【インタビュー】超学生、新曲「Hazure」リリース「大事にしているのは“求めてもらえるものを供給し続けること”」

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2024年はカバー動画を積極的に投稿し、春にリリースしたEP『MAR6LE』も好調のソロアーティスト・超学生が、新曲「Hazure」をデジタルリリースする。

◆撮り下ろし写真(11枚)

辻村有記とTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也の共作曲である同曲は、TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』のOPテーマ。エッジーでありながらも浮遊感のあるサウンドデザイン、ダークかつキャッチーなサビのメロディの威力、台詞やラップのセクションなど、頭からラストまで刺激的な音楽体験ができる1曲に仕上がっている。

同曲について超学生に質問を投げかけていくと、楽曲への向き合い方から活動に対するスタンスにまで話が発展していった。J-POPシーン、アニソンシーンにも進出する超学生が、なぜいまインターネットツールをフル活用しているのか。そこには歌い手としての活動への純粋な情熱があった。

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◼︎この曲の世界の人になりきりました

──これまでも様々な作品の主題歌を担当している超学生さんですが、なろう系小説が原作のアニメの主題歌を担当するのは今回が初です。なろう系には馴染みがありましたか?

超学生:3年くらい前にラジオのお仕事で、なろう系小説を朗読する企画に参加させていただきました。それと同時期にSNSで「なろう系小説を書いている人はこういうところが大変」という投稿が流行っていたんです。「タイトルが長いのは、作品数が溢れ返りすぎてるからタイトルにどういう物語か書いておかないとクリックされないから」のような、なろう系小説ならではの戦略がタイムラインに流れてきて。僕ら歌い手もサムネイルや選曲を工夫したり、曲の長さとかも気にするので、ある意味親近感もありました。

──確かになろう系小説作家さんと歌い手さんには「インターネット上でいろんな人に読んでもらう、聴いてもらうために力を注いでいる」という共通点があります。

超学生:無料で読める、聴けるところ出身という意味でも同じだなって。だから勝手に“一緒に頑張っている人たち”と感じていました。そこから時を経て、なろう系小説原作のアニメのオープニングを歌わせていただくことになったので、不思議な縁だなと思っていますね。

──主題歌を担当するTVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』にはどのような印象をお持ちになりましたか?

超学生:異世界転生ものは主人公が異世界で別の人に生まれ変わる流れがセオリーという印象があったんです。でも『ハズレ枠』は何の脈絡もなく、突然バスの中にいた生徒たちが全員異世界に召喚されて……転生というか転移なので、登場人物の存在も服も性格も全部そのままで。それで急に「倒してほしい人がいる」と告げられて、主人公が能力の低いスキルと判断されて“廃棄”枠に認定されるというテンポの良さも新鮮でしたし、集団で転移するのも珍しいなと思いました。あと映像も、クラシカルな手法を組み合わせて斬新なグラフィックを作っていますし、オープニング映像も「Hazure」のMVとしてそのまま投稿したいぐらいかっこいい動画でした。



──復讐に命を燃やす主人公が作品のOPテーマが超学生さんの元に届いたということは、超学生さんのボーカルは強い意志や下剋上精神を持った人物像と相性がいいということだとも思いました。

超学生:なるほど。僕が「歌ってみた」の投稿をたくさんするようになった頃とコロナ禍が重なっているのもあって、「家の中にずっといなきゃいけなくて鬱憤がたまってるから、超学生が叫ぶように歌ってくれるのは観ていて気持ちいい」とコメントをもらうことが多かったんです。『ハズレ枠』もたまりにたまったヘイトやフラストレーションを爆発させる気持ちよさを大事にしている印象があるので、超学生のボーカルにそういうイメージを持ってくださる人は多いのかもしれないですね。

──そういう人物像を求められる心境とは?

超学生:ありがたいですけど、うれしいっていうとちょっと変ですよね(笑)。僕自身は普段あまり怒ったりしないし、恨みつらみを持ったりもしないけれど、闇っぽい雰囲気とキラキラとした世界どっちが好きかと言われると、どちらかというと前者かなとも思うので。



──『MAR6LE』のインタビューでお話いただいたように、歌っていてどうというよりは、表現が完成して世に出ることが超学生さんの喜びややりがいなのかもしれないですね。

超学生:そのインタビューでも話したとおり自分と遠いキャラクターのほうが歌いやすいですし、自分の感情より曲そのものを伝えることを第一にしているんです。だから怒りを表現した曲を歌うとスカッとする!ということはあんまりないけれど、完成した音源を聴くと自分の声だけど爽快な気持ちになるんですよね。

──「Hazure」は辻村有記さんとTHE ORAL CIGARETTESのギターボーカルでありソングライターの山中拓也さんの共作曲です。辻村さんとは「Fake Parade」以来二度目のタッグですね。辻村さんの作る曲にはどのような印象をお持ちでしょうか。

超学生:どこを切り取ってもサビみたいだなと思っています。日本の音楽においてサビはキャッチーであることが優先されることが多くて、作家さんの個性が出るのはAメロやBメロなんじゃないかと思うんです。でも辻村さんの作る曲は、ずっとサビみたいなのにずっと辻村さんのカラーが出ているなと「Fake Parade」で感じて。

──確かに「Fake Parade」も「Hazure」も、サビ以外がサビに向けての盛り上げ役ではなく、どのセクションも主役のような立ち回りだと思います。

超学生:「Hazure」はそこに山中さんのカラーが加わることで、より爆発力が増しているのかなと感じます。おふたりはJOGOというユニットで一緒に音楽制作をなさったりもしていて、THE ORAL CIGARETTESさんもアニメのテーマソングをたくさん担当なさっているので、辻村さんと山中さんのエッセンスが混ざり合うことで刺激的な楽曲になったんじゃないかなと思っていますね。ここがピークかと思いきや、もうひと盛り上がりする……がずっと続く曲なので。

──そうですね。前衛的なのに耳馴染みがいいことにも驚きました。

超学生:バーバパパさんの「ウ”ィ”エ”」みたいな重めのロシアンハードベースでありながらも、ステレオイメージが広いぶん1曲を通してメイン楽器がないサウンドメイクだなと思って。それが今おっしゃったような前衛的な感じにつながるのかもしれない。そのふんわりとした感じは、『ハズレ枠』で主人公が昔の自分と対峙するシーンを彷彿とさせるんですよね。あと辻村さんは左右からいろんなセリフや合いの手を入れるボーカルワークをすることも多いので、さらに夢の中みたいなイメージになっていくというか。


──歌、合いの手、ラップ、セリフといろんなボーカルが味わえるのも特徴的です。

超学生:「Hazure」のテイクは全部自宅で録音したので、曲自体が持っているパワーをできる限り汲み取ることに徹しましたね。「実際にディレクションをしてもらったらこう言われるんじゃないかな」と考えながらレコーディングしていきました。この曲のボーカルは特に、恥ずかしがって歌うと恥ずかしいテイクになって、振り切って歌うとかっこよくなるところが多いと思っていて。

──確かに歌うときに変に恥ずかしがってしまうと、曲の世界とミスマッチな仕上がりになってしまうかもしれません。

超学生:叫び声のテイクや途中に長セリフもあるし、笑い声も入る曲なので、この曲の世界の人になりきりました。そんなテイクを辻村さんセンスで構成してくださったのが、完成した音源ですね。だから「このタイミングでこのテイクを入れると効果的なんだ」とか「こう構成したらトラック数がこれだけで済むんだ」とかすごく勉強になって。MEGさんのミックスもマジックを見ているように鮮やかにまとめられていて、「Fake Parade」と同様に学びの多いレコーディングでした。

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