【インタビュー】Waive、解散へ向かうバンドの19年ぶり新曲と対バン2DAYSに現在地「眩しさに惹かれて、自分自身を発光させていく」

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■自分が唯一できるのは
■新曲を書くことなんじゃないかな


──新曲「火花」リリースは、それほど大きいものでしたか。

杉本:リリースから、たかが数日しか経っていないし、配信だけなので作品を手に取ってくれている人がどんな表情をしているかを見たわけでもないんだけど。今の時代はフィードバックがあるので、待ってくれていた感じが伝わってきたんです。それはファンだけじゃなく、同業者の人たちが待ってくれていた感じもあります。“やっとちゃんとやるの?”みたいな。それを受けて、“見てくれているんだな”と気付いたというのはありますね。

──実際、うれしかったですよ。新曲リリースは、バンドが生きている証ですので。曲づくりに対して今は意欲的なんですよね?

杉本:つくりたいか、つくりたくないかで言えば、しんどいので曲はつくりたくないんですけどね。でも、目的のためにそれが必要だから、“やらなければ”というところが正直強い。“曲を書きたい”という純粋な気持ちでつくっているだけだったら、たぶん発表してないので、“何かフィードバックを得たかった” “何らかのゲインのために書いてた”というのは昔も今も変わらないです。ただ、“書かないと!”という想いは強くなったし、もっと言うと“自分が唯一できるのは、書くことなんじゃないのかな”というところにはきていて。

──なるほど。

杉本:武道館までのターンの中で、“あんなこともしなければ、こんなこともしなければ”といろいろ考えていたけど、所詮自分がやることはしょうもないレベルで、“それで何か?”ということくらいしか起きないんじゃないのかな、という気がするから。曲を書くのも基本的にはそうで、それで変わるかどうか分からないんですけどね。でも自分のできることの中で、確変を起こす可能性が唯一あるのは、作曲とか作詞かなと。曲づくりしか、もしかしたら出来ないのかも、というところにはきていますね、僕は。

──でも、それこそ正攻法であり、ロックバンドとしての核、大切な魂の部分ですよね。

杉本:そうなのかもしれない。正直、分からないですよね。我々はステージにも立つから、“演奏、歌唱に力を入れようよ”とか“美を意識しようよ”とか、そういうことに考えもいったし、もうとにかくいろいろなことを考えたんです。だけど、“もういいかな。それは俺のやることじゃないのかも”とはなってきていますね。


──新曲「火花」はロックバンドならではの熱量が伝わってくる曲で。2023年4月、再結成と2025年の解散を同時に発表した動画で、サビだけが先行して流れていました。あの後、どのように完成させたのですか?

杉本:かなり急につくった曲ではあったんですけど、もちろんデモをつくる時に何パターンか考えて、録っている時にメロディーが変わった部分も若干だけどあります。「火花」に関しては、“これを書かないと始まらないかも”という歌詞がありました。キャッチコピーを付けないといけなくて。つまり、今回は“燃やし尽くす”というテーマに行き、“その“燃やし尽くす”って何なのか?”をちゃんと伝えるツールが先に必要で。そのツールとして最も適しているものは、やっぱり僕らにとっては音楽だというところにいき…という逆算でした。“燃やし尽くす”というテーマを熱いバラードで表現することもできただろうけど、“ここからだ”みたいな、ある程度勢いみたいなものを見せないと、ここまでと何が違うのか分かりにくいんじゃないのかなというのもあって。

──勢いと疾走感は、歌にも演奏にも漲っています。

杉本:こういう曲調にする、という方向性だけが再結成と解散発表の時にはあって。肉付けしていく中で、ライブで先にやったということもあるので、録るにあたって、例えばテンポを速くするとか遅くするとか、選択肢はいろいろあったんです。だけど、結構スムーズに「ライブでやっているもののままでいいんじゃね?」とはなりました。「シンセ入れますか?」という相談を僕からみんなにしたけど、「入れてもいいし、入れなくてもいい」みたいなところにいきつつ、「ガッツリ入れる曲じゃないよね」という共通認識だけはあって。発表から1年経ってボヤけているだけで、改めて考えると“ここからなんだな”と思うから、「バンド演奏だけでいこう」ということになりました。結構いろいろと考えたけど、発表の時に考えたことに戻っただけ、という感じですね。

──田澤さんは、この曲が音源として完成した今、どう感じていますか?

田澤:歌録りは、実は結構難しかったんです。自分としては珍しく、あまりコンディションが良くなくて。

──音源を聴いても、不調は全く感じられませんけどね。いつ頃録られたのですか?

杉本:ドラムを録ったのが今年2月とかだから、歌は春ぐらい?

田澤:うん、春ですね。「歌えねえ」みたいな。でも善徳くんが「俺はそこまで気にならん。むしろその必死なのがいい」と言ってくれて。なんとか上手く形になって。正直、自分の中でまだ終わってないというか。記録には残ったけどまだ途中なイメージで。これからまたずっと歌っていく中で、もっと変化していくんやろうな、と思ってます。


──田澤さんとしては、まだ伸びしろがあると?

田澤:分からないです。伸びるのかな? 逆にいいところが消える可能性もあるじゃないですか。録っていく中で「ここはこういうふうに聴かせたいから、こういうふうに歌ってみてくれ」という要の部分はあるので、そこは崩さずに。そこがブレると…これは奢った言い方になるんですけど、僕は何でもそれなりにできちゃうので、小手先になりがちなんですよ。でも善徳くんが「この枠から出るなよ」みたいな、指標となる部分をしっかり捕まえてくれていたので。

──杉本さんは、けっこう細かくディレクションされたんですか?

杉本:細かいというほどではないですけどね。近年のWaiveの中では確かに一番こだわったかもしれない。どんどん歌っていく中で、当たり前だけど体が疲れていって、でも逆に喉が開いていくじゃないですか。田澤くんが言っていた通りで、テイクを重ねると、良くなる部分と悪くなる部分が出てくる。例えば「2テイク目のほうが下手だけど、勢いはあるかな」とか、いろいろなパターンがあるので、僕は大体3本ずつ録るんですけど、この曲は4本録って、最後に1曲まるっと“途中で何があったとしても止めずに歌ってもらう”5本目を一応録っておいて。録っている時のディレクションは、他の曲よりはこだわったけど、そんなには僕、細かく言わないんです。

──その場で「もっとこう歌って!」と逐一指示出しするわけではないんですね。

杉本:“その場で言われたことを解釈して歌おう”っていう頭になっていったら、レコーディングまでに決めてきたことがブレてしまう可能性があるので。特にこの曲は既にライブでやっていたから、レコーディングで違った指示を出すと、「え? そっちやったん?」という迷いが生じるだろうから、言うことは「それで合ってる」だけでいい気がしていました。もし相当違っていたら、ライブの時点で「違ってるから、こう歌ってほしいねん」という話が出ていたはずなので。だから、よいしょするわけじゃないけど「間違ってはないね」「悩んでるんやったら、悩め」のスタンスで僕は録るし、基本誰を録っても、歌ってもらったり演奏してもらった素材の中の、どれを選ぶかが僕のディレクションで一番大事なところなんです。

──録った後の作業が杉本さんにとって肝なんですね。

杉本:だから、録っている時のディレクションは本当に、“訊かれたことにどう答えるか”であって、あまりそこで要求するのは違うかなと。自分自身も歌を歌うようになったから、というのもあるし、楽器だったとしてもそう。フレーズが間違っていれば指摘しますけど、ニュアンスみたいなことを言われたって、「なんで今言うねん」となるだろうから。そこを変えると、何のために本人が考えてきたのかってなるし、熟練度の高いミュージシャンなので、全員に対して信じたいところでもある。そうやって勢い的に録る分というのもあって、例えば歌でいうと一文字ずつや息ごとに整理して完成形にしています。

──ものすごく細かいんですね。

杉本:自分しかやらないディレクションが、そこにあるはずだと思っているから、もう“そのやり方で”と自分で決めてしまっているので。それをやっていく時に、リズムや息遣い、テンション感、ピッチ感みたいなものに対して、“自分の中で一番求めているもの”だったり、“想定外だけどこういう聴こえ方するんだったらこっちがいいな”だったり、そういうものをどう選ぶか。それが自分の仕事だと思っているから。昔のWaiveはレコーディングでテイク数をひたすら重ねて、“もう分からん”って歌になってしまっていたと思うんです。今振り返っても、“あの辺でOKにしときゃよかったな”と思ってしまうようなレコーディングをしていた。それが何の意味もないと今は思っているから。もうそんな修行のようなことをやる時期じゃないんです、全員が。まぁ、貮方(孝司/G)だけは経験値が違う(※現在、音楽活動中心ではない生活を送っている)ので、知らんけど(笑)。でも、やっぱり全員を信じてるな。

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