【インタビュー】加藤和樹、ミニアルバム『Liberation BOX』発売「解放的にやろうじゃないか!」

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前作『Nostalgia BOX』から約1年7ヶ月ぶりにリリースされる、加藤和樹のミニアルバム『Liberation BOX』。

ライブを意識して選曲したという今作には、音源という枠を飛び出し、まさにライブ会場にいるかのようなエネルギーを放つ6曲が収録されている。今回BARKSではそれぞれの楽曲に込めた思いを中心に、「自分には何もなかった」という上京当初のエピソードや、ミュージカルや舞台を経験したからこその「音楽」について語ってもらった。

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◼️歌い方のバリエーションや曲に対してのアプローチの仕方、声の使い方などにより広がりが出た

──ミニアルバム『Liberation BOX』が完成しました。

加藤和樹:結構前から制作を始めていたので、いよいよリリースできるなっていう感じです。すでに2曲は配信になっていますし(「マシマシLove Call」、「ReTaker」)、「ReTaker」はMVも公開になっているので、他の楽曲はどんな感じなんだろうと楽しみにしてくださっている声もたくさんいただいていて。「ReTaker」のMVもそうですが、今回はかなりロックな感じもあるし、コロナ禍で忘れかけていたライブ感っていうものを表現できたかなと思いますね。リスタートというか、またここから走り始めるという意味も込めてのアルバムになったんじゃないかなと思います。

──勢いがすごいですし、ライブの熱気が伝わってくるような曲ばかりでした。

加藤和樹:とにかくライブでやることを前提というか、そこを意識して曲を選びました。前作の『Nostalgia BOX』もそうでしたが、ここ数年はゆったりとした感じの楽曲やライブを中心にやってきていて、ある意味これまでと形を変えつつも、それを新たな挑戦としてやってきたんですね。中途半端な状況でやりたくなかったし、お客さんが不安に思うことはできるだけ排除したかったので。だから今回はライブも含めて、出来なかったことをマイナスに捉えるのではなく、そこを経ていよいよ楽しむぞ!っていう気持ちで楽しんでいただけたらと思いますね。

──ライブ前提という言葉もありましたが、テーマやコンセプトはどんなふうに固めていったのか聞かせてください。

加藤和樹:やっぱりこれまでどこかみんな我慢してたり、制限されてた部分があったわけですから、そういう押し付けられていたものを取っ払って解放的にやろうじゃないかっていう思いがありました。アルバムタイトルの『Liberation BOX』の“Liberation”は“解放する”という意味。そこから、じゃあどんな楽曲がライブで映えるんだろう、どんな楽曲ならみんなで一緒になって盛り上がれるだろう、ということを考えながら楽曲を選びました。自分で歌詞を書いているものもありますが、いただいた歌詞に関しても、もっと一体感が出るようなワードをチョイスしていただくなど、結構細かくやり取りをさせてもらいましたね。

──それはこれまで以上に、ということですか?

加藤和樹:そうですね。実際に自分がライブで歌うということを想定した上で、どういう言葉のチョイスがいいのかを考えて。僕のモットーとして“ストレートに伝わりやすく”というものがあるので、今回も曲に乗せたときに爽やかに耳に突き抜けてくるフレーズ感を大事にしたいなと思い、ディレクターを介して作家さんとやり取りさせてもらいました。

──リード曲である「ReTaker」は、まさにそういう1曲に仕上がっていますね。

加藤和樹:リード曲をどれにしようかというときに、やっぱり疾走感というものが一つテーマかなと思って。(川邊)海くんにはこの前も歌詞を書いていただいたんですけど、まだ若いというのもあってか、自分からは出てこないようなワードのチョイスなんですよね。壮大なんだけどすごく身近に感じるというか、リアリティがあるみたいなところが僕はすごく好きなんです。

──ヒーロー感もあるけど、ちゃんと隣にいてくれているような距離感も感じました。

加藤和樹:聴く側にとって、曲がすごく近いんですよね。そこは自分もすごく共感できました。あとは、2コーラス目の頭の言葉のはめ方とか、すごくいまどきなんですよ。やっぱりセオリー通りには来ないというか。そこでまた緩急もついてるし、歌っていてすごく楽しかったです。ミュージックビデオの撮影も楽しかったですよ。



──ギターを弾いてるカットも、疾走感を増幅させていましたね。

加藤和樹:ちょっと裏話をすると、本当は広大な野外で撮影する予定だったんですね。だけどちょうど僕が公演中ということもあって、気候や天候的なことも考え、第2案だったスタジオでの撮影になったんです。ギターはもともと弾くことになってたんですけど、あれは僕のギターじゃなくて、砂が入ってしまうから……とライブのスタッフの私物を貸してくれたんですよ。でもそれがめちゃくちゃかっこよくて、思い切り弾かせてもらいました。

──仕上がりをご覧になっていかがでしたか?

加藤和樹:これは結果論ですけど、外じゃなくてよかったって思ったんですよね。もちろん打ち合わせの段階では広大な砂のところで広く撮ってみたいっていうのもあったんですが、あの陰影のつけ方とかは多分スタジオじゃないとできない表現ですし。もちろん外は外でいい画は撮れたと思うんですけど、今回はセットでがっちり決め込んで、1対1で撮ってる感じが曲のコンセプトにもすごく合ってるなって思いました。怪我の功名じゃないですけど。

──今回TYPE-Aには、青木監督と1対1で撮った長回しバージョンのDVDが付いているんですよね。

加藤和樹:はい。今公開されているバージョンは1対1で撮った映像を編集しているもので、基本的にはずっと1対1で撮ってたんですよ。もう、何テイク撮ったかわかんないくらい(笑)。俺もそうですけど、監督の方がずっと動きながら撮ってるからハアハア言ってたし(笑)。

──撮影用の重いカメラを持ってですからね。

加藤和樹:時代の進化で軽量になったとはいえ、大変ですよ。でもやっぱりクレーンやレールじゃない、動いている人を人が動きながら撮ってるっていう、ある意味での手ぶれ感だったりが、よりリアリティを生むというか。

──寄れるだけ寄ります!みたいな(笑)。

加藤和樹:実際、ありましたよ。そんな寄ります!?みたいなときも(笑)。

──一瞬の動きからも、その躍動感がダイレクトに伝わってきますよね。

加藤和樹:そうなんですよ。あと、注目して欲しいのはあの映像ですね。あれって、後からCGとかではめ込んでるんじゃなくて、実際にその場で流してるんです。曲に合わせてどんどん切り替わっていく映像を事前に作ってもらって、歌っているところに投影してるんです。だから俺も、歌いながら「すごい!」と思ってましたよ。よくあるのは、あとでこういう画を付けますみたいなイメージの絵コンテを渡されて、グリーンバックで人物だけ撮るみたいなやり方だと思うんですけど、今回はもう「用意スタート!」で実際に流して撮るんで、歌っててその場の色の変化とかを感じられたから面白かったです。


──そういうMV撮影の裏側というか、ドキュメント映像みたいなものがTYPE-Bで見られるということですね。

加藤和樹:はい。ドキュメント映像も、一発長回しで編集してないものとはまた違った角度から楽しんでもらえると思います。

──TYPE-Cにはカバー曲を収録したCDが付いていますが、コロナ禍も含め、これまでの加藤さんの活動や経験がいろんな形で反映されていますよね。今回の選曲も、ミュージカルやってこられたからこその色がしっかり生かされています。

加藤和樹:正直なところ、それはありますね。やはり僕の中で、ミュージカルに携わらせていただくことによって、歌い方のバリエーションや曲に対してのアプローチの仕方、声の使い方などにより広がりが出たと感じるんです。例えばミュージカルをそんなに深くやらずにカバーをしても、そこまでの表現力は多分出せなかったと思うんですよ。だけど演じることで、ストーリーや人物への思いを届けるっていう、もう一歩深いところに行けるようになったというか。ただカバーとして歌うのではなく、アレンジを変えたり、自分の解釈を取り入れたり──もちろんオリジナルの解釈など大事なところは残しつつですが、歌の強弱も含めて、カバーのときは特に言葉に寄り添うような歌い方が意識できるようになったかなと思いますね。

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