーディエンスも疲れを忘れてついていくことができたのだ。おそらく4人の頭の中ではカウントダウンが始まったであろう60曲目「A WHITE DEEP MORNING」あたりからはアリーナがカオスになっていた。

終盤は「ANSWER FOR...」「ARRIVAL TIME」「FOR ONE'S LIFE」とマストな曲が続きアリーナの興奮状態もピークに。それを受けた「TONGFARR」でTOSHI-LOWは「生きてるか?」とオーディエンスに声をかけ、笑顔を見せながら歌った。


予定されたセットリストではそこで終わるはずだったのだが、終わらない。「さらに曲を続けようとするRONZIにTOSHI-LOWが「やる?」と言うように笑顔を向けると「FLYING SAUCER」へ。さらに「BEYOND THE MOUNTAIN」「ARTMAN」を一気に演奏すると、TOSHI-LOWはマイクを床に投げつけ、KOHKIとMAKOTOも楽器を放り出し、4人はステージから姿を消した。やりきった! そんな声が聴こえて来るようだった。冒頭にも書いたが、彼等とともに何ものにも代えがたい体験をした、記念すべき4時間だった。

メンバーの去ったステージのスクリーンに新曲「順風満帆」のミュージックビデオが流れた。BRAHMANらしい起伏に富んだ力強い曲が、4時間のライヴで高まりまくった神経を通常に戻してくれた。帆に大きな風を受けて、ここからさらに進むのだ。30周年に突入するBRAHMANからそう言われているようだった。

取材・文◎今井智子
撮影◎Tsukasa Miyoshi (Showcase)

■<六梵全書 Six full albums of all songs>2024年11月4日(月/祝)@神奈川・横浜BUNTAI セットリスト

01. 真善美
02. 雷同
03. EVERMORE FOREVER MORE
04. AFTER-SENSATION
05. 其限
06. 今夜
07. 守破離
08. 怒涛の彼方
09. 不倶戴天
10. ナミノウタゲ
11. 天馬空を行く
12. 満月の夕
13. 初期衝動
14. 賽の河原
15. 今際の際
16. 俤
17. 露命
18. 空谷の跫音
19. 遠国
20. 警醒
21. 最終章
22. JESUS WAS A CROSS MAKER
23. 鼎の問
24. 霹靂
25. 虚空ヲ掴ム
26. THE ONLY WAY
27. SPECULATION
28. EPIGRAM
29. STAND ALOOF
30. SILENT DAY
31. ONENESS
32. HANDAN'S PILLOW
33. YOU DON'T LIVE HERE ANYMORE
34. CAUSATION
35. FIBS IN THE HAND
36. 逆光
37. KAMUY-PIRMA
38. THE VOID
39. BASIS
40. SHADOW PLAY
41. DOUBLE-BLIND DOCUMENTS
42. SHOW
43. GOIN' DOWN
44. SEE OFF
45. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
46. BOX
47. DEEP
48. NO LIGHT THEORY
49. 時の鐘
50. FROM MY WINDOW
51. FAR FROM...
52. BED SPACE REQUIEM
53. SLIDING WINDOW
54. THAT'S ALL
55. THERE'S NO SHORTER WAY IN THIS LIFE
56. CIRCLE BACK
57. NEW SENTIMENT
58. LOSE ALL
59. Z
60. A WHITE DEEP MORNING
61. TREES LINING A STREET
62. HIGH COMPASSION
63. LAST WAR
64. MIS 16
65. (a piece of) BLUE MOON
66. BYWAY
67. PLASTIC SMILE
68. PLACEBO
69. ANSWER FOR…
70. ARRIVAL TIME
71. FOR ONE'S LIFE
72. TONGFARR
73. FLYING SAUCER
74. BEYOND THE MOUNTAIN
75. ARTMAN
76. 順風満帆 (Music Video)

■結成30周年プロジェクトテーマ「順風満帆」

2024年11月5日 (木) 先行配信
配信リンク:https://brahman.lnk.to/JUNPUMANPANPR



■アルバム『viraha』

2025年2月26日(水)発売
予約リンク:https://brahman.lnk.to/viraha

【完全生産限定盤 (CD+2DVD)】
PPTF-8168~8170 22.000円 (税込)
※TOY'S STORE 限定販売作品
・Disc1 DVD:六梵全書 Six full albums of all songs Documentary
・Disc2 DVD:30th Anniversary Best Live Selection
・プレミアムボックス
・30周年記念写真集 (2015-2024) 184P / カメラマン:三吉ツカサ (Showcase)
・30周年記念トリプルコラボレーションTシャツ
 〜BRAHMAN × 河村康輔 × KEIICHI IWATA (7STARS DESIGN) × VIRGOwearworks〜
・30周年記念メダル

【初回生産限定盤 (CD+2DVD)】
TFCC-81117~81118 4.400円 (税込)
・Disc1 DVD:六梵全書 Six full albums of all songs Documentary
・Disc2 DVD:30th Anniversary Best Live Selection

【初回仕様通常盤(CD)】
TFCC-81120 3.300円 (税込)

■<BRAHMAN tour viraha>

3月18日 神奈川 川崎CLUB CITTA’
3月23日 新潟 LOTS
3月25日 石川 金沢Eight Hall
3月29日 青森 QUARTER
3月30日 岩手 盛岡CLUB CHANGE WAVE
4月05日 宮城 仙台RENSA
4月11日 京都 磔磔
4月13日 兵庫 神戸Harbor Studio
4月15日 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
4月17日 島根 出雲APPOLO
4月19日 香川 高松MONSTER
4月20日 愛媛 松山W studio RED
4月22日 岐阜 柳ヶ瀬 ants
5月22日 愛知 名古屋DIAMOND HALL
5月24日 大阪 Namba Hatch
5月25日 広島 CLUB QUATRO
5月28日 北海道 旭川CASINO DRIVE
5月30日 北海道 札幌PENNY LANE 24
5月31日 北海道 小樽GOLD STONE
6月05日 福岡 DRUM LOGOS
6月07日 熊本 B.9 V1
6月08日 鹿児島 CAPARVO HALL
6月12日 東京 Zepp Haneda
6月19日 栃木 宇都宮HEAVENS ROCK VJ-2
6月21日 福島 郡山HIPSHOT JAPAN
6月27日 静岡 Livehouse浜松窓枠
7月04日 山梨 甲府CONVICTION
7月12日 沖縄 桜坂セントラル
【CD予約最速先行 チケット申込期間】
2024/11/4 (月) 21:00 ~ 2024/12/1(日) 23:59
※申込にはニューアルバム『viraha』の超早期予約特典として配布されるシリアルナンバーが必要となります。
https://eplus.jp/brahman-7th/

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