三浦大知、“この先の未来”を示したアリーナ公演「また、今までやったことのないことや新しい場所に挑戦していきたい」

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三浦大知のアリーナ公演<DAICHI MIURA ARENA LIVE 2024 OVER>が、4月3日に大阪・Asueアリーナにてファイナルを迎えた。

◆ライブ写真

今回のアリーナ公演は、2023年9月から始まった全国ホールツアー<DAICHI MIURA LIVE TOUR 2023 OVER>を経て作り上げられたもの。さらに、2024年2月にリリースされた約7年ぶりとなるオリジナルアルバム『OVER』に収録された10曲すべてがダンス表現と共に披露されるという、現段階の三浦大知の到達点と言えるスペシャルなステージだ。

ツアーの終わりを惜しむように、小雨模様だったこの日。場内に流れるエレクトロなR&Bのビートに合わせ、開演前からすでに手拍子を鳴らして待ち侘びていた観客の大きな歓声が上がる中、ステージが暗転。暗闇の中からうなりを上げるギターとエレクトロなビート。力強いバンドサウンドがそこに重なり、鼓動のような音が鳴り響く……。


《動け動けただ能動/人生は一度の大勝負》
 
そう歌い出した三浦大知を中心に、アルバム『OVER』のジャケットを彷彿させる赤の衣装に身を包んだダンサーたちの姿が目の前に浮かび上がる。真っ赤な光に染まった階段状のステージの上、ダンサーたちとフォーメーションを描きながら静と動をスリリングな歌とダンスで魅せる三浦大知。さらに「Backwards」炎の演出で場内のテンションが一気に上がった「I'm On Fire」とアッパーチューンを続け、伸びやかな歌声を響かせる。早急なビートに合わせ、精鋭揃いのダンサー陣の誰よりも目を引くキレッキレのダンスを繰り広げながら、息一つ乱さないどころか、左手に持ったマイクも動きの一つにしていくそのパフォーマンスに息を呑む。


そんな彼のダンスと歌の表現が最新のフェーズに突入したことを痛感したのが、高揚と抑制のバランスに圧倒された「好きなだけ」。ステージ上のスクリーンにリリックが映し出されると、ダンサー陣と共に官能的なステップでセンターステージに踊り出る三浦大知。特に出色だったのが、両足のバランスを軸に、腰を下げたまま膝の関節で表現されたエロティックなフォーメーションダンス。素人目には関節がどう動いているのかわからないほどの場面に、地鳴りのような大歓声が場内から沸き起こる。

「Flavor」を皮切りに、「羽衣」「綴化」と、押さえた表現で見せる場面では、艶やかな声を楽器のように操り、ドラムやスクラッチが作るビートとシンクロした動きで歌詞に綴られた思いを表現。途中、歌のないインタルード部分では観客も水を打ったように静寂をキープし、ステージとフロアが一体となって繊細な世界を作り上げていく。


「本日は『OVER』ツアーのファイナル、ラストのステージです。ド頭からずっと踊ってまして(笑)。ここからちょっとスローな曲を」と、MCで告げた後、この曲で彼を知った人も多いだろうナンバー「燦燦」を披露。聴き入る観客の目の前が再び暗闇に包まれた後、花道からセンターステージまで置かれたライトバーに少しずつ光が灯ると、白の衣装に身を包み、花道ステージの中央に置かれた白いベッドの上に腰掛ける三浦大知……の背後、白の寝具の中からダンサーASUPIが現れて始まったのは、「Sheep」。異次元のハイトーンで繰り出されるファルセットボイスと、コンテンポラリーダンスの表現で魅せる美しくもダークなアンビエントなその曲もまた、『OVER』で三浦が新たに切り拓いたフェーズだ。

ベッドの上で1人で弾き語ったベッドルーム・ミュージックな「Lullaby」では、ささやくような三浦の歌声やブレス、マイクを離した後の残響までもまるごと聞き逃すまいと、息を呑んで見守る観客の姿はまるで演劇を鑑賞するそれのようだった。Nao’ymtと共に作り上げた2018年リリースのアルバム『球体』。あの革新的な1枚でアンビエントやチルアウトな表現を切り拓いた彼の軌跡を知るファン……この人たちがいるからこそ三浦大知というエンターテイナーは、自身が思い描く表現を自由に好きなだけ追求することが出来るのかもしれない。

MVでのAIとの競演も話題の「ERROR」、オルタナロックな要素も光る「Light Speed」を披露した後は、「Pixelated World」でダンサー陣と共に世界への不信感と孤独を力強く歌う。MVでも注目を集めた足音だけでビートを奏でるシーンでは、満杯の観客がそこにいることが信じられないほど、場内がしんと静まり返る。ポップシーンにおいて、禅の精神にも通じるこんな美しい場面をステージとフロアが一体となって作り出せるのは、世界中で三浦大知とそのファンだけだと断言してもいい。


ステージとフロアが心地よい緊張感を堪能した後は、フィーチャリング参加したゲスト、シンガーソングライター・Furui Rihoを迎え、「Everything I Am feat. Furui Riho」を披露。Furui Rihoだけが歌う場面でも右手で歌詞を表現する三浦。彼が大好きだというFurui Rihoのオリジナル曲「青信号」では、可憐さとハスキーな力強さを併せ持つFurui Rihoの歌声が場内に響き渡る。


暗転しアリーナ席センターステージに登場したのは、タイトなレザーパンツにクロップドされたシルバーライダースとGジャンがドッキングしたジャケットに身を包んだロックなKREVA。無音のまま微動だにしないKREVAの元に三浦が走り寄る。これまで何度も互いのステージに立ってきたKREVAとハグを交わし、対峙する中、KREVAがサングラスを外し投げ、間を取り合う瞬間に「全開 feat. KREVA」で会場を熱狂させ最高潮へ。さらにKREVAとの共演曲「Your Love feat. KREVA」を披露した後は、「Right Now」「EXCITE」「Blizzard」と、本編ラストまでキラーチューンを連発して場内を極限まで盛り上げていく。


「(RE)PLAY」で始まったアンコールの最後、「ALOS」を歌う前、大歓声が上がる客席に向かい、三浦大知は笑顔でこう語った。「ツアータイトルの『OVER』は、この先の未来のためにも、今この瞬間を皆んなで超えられて良かったという気持ちをシェア出来ていたらいいなと思ってつけました」

《この場所から/始める物語》と綴られた「ALOS」を歌い終えた後、大きな歓声が響くフロアに向かい、「また必ず会いましょう」と告げてアリーナ公演のファイナルを締め括った三浦大知。


「『OVER』というアルバムを作って、今日のゲスト、Furui RihoさんやKREVAさんとの共演もそうですし、今までの自分を超えられたという感覚があったんです。それをこうやって観客の皆さんとシェア出来たことが、皆さんにとっても、次の一歩を踏み出せるようなポジティヴなものになっていればいいな、という思いがあって。自分自身もツアーを通して掴んだものがあるので、それを糧にまた、今までやったことのないことや新しい場所に挑戦していきたいと思ってます」

約2時間半の公演を終えた後のバックステージで、「この先の未来」についてそう話してくれた三浦大知。

《腕も足も思考も心も全てを懸けて/Step into another dimention》

「能動」に描かれていたダンスと歌を追求し続ける表現者、三浦大知の決意はまた、新たな次元を目指して走り出す。

文◎早川加奈子
写真◎小沼 高
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