【ライブレポート】謎の10代ユニットdocka、圧巻の生歌とドラムを披露
dockaが9月18日に渋谷にて100人限定のシークレットライブを開催した。
dockaは、デビューシングル「逃飛願望」のミュージック・ビデオが各種SNSで100万回再生を突破したことでも注目されている、17歳のkoco(Vo / Lyric)とfumi(Dr)によるユニットだ。
開催当日時点では「逃飛願望」の1曲しか発表されておらず、解禁されている情報もわずかだったものの、楽曲の完成度とリスナーへ深く寄り添う歌詞で生のステージ披露に多くの期待を集めたのか、満員の会場での初ライブに。未発表曲を含む全11曲を、2人を支えるバンドメンバーとしてベースKohei Nakanishi、キーボードHaruki Ayukyo、ギターKeisuke Wadaを加えたバンドセットでパフォーマンスした。
dockaは顔出しがされておらず、オフィシャルサイトにもメンバーのテキスト情報とコンセプトが記載されているのみだ。
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どっかに行っちゃいそうな気持ちも、
どっかにぶつけたい気持ちも、
どっかに告白したい罪も、
どっかに消しちゃいたい身体も、
ぜんぶぜんぶ、
宛先はdockaでお願いします
docka :
koco (17) - Vocal & Lyric
fumi (17) - Drums
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近年、YOASOBI、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。など、コンセプチュアルな作品がリスナーの心を掴む背景もあるが、dockaもまたリリックを手がけるkocoの内省と諦念が混沌とした世界観の作品をつくりだしている。
そんな彼女らの記念すべき初ステージは、fumiのドラムソロから幕を開けた。今か今かと待ち望んだ空気を一気に掌握するように力強いフレーズが披露され、大きな拍手が送られる。続けて「逃飛願望」のイントロが流れ、観客の熱も上昇。二人はフードを深く被り、アイアクセサリを纏っていたが、時折覗かせる表情から高揚感が伝わってくる。
「逃飛願望」は、MAISONdes、缶缶との「もういいもん」や、asmiと「ラヴィウス」を手がけたボカロPの⌘HYNOMEがサウンドプロデュースしていることでもファンの視線を集めていた。しかし初の生歌唱となったkocoの歌声は、ファンの予想を超えて独自の歌いこなしで観客の心を掴んでいった。不安定な感情を剥き出しにしたシャウトだけでなく、安定したメロディ、そしてfumiとの呼吸の合ったグルーヴが楽曲の世界観にリアリティをもたらす。
その後も、初々しさを感じさせるMCと堂々たるパフォーマンスで会場のボルテージを上げ続け、初ライブとは思えないほどdockaとして確立された空気で会場を包み込む。アンコールを含めて全11曲の安定感のあるライブを経て、今後の更なる進化を予感させる内容で幕を閉じた。
アンコールで披露された「逃飛願望」のアレンジver.が余韻をもたらす中、ステージ画面上で新曲「性格悪すぎて無理」のティザー映像が公開。アニメーションMVであった「逃飛願望」とは打って変わり、実写撮影の一部と10月24日にリリースされることが発表された。
ライブ後には、Xで「初ライブってのが信じられないくらい堂々としてたし、歌も動きも音楽に憑依されてる感じで表現すごすぎた〜〜 それで16歳と17歳って聞いてひっくり返った」「めちゃくちゃ良かった、歌ってるときとMCの時のギャップもやばかった」など好意的なポストはもちろん、「fumiさんのドラムカッコ良すぎるし、歌詞ブッ刺さるし、kocoさんの歌声美しすぎで鳥肌立ちました!」と歌詞や楽曲のムードに共感の感想も多く見受けられていた。
最後に、dockaの世界観を表現するデザイン性についても記しておきたい。ミュージック・ビデオでもアートディレクター・映像作家の高橋まりながディレクター/アニメーターを務めているほか、今回のライブでもdockaのビジュアルと歌詞が構成されたリーフレットが配られるなど、アートワークひとつひとつの細部に一貫する美意識が詰まっている。さらに、dockaとしてファッションブランドの展開も準備されており、ライブ時にメンバー全員が着用していたアイコニックなパーカーが販売される予定とのこと。楽曲、映像、マーチャンダイズなどそれぞれメッセージ性を持って発表し、それらからdockaメンバーによる強い意志が感じられる。dockaは果たしてどこまで行き、新たな景色を見せるのか。彼女らの未来に期待を感じずにはいられない。
写真◎YUKI KAWASHIMA
文◎中村悠人
◆dockaオフィシャルサイト