【インタビュー】加藤和樹、ライブへの想い「お互いにエネルギーをチャージしていけたら」

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◾️応援してくださっている方たちと共に歩んできたアーティスト人生

──では他の楽曲についても聞かせてください。藤井フミヤさんの「Another Orion」、時代を超えて愛されている名曲ですよね。

加藤和樹:実は、ご本人が「カバーしてくれてありがとう」って言ってくださったんです。共通のスタッフを通してなんですが、そんなことあるのかと驚きました(笑)。

──それは嬉しいですね!

加藤和樹:フミヤさんの曲はこれまでカバーさせてもらっていて、ご縁はあったんですよ。最初は『神様ヘルプ!』(2010年公開)という映画をやらせてもらった時に、(主題歌だったチェッカーズの)「神様ヘルプ!」をカバーさせていただいて。その後はフミヤさんが日本語吹き替え版の主題歌を歌われたディズニー映画『ヘラクレス』の「Go the Distance」を、「Disney 声の王子様 Voice Stars Dream Live 2021」という作品で歌わせていただいたりもしたので、本当に嬉しかったです。

──レコーディングはいかがでしたか?

加藤和樹:カバーをやる上で一番難しいなと思うのは、そのアーティストさんの癖というか、歌い方の癖やブレスの感じをいかに表現するかというところです。なるべくオリジナルの良いところを残したいと思っているんです。ですが、真似をするというのも意味が違うので、どうやったら上手くバランスをとって自分なりに届けられるかってことをいつも考えるんです。そういう意味でこの「Another Orion」は、そこのバランスがすごくマッチしたレコーディングでした。何回か歌っていく中で見えてきたというか掴めた感覚があって。フッキーとの呼吸を意識しつつ、調節していきました。

──原曲への愛があるからこそ、バランスという部分が大事になってくるんですね。

加藤和樹:愛もそうですし、カバーに関しては「Respection」と言ってるので、やっぱりリスペクトがないとというのは僕の中で大きくて。全部を自分のオリジナルにするのではなく、ポイントとしてのバランスが大事になっていくんですよね。でもそれは狙ってやるものじゃなくて、歌ってみた結果、「やっぱりここのブレスの感じはこうなるんだ」みたいな感じで、自然発生する共通点に気付くみたいな感覚なんですよ。だからレコーディングでは、常にそういうものを探してる感じです。

──HYの「366日」は、ボーカルである仲宗根泉さんの個性がかなり強く出ている1曲かなと思いますが、歌ってみていかがでしたか?

加藤和樹:確かにかなり個性が強いボーカルですけど、「思いを乗せて歌うとこうなるよな。わかる」っていう共感の部分が多くありました。でもそこをあえて、男性の僕が歌うからこそ、彼女がファルセットで歌っているところをちょっとミックスっぽく歌ってみたりしたんです。完全にファルセットにするのではなく、息を混ぜて、思いがこぼれるような歌い方にしたりして、バランスにすごくこだわった1曲でした。

──漠然とですが、思わず歌いたくなる魅力がある曲ですよね。

加藤和樹:そうですね。僕も、もちろんカラオケで歌ってましたし。もうとにかくド世代の曲なんですよ。そういう意味では、一番難しかった曲でもあります。知ってる曲ほど難しいんですよね。ある意味、自分のカラオケ癖みたいなものが出ちゃうんで。でもそうではなくて、やはりフッキーのアレンジで、自分の声を乗せたときに自分がどういう表現をしたいかってところを大切に歌うことを心がけました。

──HYの「366日」もそうですが、花*花の「さよなら大好きな人」もオリジナルのスタイルがピアノですから、フッキーさんも弾き甲斐があっただろうなと想像します。

加藤和樹:逆にフッキーには、もちろん盛り上がるところは思い切り弾いてもらうんですけど、他の部分に関してはなるべく少ない音で、っていうのは今回結構言いましたね。

──ちゃんと余白のある感じで。

加藤和樹:もちろん音数があった方が歌っていても乗れるし気持ちいいんですけど、そこをあえて1小節1音で伸ばしてとか、なるべく音数を減らしてってリクエストしています。つまり、引き算なんですよ。音楽って、バンドだったら基本はボーカルがいて、ギター、ベース、ドラム、キーボードって全部足し算で作ると思うんですけど、僕とフッキーのレコーディングに関しては、最初にあるものからどれだけ引けるかなっていう感じなんです。

──なるほど、そういう思考回路なんですね。

加藤和樹:でもマネージャーからは、それは加藤和樹だからだって言われました。たとえばミュージカルではアカペラでも歌いますし、もっと言うと、声楽の人なんてピアノと歌だけというのが主流。だけど音楽だけをやっている人は、たぶん考え方としてどんどん音を埋める方へ行っちゃうから、こんなふうに音数を引いていくっていうことを怖がるところがあるんじゃないかって。どんどん裸にされているような感じになっちゃうから、普通はあまり好まないのかもしれないですよね。……ひょっとして、フッキーはやりづらいのかな? だって音数を減らすって、「弾くな」って言われてるのと同じじゃないですか(笑)。

──(笑)。

加藤和樹:でも、「弾くな」じゃないんですよね。この曲を“どう奏でるか”なので。弾く・弾かないではなく、この曲の持つイメージを2人でどう奏でるかっていうところでフッキーとは制作できているんだと思います。彼にも彼の奏でたい旋律があるので。

──間違いないです。

加藤和樹:お互いに「今、自分が行くところ」、「ここ、フッキーが盛り上げたいところ」っていうのが呼吸としてわかるんですよね。常に視界に入るところでレコーディングしているので。だからある意味戦いでもあるし、それこそライブなんですよね。

──その空気感は、今回の音源からもダイレクトに伝わってきました。

加藤和樹:だから一発録り以外、考えられないんですよ。「じゃあ、2コーラス目からもう1回」とかできないので。

──それはそれで素敵なことだと思います。

加藤和樹:と言いつつ、毎回違っていいよなって思ってる自分もいるんですよね。でもこれは舞台でのお芝居にも通じることなんですが、一度出た表現って一度きりのものなんですよね。だから映像の時は大変だなって思います。

──テレビドラマや映画での芝居ということですね。

加藤和樹:同じカットを、違う角度から何回も撮って、何回も同じことをやるじゃないですか。そうしないと、画が繋がらなくなっちゃうから。俺、たぶん出来ないんじゃないかな。あってたっけってドキドキしそう(笑)。やっぱり、舞台やミュージカルやコンサートのような“ライブ”の方が好きなんですよね。

──そういう感覚も、いろんな経験を積んでこられたからこそなんでしょうね

加藤和樹:そうかもしれません。最初の舞台の時なんか、よくわかってなかったですし。でもその場のお客さんの反応があるもの──音楽のライブもそうですけど、今何が起きているのかが板の上から全部わかるんですよね。「あ、今面白くなかったんだろうな」とか「今、いい歌歌えてないんだな」とか。お客さんは如実に反応してくれるので、良くも悪くも、すごく”生きてる”って感じがするんですよね。

──だから可能な限り、レコーディングでもライブ感を大事にされるんですね。

加藤和樹:感覚的には、レコーディングをしてる感じというより、その場でセッションして、ライブをやっている感じ。お互い出してくるものが毎回違うし、フッキーは同じフレーズをやるのが苦手なタイプだから、「フッキー、今のよかったね!」「え?どんな感じでしたっけ(笑)?」みたいな(笑)。お互いにそんな感じだから、同じフレーズをなぞろうとするとやっぱり“なぞってるね”感が出るし、俺も気持ちが入らない。なので、ある程度構築したら、ほぼ2、3回合わせてみてどれが良かったかなって、それの繰り返しで、じゃあ次、じゃあ次ってやれちゃうんですよね。


──すでに発表されていますが、フッキーさんとのプラネタリウムライブツアー<加藤和樹 LIVE in the DARK tour ー星空リサイタル vol.2 ー>も楽しみです。他にもいろんなスタイルでのライブが目白押しですから、ぜひチェックしていただきたいですね。

加藤和樹:今年はライブをいっぱいやるっていう宣言をしていますからね。でもこうやっていろんなスタイルでライブができるようになったのは、ある意味コロナ禍があったからなんですよね。そういう意味では、僕にとってあの時間はすごく大切な時間だったんだと思います。

──もちろん見どころはたくさんあると思いますが、それぞれのツアーについて聞かせてください。まず<Kazuki Kato Live "GIG" Tour 2024 ~Liberation~>についてはいかがですか。

加藤和樹:これに関してはもう暴れましょう!ってことしかないですよね(笑)。とにかく待ちに待ったという感じなので。あとはやはりこのアルバムを引っ提げてのライブなので、新曲をしっかり予習をしていただき、僕もしっかり歌い込んで、最高の幕開けになればいいなと思います。

──<Kazuki Kato Special Live "GIG" 2024 ~Count Down KK 2~>は、ファンの皆さんのリクエストで構成されるライブですね。

加藤和樹:このシリーズは本当にわからないんですよ、何が来るか(笑)。今回の結果も「こう来たか」っていう意外性がありましたし、逆に「この曲はやっぱり入るよね」っていうものももちろんありました。

──不動の人気を誇る曲ですね。

加藤和樹:音楽って、その人の思い出と共にっていう面もありますからね。そういう意味では、新曲になればなるほどそんなにライブで聴いてないから、思い出のある過去の曲を超えられないっていうか。だから今回のようにライブで聴きたい曲となると、初期の頃から長くライブで歌っている曲が入ってくるんですよね。今のレコード会社になったのが10周年で、その時に初めて<Count Down KK>をやったんですけど、そこから8年。コロナ禍というのもあって、そのうちの5年はやってないから、今回は特に思い出や記憶と共に選ばれた楽曲が多いのかもしれないです。

──お客さんにとっても満を持しての<Count Down KK>というわけですね。

加藤和樹:はい。だから新曲をやる『Liberation BOX』のGIGとは全然違う感じになると思います。思い出の部分と、次の時代に繋がっていく新しい部分を同じ月にライブで味わっていただけるのも、面白い試みかなと感じています。

──カバー曲で構成される<Kazuki Kato Concert Tour 2024 ~Respection~>についても聞かせてください。

加藤和樹:<Respection>に関しては、暴れる云々というより、長く愛され歌われてきた曲たちを僕なりに解釈して、また違った角度から歌を届けるということがテーマになるので、こちらは歌をじっくり聴いていただければという感じですね。ただ、新譜やらないの?って問い合わせもあったので、アンコールpartではがっつり盛り上がって帰ってほしいですね。1日2回公演なのに大丈夫かなって思っています(笑)。

──すでに決まっているツアーはもちろん、今年後半の音楽活動もますます活発になっていきそうですね。

加藤和樹:そうですね。この間15周年をやりましたけど、この感じだとあっという間に20周年を迎えそうですよ(笑)。これが歳をとるっていうことかなとか思いますよね(笑)。

──みんな一緒だと思います(笑)。20周年も盛大にお祝いしましょう!

加藤和樹:20周年も、やっぱりファンの皆さんに喜んでもらえることができたらいいですよね。しかも、アーティストとしての成人式でもありますから。

──アーティストとしての成人式!

加藤和樹:ようやく大人です(笑)。本当にそう思うんですよ。やっぱりゼロからスタートしたアーティストだし、応援してくださっている方たちと共に歩んできたアーティスト人生ですからね。本当にみんなに育ててもらっていますし、気づかされることも多いんです。これからも一緒に歩幅を合わせて歩きつつ、だけど僕がちょっと先を照らすような、道を示すような存在としていられたらなと思っています。まぁ、20周年のことはまた追々考えますね。今はツアーのことなどでいっぱいですから(笑)。

──それだけ今年はお客さんと会える機会が多いということでもありますからね。

加藤和樹:本当にそうなんですよ。ここ数年リリースイベントができない状況が続いていましたけど、皆さんと会うことで自分がどれだけ元気をもらっていたのか、身にしみてわかったんですよね。活動を始めた当初は、リリースイベントでお客さんと対面して話すのって正直ちょっと苦手だったんです。喋るのが得意じゃなかったから。でも各地を回って、握手会が大好きになっちゃって(笑)。役者をやっている時って、お客さんと触れ合う機会ってそんなにないんですよ。それこそファンミーティングなんかをやらない限りないんですよね。でも僕の場合は、ありがたいことにアーティストとしてリリースイベントやライブでお客さんと直接話す機会もたくさん設けてもらっていて。ひと言でも言葉を交わすだけでどれだけお互いに力を渡し合えてきたのか、コロナ禍で思い知りましたよね。目と目を見て、「元気だった?」とか、「頑張ろうね」「頑張ってください」って言い合えることが、どれだけ自分の力になってたのかって。今回ようやく、久々にリリイベも解禁になるのでめちゃくちゃ楽しみにしてます。

──その思い、ファンの皆さんに必ず伝わると思います。

加藤和樹:たとえば今握手会をやったら、たぶん1人1人と喋る時間がとんでもなく長くなりそう(笑)。

──「時間です」ってファンの方を送り出すんじゃなくて、加藤さんを送り出す事態になりそうですね(笑)。

加藤和樹:みんなに並んでもらって、俺が握手会に参加するみたいな感じになりそう(笑)。だって、本当に歯痒かったんですよ。お互いを守るためだったから仕方のないことですけど、やりきれない思いでしたよ。でも最初にもお話しましたが、前向きな、そしてポジティブな気持ちで今年はライブをやっていきたいので、お互いにエネルギーをチャージしていけたらいいなと思っています。

取材・文◎山田邦子

ミニアルバム『Liberation BOX』

発売日:2024年5月15日

■TYPE-A
TECI-1823 / ¥3,300 (税抜価格 ¥3,000)
ミニアルバムCD (3タイプ共通)+DVD
・CD
1.Retaker
2.マシマシLove Call
3.Twenty Flight Rock
4.Shake body!
5.エール
6.流星の先へ
・DVD
アルバムリード曲『Retaker』MV+加藤和樹vs青木監督『長回し1カメ映像MV』

■TYPE-B
TECI-1824 / ¥3,300 (税抜価格 ¥3,000)
ミニアルバムCD (3タイプ共通)+DVD
・DVD(Type-B のみ)
アルバムリード曲『Retaker』MV+MV撮影&ジャケット撮影ドキュメント映像

■TYPE-C
TECI-1825 / ¥3,300 (税抜価格 ¥3,000)
ミニアルバムCD (3タイプ共通)+カバーCD
・Respection (カバーCD)
1.366日
2.Another Orion
3.さよなら大好きな人
4.ひとりじゃない(Piano ver.)


▼店舗及びECサイトでの特典
https://kato-kazuki.lnk.to/Liberation-BOX-shop
購入特典対象店舗
・アニメイト
ランダムブロマイド(全3種/L判/銀袋入りランダム)



・タワーレコード
ビッグブロマイド(1種/2L判)

・セブンネット
ミニアクリルスタンドキーホルダー

・楽天ブックス
クリアポスター(A4)

・その他対象店舗(テイチクオンライン、HMV、ヨドバシカメラ、山野楽器含む)
オリジナルデザインポストカード


ライブ情報

<Kazuki Kato Live "GIG" Tour 2024 〜Liberation〜>
2024年
5月21日(火)川崎 CLUB CITTA'
5月23日(木)心斎橋 BIGCAT
5月24日(金)名古屋 DIAMOND HALL

<Kazuki Kato Special Live "GIG" 2024 〜Count Down KK 2〜>
2024年5月31日(金)LINE CUBE SHIBUYA

<Kazuki Kato Concert Tour 2024 〜Respection〜>
2024年
6月20日(木)福岡 あいれふホール
6月22日(土)岡山 山陽新聞社さん太ホール
6月23日(日)大阪 ドーンセンター
6月27日(木)渋谷 さくらホール

<加藤和樹 LIVE in the DARK tour -星空リサイタル vol.2->
2024年
8月26日(月)・27日(火)コニカミノルタプラネタリウム天空 in東京スカイツリータウン(R)
8月31日(土)福岡市科学館ドームシアター(プラネタリウム)
9月1日(日)バンドー神戸青少年科学館ドームシアター(プラネタリウム)

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