【ライブレポート】SOPHIA、フルオーケストラと初共演の大阪城ホールで30周年の幕開け「良いスタートがきれました」
SOPHIAが3月10日、地元・大阪にて<SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール>を開催した。フルオーケストラとの初共演による一夜限りのスペシャルライブは結成30周年イヤーの幕開けを告げるものにもなった。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆SOPHIA 画像
9年間の活動休止を経て2022年に復活を果たし、2024年に結成30周年を迎えるSOPHIAが3月10日、地元・大阪にて<SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール>と題した一夜限りの特別公演を開催した。
本公演は2023年に行われたFM大阪主催イベント<LIVE SDD 2023>にて、楽曲「夢」でシンフォニックオーケストラと共演したことがきっかけとなり実現したもの。SOPHIAにとってフルオーケストラとの本格的なコラボレーション公演は今回が初だ。ライブ当日は、バンドとオーケストラが音の相乗効果を創り出し、数々の名曲たちが極上の響きを生み、新たなサウンドに仕立てられ、観客に届けられた。
シンフォニックオーケストラのメンバーによる開演前のチューニングが終わると、SOPHIAライブの始まりを告げる「愛の讃歌」が場内に流れた。マエストロ西山勝がヒマワリを胸元に挿して登壇。まずは、この日のためにSOPHIAの代表曲たちをオーケストラアレンジでつないだ「Overture」で観客たちを驚かせた。
ステージが照明でブルーに染まり、「青空の破片」のイントロが流れ出すと真っ白いジャケットを着た松岡充(Vo)がヒマワリを手にアリーナ客席から登場した。そのまま客席に留まり、バンドスタイルとは異なる滑らかな歌唱スタイルで身体自体を楽器のように響かせながら丁寧に歌を放っていく。ステージ上の豊田和貴(G)と黒柳能生(B)、赤松芳朋(Dr)と都啓一(Key)はいつもの定位置とは上手下手逆のポジションに立ち、オーケストラの演奏に音を重ねていく。
この日はスタインウェイのグランドピアノで都がイントロを奏でた「Eternal Flame」、客席一面にヒマワリ畑が広がった「ヒマワリ」など、SOPHIAの名曲がオーケストラのダイナミックかつ繊細なアンサンブルによって、どんどん輝きを増していくようだ。松岡がオーケストラとマエストロを紹介した後、舞台上はSOPHIAメンバーだけの空間となり、ライブはバンドゾーンへ突入した。
「いくぞ大阪!」と松岡が客席を煽り、観客が椅子から立ち上がったところで「蜘蛛と蝙蝠」がスタート。松岡は歌唱はバンドスタイルへと移行、都もここからいつものキーボードセットで音を奏でる。観客がジャンプしながら一斉に手をクルクル回す「KURU KURU」、赤松のハイハットに黒柳がベースを合わせ、都がキーボードフレーズを、豊田がギターリフを次々と重ねていくスリリングな展開から始まったロックンロールな「brother&sister」で観客のボルテージが急上昇。会場はたちまち一体感と熱気に包まれた。
MCで松岡は、フルオーケストラとの初共演の挑戦と感動をこう語った。
「自分たちが創った曲でも、オーケストラアレンジが施されたものを聴くと心がぎゅーとなります。歌はないけど、音楽だけで涙が出る思いになる。
この音楽の力を皆さんにお届けしたかったし、音楽の力でいろんなことを変えられるんや、ネガティヴをポジティヴに変えられるんや、ということを感じ取ってもらって、今日は帰って欲しいなと思います。
この曲があったから、この曲を信じることができたから、SOPHIAは走り続けてこれた。一緒に歌ってください」──松岡充
そしてSOPHIAの始まりの楽曲「Believe」をバンドゾーンの締めくくりとしてパフォーマンス。会場内には一丸となった観客の大合唱が広がった。
場内が暗転すると、ライブは再びオーケストラとのコラボステージゾーンへ。SOPHIAのなかでもかなりレアな選曲となった「Replay」は、スクリーンに歌詞を投影。繊細な部分まで言葉を掘り下げ、分解して、スポットを当てて表現したような複雑な立体的音像は、どこまでもシネマティックだ。オーケストラアレンジの奥深さで、聴き手をその世界観へすっぽりと引き込み、SOPHIAの楽曲を解読しているような感覚に浸せていったところは、この夜の最大のハイライト。SOPHIAとオーケストラの美しき融合が、音楽が持つパワーや、価値あるケミストリーを目の前で引き起こした名場面だ。
続けて、カルテットの演奏からド迫力のフルオーケストラへ切り替わり、一瞬の静けさのなかに松岡の独唱が立ち上がるなど、楽曲のシーンをバランスよく表現した「Place〜」。ドラマチックな始まりから甘酸っぱさを倍増させるアレンジで、聴き手の記憶の奥深くまでくすぐった「one summer day」。このブロックでは、オーケストラとSOPHIAの楽曲が魂と魂の交流を繰り広げるようにディープなところでコンタクト。その化学反応によってバンド単体では到達できない音像や繊細な響きを創り出し、観客に今後のSOPHIAの新たな可能性と、この先の進化のベクトルを示した。
5人のトークではまず都から、この夜使用しているピアノが、年に一度、同会場で行われる師走恒例巨大イベント<1万人の第九>で使われているものであることが明かされた。
「そんなすごいピアノを弾かせていただけるとは本当に光栄。SOPHIAでまさかこういうことができるとは。だから、もっともっとSOPHIAは成長していけるんじゃないかなと思ってます」──都啓一
「曲始まりや終わりのタイミングをまっちゃん(松岡)ではなく、指揮者に合わせてやるところが難しいですね。けど、本当に新鮮です(笑)」──赤松芳朋
「友達が増えたというか。仲間が増えて。このメンバーでやると必殺技のオンパレードみたいなところがあってすごい楽しい」──豊田和貴
「オーケストラにはべースパートの方々もいらっしゃる訳で。その方々の演奏力の高さとアレンジ力の高さ。それにしびれっぱなしです」──黒柳能生
松岡は、今回のライブが結成30周年とデビュー30周年という、2年連続アニバーサリーイヤーのスタートとなることを発表した。
「2024年が結成30周年、2025年がデビュー30周年です。2024年の今は、滑走路に一歩踏み込んだ感じです。一番最初に滑走路に入るときってすごく大事じゃないですか。なので、それほど大きなチャレンジをさせていただいておるわけです。
まだ詳しいことは言えないですけど、4月の頭ぐらいに大発表します。ずらっと発表します。楽しみにしててください」──松岡充
アニバーサリーイヤーの活動を興奮気味に予告すると、客席が歓喜に包まれた。さらに、復活したSOPHIAの第一弾新曲であり、古巣のトイズファクトリーと手を組んで配信中の「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」については、「今は配信リリースだけですけど、実は違うんです。あの曲をフラッグにして2024年は進んでいきます」と、同曲が2024年から始まる30周年イヤーを牽引していくものになることが明かされた。
そしてライブは新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」へ。原曲のガムランパートをオーケストラの美しいチャイムで響かせ、ストリングスの音が躍動する。ゆったりと心に語りかけるようなイントロから放たれた「in the future」、赤松のドラムのカウントを聴いて、観客がすぐさま席から立ち上がると「街」がスタートし、松岡は再びアリーナ客席へ降りていく。観客にマイクを向けると曲中、高らかに歌を響かせ、メンバー名を大声でコール。オーケストラが奏でる豪華サウンドとSOPHIAのロックサウンド、松岡の歌唱にメンバー全員のコーラス、観客全員の合唱までそこに加わるという夢のような共演で、この日最もパワフルで情熱的なサウンドを大阪城ホールに響かせた。
続いて、メンバーが音楽のパワーに心震わせた子供の頃、“俺たちも歌えるんじゃないか、楽器を弾けるんじゃないか、バンドを組めるんじゃないか、たくさんの人に何かを伝えられるんじゃないか”と始まったSOPHIAが、その原点を再確認するきっかけとなった「夢」をパフォーマンス。ここまで彼らを突き動かしてきた“夢”がシンフォニックオーケストラが出会い、目の前で形になったこの瞬間。観客たちはクラップと合唱でその空間に加わり、会場はなんともいえない達成感と多幸感に満ちた空気に包まれた。
そして演奏が終わったあと、松岡は締めの挨拶をこう告げた。
「SOPHIAとシンフォニックオーケストラのみなさん、そしてマエストロ西山勝に大きな拍手を。
音楽に心震わせて、同じ音楽の世界にいて、対極にあるようなロックバンドとクラシックオーケストラ。せっかくその点と点が近寄ったので、もう1曲だけみなさんのお力を貸して欲しいとわがままを言いまして、フルアレンジをして頂きました」──松岡充
最後の演奏はベートーヴェンの「交響曲第9番」だった。誰もが知るあの旋律を、華麗で重厚なアンサンブルで聴かせる。これを序章として、始まったのは「黒いブーツ〜oh my friend〜」だ。客席が大熱狂しながら踊るなか、間奏で都のソロパートがやってくると、この「第九」アレンジの謎が解け、クラシックとロックの点と点が見事に線でつながる。交響し合うというSOPHIAならではのエンタテインメントな音楽の仕掛けで、ライブは大団円のなかフィニッシュを迎えた。
「SOPHIAの音楽人生にまた1つ、輝く星を見つけることができました」という言葉でライブを締めくくった松岡は、「良い30周年のスタートがきれたと思います。ここから2025年まで、どうかよろしくお願いします」という言葉を残して、ステージを後にした。
30周年イヤーのスタートを飾る挑戦を大成功させて、アニバーサリーイヤーを開幕させたSOPHIA。4月に発表を控えている周年に向けた活動に、期待は高まるばかりだ。
取材・文◎東條祥恵
撮影◎ハヤシマコ
■<SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール>セットリスト
open16:00 / start17:00
出演: SOPHIA / The Symphonic Orchestra
01. 青空の破片
02. Eternal Flame
03. ヒマワリ
04. 蜘蛛と蝙蝠
05. KURU KURU
06. brother & sister
07. Believe
08. Replay
09. Place~
10. one summer day
11. あなたが毎日直面している 世界の憂鬱
12. in the future
13. 街
14. 夢
15. 交響曲第9番 ~ 黒いブーツ-oh my friend-
この記事の関連情報
【対談】SOPHIA松岡充 × SIAM SHADE栄喜、30周年を迎える両バンドが奇跡の共演「僕は絶対に運命だと思う」
SOPHIA × SIAM SHADEのメンバーがユニットSIAM SOPHIA結成、一夜限りのスペシャルライヴを開催
【インタビュー vol.3】松岡充、SOPHIA復活の内幕を振り返り来たる30周年を語る「ここからまた始めよう」
SOPHIA、<Premium Symphonic Night in 大阪城ホール>ライブ映像作品を12月25日に発売決定
【インタビュー vol.2】SOPHIA、新作『BOYS and』を語る「ここで終わらない。繋がって続いてるということです」
SOPHIA、11年ぶり『BOYS and』の対となる『GIRLS and』を来春リリース決定
【インタビュー vol.1】S0PHIA、30周年への想いとレアな記念公演を語る「復活できた奇跡と同じくらい」
SOPHIA、ミニアルバム『BOYS and』のアートワークは30年前のオマージュ
SOPHIA、29回目のデビュー記念日にYouTube生配信番組を実施