【インタビュー】HYDE、『HYDE [INSIDE]』の圧倒的表現力と攻撃性「不思議な、日記みたいなアルバム」
■やっぱり血が騒ぐんですよね、メタルって
■自分なりに激しいものを表現したくなる
──ワンマンライヴも積極的にやりつつ、フェス出演も増えていますよね。そういうステージに出て受け取った刺激が、今回のアルバムに繋がった部分もありますか?
HYDE:基本的には自分のワンマンライヴでやりたい曲を作っていくわけですけど、どんどんヘヴィだったりキャッチーになっていくのは、フェスとかで負けたくないという気持ちがどこかにあるからかもしれないですね。たとえば、CRYSTAL LAKEのあとに俺が出たとして、ショボくならねえか?とか考えると、もっとヘヴィな、ライヴで盛り上がる曲が中心になってくるから。
──ワンマンの雰囲気もラウドシーンのノリに近くなっていて、壁を壊しているように思います。ライヴパフォーマンスやフロアの雰囲気は、理想的なものになってきている実感はありますか?
HYDE:もともとは「自由にしていいよ」と言ってたんですよ。でも、ほとんどの日本人は「自由にして」と言っても何も変わらないことに気がついて。逆に何か「こうしろ」って言われたほうが嬉しいんだろうな、楽だったりするのかな?と思うようになって、最近はなるべく言うようにしてるんです。「ここで回れ」とか「こうしようぜ」って。グループの番長とかリーダーの気持ちに近いです。
──それに対してお客さんが柔軟に応えてるという。
HYDE:そうそう。だから、やっぱりそうなんだなって。当然、「やれ」と言ったからには何か事故が起きてしまってはダメだから、なかなか難しいところですね。
──アルバムでも、ラウドシーンのアーティストが楽曲制作者としてクレジットされています。MY FIRST STORYのSHOさんは『ANTI』の頃からですが、SiMのSHOW-HATEさん、CRYSTAL LAKEのYDさんなどとは、どういうふうに制作していったんですか?
HYDE:彼らとは、スタッフやバンドメンバーとかが繋いでくれて。そうして届いた曲に対して、僕が構成を変えたり、メロディをつけたりしていく感じですね。メロディは基本的に僕が作るけど、いいメロディが浮かばない時はhicoにお願いしたりもするし、本当にいろんな人の力を借りて自分の理想図をかたちにしていく作業です。今は、無理に自分だけでまとめようとせず、いろんな人の力を借りたほうがいいなと思っていて。映画監督と一緒ですよね。スティーブン・スピルバーグがひとりで全部撮ってもあんな映画は作れないだろうけど、優秀なスタッフがいて彼の理想のものができる。それに近いです。
──なるほど。
HYDE:僕としては、まだまだ甘いくらいだと思います。もっといろんな人とやっていきたいし、自分の好みのかたちにするためには専門的な知識を持っている人の力をむしろもっと借りてもいい。これまではそんなことを考えつかなかったぶん、今はもっと柔軟にいろいろ取り入れたいと思ってます。
──できることがどんどん広がっていくと。
HYDE:これもソロならではですよね。バンドはやっぱりメンバーが作ったものをメンバーでまとめるのが基本じゃない? そのぶん個性的になるけど、あまり広がりはないですよね。もちろん、それが悪いというわけじゃないですよ。たとえば僕が大好きなデペッシュ・モードは、あのふたりだけで作る音楽がいいわけだから。でも、ソロはそうじゃなくていいんじゃない?と思ってて。自分が知らなかった好みを教えてもらえるかもしれないし、いろんな人が作ってくれる可能性だってあるし…反対する人もいない。ひょっとしたらモトリー・クルーが作ってくれるかもしれない。そういうこともあり得るじゃないですか。
──可能性は無限ですね。一方、ほとんどのクレジットにAliさんとhicoさんが入ってますけど、今回もサウンドのまとめ役的なポジションですか?
HYDE:ふたりはほぼほぼHYDEですから(笑)。特にAliは曲だけじゃなくて、歌詞を書くときも僕の意向をちゃんと汲んで英訳してくれる。信頼できるし、僕も彼らの個性をわかってるから、すごく楽なんです。
──ドラマ『嗤う淑女』のオープニング曲に起用された「BLEEDING」以降の4曲は、初音源化になります。「BLEEDING」「I GOT 666」は、それまでの曲と比べると、HYDEさんの発声にしても、音づくりにしても、本格的にラウド/メタルのマナーになっていると感じました。
HYDE:今はそれでいいと思ってます。やっぱり、自分の血が騒ぐんですよね、メタルって。特に自分のソロはハードに振り切ってるから、そうなるとだんだん物足りなくなってきたんじゃないかな。ほかのアーティストのヘヴィな楽曲を聴いたりして、“あ、もっとすごい人がいっぱいいるな”と思うと、別にそれを超えたいとかじゃないけど、自分なりに激しいものを表現したくなるんですよね。
──メタルヴォーカリストとしての迫力をスクリームに感じました。
HYDE:デスボをメインにするつもりはないですけど(笑)。
──「I GOT 666」は、'90年代から'00年代のヘヴィロックの空気が満載で、スクラッチ的なピックノイズには個人的にSlipknotのオマージュを感じたり。そういうサウンド感も楽しんでいる感じですか?
HYDE:うん、楽しいですよ。
──これはヘヴィすぎるかな、という歯止めもなく?
HYDE:ないですね。
──実際ライヴでもSlipknotやLINKIN PARKの楽曲をカバーされてますよね。このあたりのバンドが頭角を現してきた頃、HYDEさんはもう第一線で活躍されていましたけど、当時も聴いていたんですか?
HYDE:リアルタイムでも聴いてましたよ。LINKIN PARKは特に。Slipknotは全部聴いていたわけじゃないから、ちょっと逆のぼったりもしたけど。あえて難しい曲をカバーしてるのは、ヘヴィな曲をやる練習も含めてなんですよ。普段はわざわざ練習することはないけど、ライヴでやるとなったら、下手くそだと叩かれちゃうから仕方なく練習するじゃん(笑)。それがいい練習になってるかなと思ってて。
──なるほど。L'Arc-en-Cielと平行してSlipknotやLINKIN PARKを聴いていた世代も少なくないと思うので、そこが今交わるというのがすごく新鮮でした。
HYDE:確かにそうかもね。でも、L'Arc-en-Cielの「AS ONE」は当時、めっちゃSlipknotを意識してましたから。で、最近Slipknotのライヴを観て、やっぱりこれだよなって。自分がときめく音楽となると、どうもそっちっぽいですね。
──そこから、さらに「SOCIAL VIRUS」は完全にメタルコアで。
HYDE:YD君がまさにCRYSTAL LAKEらしい曲を作ってきてくれて、それをアレンジしていった感じですね。こういう感じの曲がやりたかったんだけど…ファンはついて来れるかな?って思いながら(笑)。
──オーディエンスの反応が楽しみですが、この曲はツアー<HYDE [INSIDE] LIVE 2024>でも披露されていなかったですよね。
HYDE:ちょっとまだ隠し球みたいな感じで(笑)。やっぱり、こういう曲はどうせだったら大きい会場でやりたいしね。
──巨大なサークルができて、みたいな絵が浮かびます(笑)。歌としてはいかがでしたか?
HYDE:CRYSTAL LAKEみたいな表現は、まだまだ僕はできないけど、それを目指しているわけでもないし、これはこれで僕の個性かなと思います。早口で歌うのもあんまりやってこなかったから、いろいろと新鮮でしたね。すごく楽しかったです。
──歌詞には“Hatred=憎しみ”という単語が出てきたり、攻撃的なものになっていて。やはりヘヴィなサウンドにはそういう歌詞が出てきますか?
HYDE:そうですね。激しい音楽に乗せてガーガー叫んでるのに“君のことが好き”みたいな可愛い歌詞だと、僕の場合は感情が入らないので、必然的に自分の中でムカつく感情をクローズアップしてやることになりますね。でも、クローズアップしたことで病むかと言うと、病むわけじゃなくて、むしろ吐き出すことによってスカッとする。普段はわざわざムカつくことを意識しないけど、わざわざそれを見ることによって、ひとつ浄化される部分があるのかなと。
──そういうところもメタルの魅力のひとつですよね。
HYDE:そうですね。
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