【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話009「SUGIZOから学んだもの」
アーティストの発言からは往々にして金言が飛び出してくる。そこにはハッとすることもあるし、新たな気付きもあるし、自分の価値観に直接インパクトを与えるようなものもある。2022年7月1日に公開したSUGIZOのインタビューでも、自分にとってとてもインパクトのある発言がSUGIZOから飛び出した。
下記はそのインタビューの一部を抜粋したもの。長いインタビューの一部をただ切り取っただけなので脈略なく唐突な話だけど、トランペッターの近藤等則から学び得たというインプロヴィゼーションにまつわる話から続く、私とSUGIZOの会話だ。
◆ ◆ ◆
──インプロヴィゼーションで遊んでたってことですか?
SUGIZO:近藤さんのスタジオでよくレコーディングをして一緒にライヴをたくさんやって。「明日ライヴなんだけどさ、SUGIちゃん遊びに来ない?」「わかりました」って楽器とボードだけ持っていくみたいな、そういう感じが続いた。即興に対する最も重要な心得みたいなものをそこで学んできた。それでどこでも演奏できるようになりました。
──即興に対する重要な心得、とは?
SUGIZO:“とにかく音を出せ”ってことです。
──え?
SUGIZO:「BPMは?」「キーは?」とか聞くと「そんなのは始まったらわかるんだよ」っていう。「とりあえず音出せ」と。「細かいことはそっからだ」っていう。それ根本ですね。「音を出さなきゃ何も始まんねえんだよ」っていう。理屈はいいから。
──悟りのような世界。音さえ出せば始まるってことですか?
SUGIZO:そうですね。だから会話と同じですよね。
──そういうことか。
SUGIZO:そういう最も根源的なことを教わって、どこへ行っても物怖じせずにバンッと自分を表現できるようになった。曲が始まってからBPMとかキーを探るんですよ(笑)。でもそれって会話も同じですよね。あたりまえですが会話だって即興じゃないですか。台本に書いてあるわけじゃないですからね。そこです。それが自分の指針となる。だからJUNO REACTORとかもやってこれた。ステージでは聴いたことない曲がかかるんですよ。基本DJなんでその時のクラウドの状態によって楽曲を変えていくんです。セットリストがないんです。そこに対応してみんなが演奏していかなきゃいけないっていう。それは修行でしたね(笑)。
【インタビュー】SHAG、SUGIZOが語る1stアルバム「2020年代の怒濤のジャズロックをやりたかった」(2022年7月1日)より抜粋
◆ ◆ ◆SUGIZO:近藤さんのスタジオでよくレコーディングをして一緒にライヴをたくさんやって。「明日ライヴなんだけどさ、SUGIちゃん遊びに来ない?」「わかりました」って楽器とボードだけ持っていくみたいな、そういう感じが続いた。即興に対する最も重要な心得みたいなものをそこで学んできた。それでどこでも演奏できるようになりました。
──即興に対する重要な心得、とは?
SUGIZO:“とにかく音を出せ”ってことです。
──え?
SUGIZO:「BPMは?」「キーは?」とか聞くと「そんなのは始まったらわかるんだよ」っていう。「とりあえず音出せ」と。「細かいことはそっからだ」っていう。それ根本ですね。「音を出さなきゃ何も始まんねえんだよ」っていう。理屈はいいから。
──悟りのような世界。音さえ出せば始まるってことですか?
SUGIZO:そうですね。だから会話と同じですよね。
──そういうことか。
SUGIZO:そういう最も根源的なことを教わって、どこへ行っても物怖じせずにバンッと自分を表現できるようになった。曲が始まってからBPMとかキーを探るんですよ(笑)。でもそれって会話も同じですよね。あたりまえですが会話だって即興じゃないですか。台本に書いてあるわけじゃないですからね。そこです。それが自分の指針となる。だからJUNO REACTORとかもやってこれた。ステージでは聴いたことない曲がかかるんですよ。基本DJなんでその時のクラウドの状態によって楽曲を変えていくんです。セットリストがないんです。そこに対応してみんなが演奏していかなきゃいけないっていう。それは修行でしたね(笑)。
【インタビュー】SHAG、SUGIZOが語る1stアルバム「2020年代の怒濤のジャズロックをやりたかった」(2022年7月1日)より抜粋
私は、「会話だって即興じゃないですか」というSUGIZOの発言から、ジャムセッションは会話だってことを、初めてちゃんと理解した気がした。
知人にひょっこり出くわして「お、久しぶり」と会話するとき、「何の話をします? とりあえず今日食った昼飯の話でもしますか?」なんて言わないよね。会議じゃないんだから会話に設定なんか不要。でもミュージシャンが集まって「ジャムろうぜ」というとき、「キーはどうする?」「とりあえずAで」「テンポは…」なんて発言が普通にある。音楽で会話しようという時に、なんで会議のような議題を設けちゃうのだろう…そんなシンプルな陳腐さに気付けなかったことにも、軽いショックを感じるわけだ。
そしてSUGIZOは「それが自分の指針になる」と言っている。これは、全ての姿勢に通じることでもあるし、自分が自分であることの裏付けでもある。なにかトラブった時にどうする? 誰かが困っていたらどうする? 自分に災難が降り掛かってきたら最初にすべき行動は? 自分らしさのさらなる追求は?…結局のところ、その人のアドリブ力が、その人の道筋を描いていくのではないかと思うわけだ。
自分のインタビュースタイルがまさにアドリブだったことを思い知らされ、霧が晴れるような思いだった。それを前回のコラムで「ライブ派」と表現した。おそらくそのスタイルは人生観ともリンクしている気がする。人生のハンドルは他人が握るものではない。自分の人生のハンドルさばきは、自分自身で決めるもの。人生は悪路だらけなんだから、瞬発力で切り抜けなくちゃ。この世の中、轍やトラップだらけだと思いませんか?
ミュージシャンは、人生をかけて音楽を鍛錬する人々だ。本気を繰り返し続けてきた人だからこそ、尊い経験に基づいた人生訓のような金言が飛び出してくる。モノゴトの本質を捉えた貴重な発言にインパクトを受け、少しでもそのエッセンスを咀嚼したいと、私は話に食らいつく。一流アーティストのインタビューにワクワクするのは、そんな名言に出会える期待感があるから、とも思うわけです。
SUGIZOとの出会いは取材を通して30年を超え、今もなおとても懇意にしてくれるアーティストのひとりなので、会えばアイドリングなしに即ダッシュできる。私も遠慮なく突っ込むしSUGIZOも何でも答えてくれるという環境自体が恵まれ過ぎなんですけどね。
文◎BARKS 烏丸哲也
◆【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話まとめ
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