【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>BRAHMAN、それぞれの人生を歌い叫ぶ

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SEの「Molih ta, majcho molih」に合わせて映し出された映像は、水墨画タッチの水滴が落ち、そのひと雫が地下で無数の根となり、大樹となり、数々の命が芽吹いていく様を描いたものだ。昨年の春頃にコロナ禍が明け、そこから世代感も価値観もさらに多様になった新たなシーンの創生を表しているのか。喪失を背負いながらも前へ前へと生き続ける人間の姿そのものを希望として捉えたものなのか。あるいは、今この瞬間に生まれて今この瞬間に消えるかもしれない命だからこそ今ここで煌めかせたいと願うのだ、というメッセージか。

◆ライブ写真

何にせよ、BRAHMANの音楽が一貫して歌い鳴らしてきた死生観の旅を光の中に描いた映像は、本質的であると同時に“新たなBRAHMAN像”でもあるのではないか──そんな予感を煽る、雄大で神秘的なオープニングだ。


そんなSEが終わると同時にKOHKI(G)が鳴らしたのは「THE ONLY WAY」だった。失わない唯一の方法は失い続けること、迷わない唯一の方法は迷い続けること、といった真理的な歌を叩きつけていくオリエンタルなハードコアだが、おそらくBRAHMANにとっても、その音楽を受け取る我々にとっても、生きた時間を重ねれば重ねるほど「生き続けろ」というシンプルな答えとして響いてくる楽曲ではないだろうか。深く深く死と生を歌い続けて来たバンドだからこその重み、深み、そして明快さがこの曲にはある。


続けて披露された「賽の河原」ではTOSHI-LOW(Vo)がフロアの手拍子を煽り、ラストに叫ぶ《ここに立つ》というラインを観客に丸ごと預けるというひと幕も。なぜ生きてなぜ死ぬのか、という根源的な問いが在り続けるのは変わらず、しかし、その命の旅を「誰もが抱えているもの」として歌にしているのが今のBRAHMANだ。巨大なアリーナに点在する一人ひとりが、バラバラなまま巨大な生命体になっていくようだ。大げさじゃなく、そういう瞬間が連打されていった。

「SEE OFF」では、TOSHI-LOWがステージ下手のウィングから上手のウィングまでを闊歩し、ピットに語りかけるように獰猛な歌を放り込んでいく。対して「CHERRIES WERE MADE FOR EATING」では軽快なダンスを誘発するようにして自ら踊る、踊る。そもそもBRAHMANの歌には、声を上げたくなるメロディが山ほど詰まっている。そして共に歌いたくなるような、人生に捧ぐ切実な祈りがある。そのことをTOSHI-LOW自身が認めたのか、歌とダンスと音だけで心を通わせざるを得なかったコロナ禍のライブを経たことで、自分の命の歌が一人ひとりの命にも重なるということを実感したのか。真相は定かではないが、心を暴発させられる以上に「全力で歌える」ライブがグングン加速していった。




特に象徴的だったのは、「不倶戴天」と「今夜」を立て続けにプレイした場面だろう。「不倶戴天」の最後、《分別なき冒涜も侮辱も全ては試練/すなわち/赦すってことだ》という叫びに合わせ、それまで立てていた中指をピースに変え、そして「怒った次は、赦すんだよ。なんでかって、今日を最高の1日にするためじゃねえの? 今夜が一番よかったって言うためじゃねえの?」という言葉で「今夜」を導いたTOSHI-LOW。悪を打ち砕く以上に、大切なものを守って抱き締めるために。自分達の居場所を脅かすものに対する怒りをストレートに表現すると同時に、人と共に生きているこの一瞬を噛み締め続けられるように。怒りと慈愛の両極を同時に鳴らしたこの瞬間にこそ、BRAHMANの音楽の本質が込められていたと言ってもいいだろう。生と死の意味を問い続けて、怒るのは愛するものがあるからだということを見つめ続けて、そのどれもに答えが見つからないからこそ板の上で命を破裂させるのである。


その“破裂”がまさに表れたのが「ARRIVAL TIME」の深く重い音世界であり、マイクスタンドを折りながらステージにひざまずくTOSHI-LOWの姿だった。ラストの「FLYING SAUCER」でマイクを放り投げてステージを降りるまで、MCといったMCはなし。客席に飛び込むような場面もなし。ひたすら音と歌だけで今この一瞬を鳴らし続けるだけ。しかし、その音と歌こそがメッセージだったと誰もが理解できただろう。生き続けるという気持ち一点を持ち寄って、それぞれの人生を歌い叫ぶだけ。たったそれだけの中に、すべてがあった。

取材・文◎矢島大地
撮影◎スズキコウヘイ

■セットリスト

1. THE ONLY WAY
2. 賽の河原
3. SEE OFF
4. DEEP
5. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
6. BEYOND THE MOUNTAIN
7. 不倶戴天
8. 今夜
9. ARRIVAL TIME
10. Slow Dance
11.FLYING SAUCER

■<SATANIC CARNIVAL 2024>

6月15日(土) 幕張メッセ国際展示場 9-11
・物販 / FOOD AREA:start 9:30
・ライブ観覧エリア:open10:00 / start11:00 ※21:00終演予定
▼出演者 ※28組
04 Limited Sazabys
HIKAGE
10-FEET
HOTSQUALL
Age Factory
Ken Yokoyama
バックドロップシンデレラ
Maki
The BONEZ
NOISEMAKER
BRAHMAN
マキシマム ザ ホルモン
Dizzy Sunfist
OVER ARM THROW
dustbox
Paledusk
ENTH
ROTTENGRAFFTY
Fear, and Loathing in Las Vegas
サバシスター
FIGHT IT OUT
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
FOMARE
SHADOWS
ハルカミライ
四星球
HEY-SMITH
[OA]WHISPER OUT LOUD
▼チケット
・オフィシャルHP先行 ¥10,800
・各種プレイガイド先行 ¥11,000
・一般 ¥11,000

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