【インタビュー】Petit Brabancon、ミヤが語る2nd EP「進化している。そこは本当にミュージシャン冥利に尽きる」
■あのドラムであの歌ですからセオリーがない
■それは面白い部分だと思います、すごく
──前作ではすごくポップな、'90年代ヴィジュアルっぽい感じの曲もありましたけど、ああいう曲も含めてミヤさんの青春時代というか、音楽的な自己形成の時期に影響を受けたものがここにきて出てきていると。
ミヤ:そうですね。そういう時期のもので、出していないもの、けっこういっぱいありますよ。自分の引き出しとして。日本のインディーズに一時期ハマっていたので、日本のインディーズバンドが影響を受けているバンドに影響を受けている感じですね。インディーズというものが認識され始めた頃。'93〜'94年とか。だからヴィジュアル系とかもまだそこまで確立していない。
──その辺の音楽って、やっぱり今の音楽にはないものがある。
ミヤ:そうなんですよ。そこがいいなってすごく思っていて。ジャンルが何なのかよくわからない音楽がけっこうあって。元をたどっていくとベーシックなものはあるんですけど。けっこう定まっていない感じの音楽が面白かったんですよね、当時のヴィジュアル系って。インディーズのバンドもそうで。メタルじゃないけどガレージでもないし、みたいな。ハードコアとか、そういうもの、生々しいものがカッコいいとされる時代が、また来ていると思うんですよ。整っているものがダサいっていう時代になっているような気もしますし。まぁ、憧れていたんでしょうね。尖っているってことに対して。
──ミヤさん自身も、整っている、キレイにまとまっているものを何とかぶっ壊したいという衝動が常にあるわけですね。
ミヤ:それはそうですね。自分のギタリストとしての味というか信念というか、そういうところになってくるんですけど。整っているもの、聴き馴染みがいいものって、通り過ぎちゃうので。あまり得意ではないです。いいものはもちろん好きなんですけど。そのうえで、ちょっと引っかかる部分がないと自分は好きになれない、なんでも。楽器でもそうだし、クルマでもそうだし。全てにおいて引っ掛かりが欲しいので。
──ハードでラウドなロックであっても、何かちょっと違和感が残るというか、引っかかる部分があるという、そういう工夫が、ミヤさんの曲には常にあるわけですね。
ミヤ:工夫というか匂いというか。自分が好きになる音楽で考えていくと、すげーメタルだけど後ろに別のジャンルを感じるとか。ラウドなドラマーだけどジャズを感じるなぁとか。そういうのが好きなタイプです。
──なるほど。Petit Brabanconにおいてはそういう引っかかる部分というかちょっとした違和感の部分というのは、例えばどういう部分だったりするのでしょうか。
ミヤ:いや、違和感しかないと思います。
──(笑)違和感しかない。
ミヤ:だってあのドラムであの歌ですからね。なんというか。セオリーがないみたいなものなので。だからそれは面白い部分だと思います、すごく。
──Petit Brabanconは各メンバーのバックグラウンドが全然違うじゃないですか。同じような音楽を聴いてきた人が全然いないというのが面白いなと。
ミヤ:そうですね。共通で好きな音楽もあるし真逆なところもあるし、というところですかね、面白さというのは。メンバーのバランスは人によってかなり違うので。
──その中でやっぱり、ミヤさんの作る曲が、Petit Brabanconにとってのど真ん中というか王道というか。メインストリームというか、そういうところにあるような気がします。
ミヤ:まぁイメージして書いてはいます。特にそうしようと思って書いてはいないのですが。
──今回の新しいEPで、yukihiroさん、antzさん、ミヤさんという三人の個性みたいなものがますますハッキリしてきたというか。
ミヤ:そうですね。
──それは各人がそれぞれの役割というか、自分のやるべきことみたいなものに自覚的になって、そういう曲を書いてきたというのもあるのではないかなと思ったんですけど。
ミヤ:あるんですかね。今後、yukihiroさんが例えば俺が書いた「Vendetta」みたいな曲を書いてくると思わないし。それぞれ信念がメンバーにあるから。俺の場合は「今回こういう方向性で行こうよ」って言ってくれたのは有難かったですね。
──最初の方向性もそうだし、最終的な決断というか、いろいろあって話がまとまらなかった時に、じゃあこれで行こうよって最終的に決める人は誰なんですか?
ミヤ:みんなが良いと思ったものを決める、というのがあるんですけど、それでも決まらなかったら年齢の一番高い人が決めるんじゃないですかね。
──yukihiroさんということですか。
ミヤ:そうなりますね。そこはさすがに。あとはバンドを作った人がどう思うかというのはでかいですね。
──京さんですね。
ミヤ:京さんです。
──京さんは、「今回のEPはこれまでのPetit Brabanconの中で一番気に入っている」とおっしゃってましたけど。
ミヤ:あぁ。やりたいイメージがすごく表現ができたということじゃないでしょうか。「激しくしたい」としか言われていないですけど(笑)。
──「眼光」は、どういう風に作られた曲なんですか?
ミヤ:「眼光」は…隙間がある曲があまりないので、Petit Brabanconは。プレイヤーとしてはすごくいろいろできる人が揃ってるのに、隙間がある曲が少ないなと思って。ミクスチャーっぽい、隙間があるミクスチャーのイメージで作っていました、最初は。ただPetit Brabanconのメンバーでやると、自分がイメージした感じの曲とはまた違った曲になりましたけどね。
──そこがバンドの個性ってことですね。タイプの違うギタリストが二人いるのがこのバンドのひとつのポイントだと思うんですけど。antzさんとのギターの振り分けというか、役割分担みたいなものは今回どういう風に決めていったんですか?
ミヤ:そこでいうと、今までの中では今回が一番いい。ツインギターの妙が出せていて、近づくところは近づいて、離れるところはより離れて、という感じで。あと打ち合わせは減ってきましたね。
──減ってきたというのは要するに、言葉にしなくてもわかり合えるというか。
ミヤ:わかり合えるようになってきました、前よりは。ただやっぱり癖っていうのがそれぞれあって。俺もantzさんも変な癖があるので。その癖が全く理解が出来ないことがあって。そういう時は訊きますね。「ここはどうなってるんですか?」って。「dub driving」のケツの終わり方とか、俺の引き出しには全くないので。
──あぁ。あるんですか、ミヤさんの引き出しにはない部分が。
ミヤ:ありますね。antzさんは確実にあります。ギターリフの癖とか。激しいと感じるものの、激しいと思う部分が、微妙に違う。いやけっこう違うと思う。
──例えばデモで、例えばこのギターは自分が弾く、これはantzさんが弾く、みたいな、そういう分担は想定しているわけでしょう?
ミヤ:それはもちろん。左にいるのが自分、右にいるのはantzさんって決めているので。デモで、自分のギターで作ったものをantzさんが右だけ置き換えてきて。「どうですか?」みたいな感じのやり取りは、もちろんありますよ。スタジオに入るまでの間に。
──例えば、デモのギターのフレーズをなぞるにしても、完全にコピーするわけじゃないし、出来るわけもないから。自ずとその人の個性みたいなものが出てくるんですよね。
ミヤ:あ、完全にコピーしなくちゃならない部分もあるんで。バッキングのダブルのリフとかに関しては。その辺は高松君が細かく解析していますね。
──あ、高松さんが。
ミヤ:はい。高松君がすごく細かく解析してくれたから、「眼光」に関しては。俺は全部感覚で作っちゃうので、数学的に解析してくれて助かった部分はありました。リフが激しいところと、激しくないところで音程が違っていたところがあったんですよ。激しいからこっちの音程、激しくないからこっちの音程って、感覚的にやっていて俺は全部一緒だと思っていて。ただ、動いている指は違うところに行っていた、みたいな。「違いますよね」って高松君に言われても俺はわからなかったんですよ。
──あぁ、そういうものなんですか。
ミヤ:(笑)解析してくれて、「まさにそうだった」というので。逆に高松君が解析してくれていなかったら三人とも別のことをやってヘンなことになってた可能性があったという。
──自分が書いた曲なのに自分ではわからなくて、他人に指摘されてわかったという。
ミヤ:そうそうそう、そうです。
──そういうことってあるんですか(笑)。
ミヤ:ありますね、俺は。考えて弾いていないので。高松君は真逆で、ちゃんと数学的に考えてる。そのキャラクターがプレイになっている人なので。助かりますね、すごく。
──へえ。そんなこと高松さん何も言ってなかったですよ(笑)。そこらへんって、なかなか表面には出てこないけど大事ですよね。
ミヤ:本当にそうなんですよ。だからすごく勉強にもなるし。
──なるほど、すごく面白いですね。
ミヤ:面白いです。そこらへんがしっかりしていないと、特に今の録音ってすごく音が良く録れるので、ちょっとした違いもズレもデジタルだとわかってしまう。そこはメンバーごとに役割分担がすごくできている感じがしますね。
──昔みたいに、ラフに、適当にやってもカッコよく聴こえちゃう時代とは違うということですね。
ミヤ:違いますね。
──特にデジタルレコーディングになって細かいところが録れるようになって余計に耳につくようになる。
ミヤ:そうなんですよ。やっている音楽がそういう時代のもの、というコンセプトもあったりする中で、音質とかが良すぎて困るというか。汚すために考えることが多いですね。滲ませるために。昔は写真もテレビも滲んでいたから、よりクリアなものを求めてデジタルになったわけじゃないですか。それの真逆なことをしていて。なんだかなぁという感じです。
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