【インタビュー】Petit Brabancon、antzが語る2nd EP「このメンバーで似たような曲は…たぶん一生できない」
Petit Brabanconが8月7日、2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』をリリースする。EPとしては約1年ぶり、音源としては2024年1月のライヴ<EXPLODE>に先駆けてリリースされた「a humble border」以来の作品となる。収録は全7曲。yukihiro、ミヤ、antzといったコンポーザー陣が手掛けた楽曲はこれまでに増してアグレッシヴだ。重く鋭く躍動的なサウンドはメンバー5人の本性が牙を剥いて凶暴極まりない。
◆Petit Brabancon (プチ・ブラバンソン) 画像 / 動画
コロナ禍の2021年末に本格始動を発表したPetit Brabanconは、シングル2作、フルアルバム1作、EP1作、そして前述の配信楽曲と作品リリースを積み上げる一方で、ツアーやイベントライヴ出演を精力的に重ねてきた。もともと名高いバンドのメンバーが集結したPetit Brabanconゆえ、そのポテンシャルの高さは折り紙付きだが、とりわけ2024年1月の東阪ライヴ<EXPLODE>の破壊力には凄まじいものがあった。その圧倒的な音圧と存在感を前に、形容する言葉すら見当たらなかったほどだ。その熱を持ってリリースされる最新作が、2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』となる。
BARKSではこれまで同様、メンバーのパーソナルインタビューを試みた。先ごろ公開した第一弾の京、第二弾のミヤ、第三弾の高松浩史に続く第四弾は、ギタリストのantz。2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』に収録された「dub driving」「Mickey」というantz作曲の2曲は、Petit Brabanconが本来持つダンサブルな躍動感を一段上に推し進めたうえ、オルタナティヴな破壊力が痛快この上ない。「dub driving」のあまりにも印象的なギターリフや楽曲後半のアレンジはメンバーの引き出しを広げ、新たな扉を開いたと言っていいアンサンブルだ。Petit Brabanconの可能性を拡張するantzに『Seven Garbage Born of Hatred』サウンドと個々のメンバーの現在について訊いたロングインタビューをお届けしたい。
▲2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』
◆ ◆ ◆
■デモの締切が1月のライヴのすぐ後
■ライヴの感触が反映されたと思います
──Petit Brabanconの新EPが出ます。今回はかなりハードでラウドでアグレッシヴな内容で。
antz:はい。
──前回はポップな曲もありましたけど、今回はかなりゴリゴリな感じできていますね。これはやはりバンドとしてそういう方向に進もうという判断があったんでしょうか。
antz:そうですね。そういう意思疎通があったと思ってます。
──メンバー全員の意志として、ポップな方向よりはラウドな方向に行こうというような。
antz:タイミングは忘れちゃったんですけど、今年1月のライヴ(東阪公演<EXPLODE>)の感触というのも、けっこうデカく作用していたと思うんですよ。やっぱりコロナ禍に始まったバンドなので。自分が知っている感じじゃない(ライヴの)スタートだったと思っていて。それを取り戻したような感覚が、今年1月のライヴにはあったと思うんです。僕はメンバー全員がそういう感じだったような気がしていて。これが本来やろうとしていた感じだったのかなと。そういう意味で自然な方向に舵を切ったというのはあると思います。
──1月のライヴを拝見して、ちょっとブレイクスルーしたというか、突き抜けた感じというのが確かにありましたね。やはりメンバーとしてもあのライヴはかなり手応えのあるものだった。
antz:手応え…印象的には、東京は今までの延長的なイメージで。どちらかというと大阪の感じですかね。
──あぁ、そうなんですね。私、大阪は観れなかったんですけど、でも東京だけでも随分、ガツンときましたよ。
antz:もちろん東京もあったんですけど、大阪はそこを経てのライヴだったので。“こういうことだよな!”っていう。
──“今までのライヴと違う感触があった”というのは、もうちょっと詳しく説明していただくとすれば。
antz:やっていることは別に変えてないんですけど、お客さんのノリ方とか楽しみ方みたいなところが、(自分たちが)求めているものに近づいている感覚があって。そういう景色を見ながらやると自然にこちらも変わってくる。そういう意味で、普通にあるべきライヴの姿…自分が思っていたライヴの姿をやっとやれた、という感じが個人的にはしています。自分は普通に客としてライヴを観に行って、モッシュしたりダイブしたりもみくちゃになったり、そういうことでテンションが上がってライヴを楽しんでた。それに対して自分が思っていたことがやっとでき始めたという感じですね。
──お客さんとの相互作用が一番大事だということですね。
antz:はい。まさにそうだと思います。
──それはやはり、コロナ禍で声出しができないとか、思うようにアーティストに対しての意思表示がしにくいとか、そういう状況が関係してたんでしょうね。
antz:うん。そうじゃないかなとは思っています。このバンドはそこからのスタートだったので。どうノったらいいのかわからない、みたいな。他のメンバーのインタビューで、印象に残ってるライヴに<KNOTFEST>を挙げてましたけど、ああいうお客さんも返してくれてこっちもそれに応えるみたいな、そういう相互作用が、特に大阪に関してはあったんじゃないかなと思いますね。
──なるほど。<KNOTFEST>が良かったというのは、いい意味でPetit Brabanconというのがどういうバンドでどういうライヴをするのか、そんなに深く知らない人がいっぱいいたというのが大きかった気がするんですよ。
antz:そうですね。だからこそというのはあったと思います。
──単純に音だけを聴いて、カッコいいかどうかを判断して、カッコ良ければノるっていう、非常にシンプルな現場だった。私はその場にはいなかったけど、たぶんそういうのがあったんだろうなと。
antz:はい。そういうオーディエンスの気持ちもわかるので。ノってくれたのは別にお世辞でも何でもなかったっていうのは良かったと思います。
──なるほど。そういうバンド全体の手応え、認識があって。それを元に今回のアルバムの制作に入ったということでいいんでしょうか。
antz:というか、デモ制作の締切が今年1月のライヴのすぐ後で。大阪で曲を書いてたりとかしたくらいなので。いつもはあまりやらないんですけど、ギターとPCをホテルに持ち込んで。
──そんなに手応えのあるライヴの最中に作っていたということは、当然そのライヴの感触は反映されますよね、楽曲に。
antz:そう思いますし、自分が作る時も、こういうメンバーでこういうライヴをしている、みたいなイメージで曲を作る時もあるので。少し時を重ねたところで、そういうイメージがしやすい状況になったというのはあると思います。
──演奏しているメンバーを想像しやすくなったと。お客さんの反応も含めて。
antz:はい。だから、そういう気持ちは入っていると思います。
──今回、antzさんは2曲提供されています。2曲ともトライバルというかファンキーというか。ノリの良い、リズム中心のダンサブルな曲で。意図してこういう風な感じの曲にしたのか、それともこうなってしまったのか、どちらに近いんでしょうか。
antz:まず、「dub driving」に関しては、もう『Automata』(2023年発表EP)のデモの提出段階で既にあったんです。もう予備曲として存在していたんですよ。ただ、(EP全体とは)ノリが違うというところで、出すなら次かな、みたいな感じでペンディングになっていた。どこにもハマらない、当時はそういう感じでした。
──なるほど。
antz:自分的には当時少しテーマになっていた…'90年代を匂わすような感じというか。あとはポジパン(ポジティヴパンク)とか。オルタナ的なところとかを意識していたというか。個人的にですけど。
──そのポジパンの感じが、前作のEPにはちょっと合わなかったというバンドの判断があったということですか。
antz:まぁ、そうだと思います。あまりハマらない、ちょっと感じが違うと。自分もそうだったと思う。曲はいっぱいあって、選べる状況なので。組み合わせしていった時に“ちょっとこれは違うかな“っていう。その時から京さんは「これはやるなら(CDの)1曲目がいいかな」って言っていたので。今回は(SEの1曲目があるけど)そうなったというか。
──ああ、なるほど。逆に言うと今回のEPのコンセプトというか、全体の雰囲気とか流れを考えると、今回はこの2曲、「dub driving」も「Mickey」もハマるであろうという判断があったということですね。
antz:ですかね。あともう1曲大阪で作ったものがあるんですけど。EPなんで曲数の制限もあるし、それは追々という感じで。
──Petit Brabanconって現状では曲を書く人が3人いて。3人のお互いの関係性というか、誰がどういう曲を書いてきてみたいな、暗黙のうちの自分の守備範囲を多少なりとも意識することもあるんじゃないかと思うんです。例えばantzさんだったらミヤさんがどういう曲を書いてくるか、yukihiroさんがどういう曲を書いて持ってくるか。それに対して自分がどういうものを出していけばいいのか。そういうことを考えることもあると思うんですけど。
antz:「dub driving」は、さっきも言ったように前からあって。その時は特に思うこと、考えることもなかったですけど。でも今出ている楽曲のラインナップで“こういう曲があったら面白いだろうな”みたいなのはありました。あと「Mickey」に関してはずっと昔からアイデアとしてはあって、やりたかったんです。Petit Brabanconでということではなくて。“曲を作るならこういう曲を作ってみたい”というアイデアがずっとあって…。それをこの場でアウトしてやっていったら盛り上がるんじゃないかなと思って。
──antzさんの曲って、Petit Brabanconの中ではオルタナティヴとして機能してると思うんですよ。ミヤさんの曲がバンとど真ん中にあって。antzさんの曲はそこにないものを提示しているという意味で。antzさんの曲があるからPetit Brabanconの音楽性がすごく幅広くなっているような、そういう風な印象もあります。
antz:ありがとうございます。嬉しいです。
──そういうことは多少なりとも意識されているところがあるのでしょうか?
antz:意識してできたらいいんですけど(笑)。それだったら、もうちょっと曲作れるんじゃないかと思うんですけど。僕は(ほかのメンバーが聴いてるような)ヘヴィメタルとかそこまで聴いてきてなかったし。そういう指向が思いっきり出ているんじゃないかな。個人的には、そういう曲も作ってみたいと思っているんですけど、どうしても締め切りがあるし、実験をするような時間もなかったりするので、自分の中から自然に出していくと、そういう(今回の曲のような)傾向にはなっていくというのはあるかもしれない。他のメンバーにはない要素だなという自覚はしているので、それが味になればいいなという感じで作ってますね。
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