【年始特集】2024年もUmiのヒーリング・ネオソウルは人々に寄り添う

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Umiは、<GREENROOM FESTIVAL ‘23>や<サマソニ‘23>で初の来日公演を果たした2023年に、日本でも音楽ファンから大きな注目を集めたシンガーソングライター。既に世界中にファンがいる次世代アーティストであるが、昨年末の12月30日にBTSのVをフィーチャリングに迎えた注目作「wherever u r」を急遽リリースし、加えてまもなく1月19日にはニューEP『talking to the wind』のリリースを控えているというタイミングを受けて、今一度スポットライトを当てざるを得ない。幕をあけた2024年にUmiの更なる活躍を確信しているとともに、その存在を日本の音楽ファンにもれなく知ってもらうための駄目押しのテキストとして本稿を書く。ちなみに、渡辺直美がニューヨークから発信しているPodcast番組「Naomi Take America」でもシーズンフィナーレとして先頃Umiが登場しており、彼女のスイートで天真爛漫なキャラクターに触れることができる。

その早熟な経歴を振り返ってみると、アメリカ・シアトル出身、1999年2月9日生まれの現在24歳で、日本人の母とアメリカ人の父の元に生まれた。“Umi”というアーティストネームは日本語の“海”から名付けられた自身のミドルネーム。母はピアノ経験者、父はドラマーという音楽一家の影響もあり4歳頃から作曲をスタートすると、ピアノ、ギター、ウクレレなどを習得し、高校の頃に自身のYouTubeやSoundCloudチャンネルにてカバー動画を毎週アップロードし、その後本格的にオリジナル楽曲の制作をスタートした。シザ、フランク・オーシャン、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ジェネイ・アイコ、エイミー・ワインハウス等から音楽的影響を受けており、R&B〜ネオソウルあたりにカテゴライズでき、“ヒーリング・ネオソウル”として紹介されている。2018年発表の楽曲「Remember Me」(2024年1月時点でSpotifyで1億5000万回以上再生)が、さまざまなカップルが登場するミュージックビデオと共に世界で広がりを見せた。2019年にリリースした2nd EP『Love Language』には、日本語を曲タイトルにした「Sukidakara」を収録。なお、同EP収録の「Love Affair」もSpotifyで1億再生回数を超えている人気曲だ。




思慮深く伸びやかなその歌声の端々からポップな印象を受けるのは、J-POPが好きだという日本人の母親から受け継いだ日本のポップスやロック、ソウルの影響かもしれない(Umiは松田聖子や「Mステ」で日本の音楽に触れたそう)。そして歌声と共に耳を奪われたのは、鋭敏なサウンドだ。2018年リリースの初のEP『Interlude』に収録の「Nostalgia」の不穏に点滅する蛍光灯のようなトラックはポーティスヘッドを彷彿としてゾクっとした。小さい頃に、歌手になりたいと思う傍らで、お医者さんになりたいとも話していたと語った彼女は、音楽で人々と癒したいという思いを実際に抱いている(https://neutmagazine.com/interview-umi)。Umiの鋭敏なサウンドは、人が内包するネガティブな感情とリンクするキーのように機能し、ローファイサウンドはリスナーの内面と瞬間的にシンクロする体温が感じられ、世界中の人々の心に寄り添う。過去のインタビューでUmiは、好きな映画に『Mr.ノーバディ』を挙げており、“自分の選択によって、何通りもの人生を行き来する主人公と自分が重なった”と述べている(https://droptokyo.com/wedrop/316055/)。Umiは、さまざまな感情やシーンを、音楽によってビジュアライズしているように思える。


“祈り”という音楽の根源的な存在理由も、Umiの歌からは感じられる。それは父から影響を受けたゴスペルの精神にも通じるのかもしれない。そんな祈りのダイレクトな交信とも言えるライブを日本で初めて行ったのが、前述の<GREENROOM FESTIVAL>。その密着動画にもあるように、ステージでオーディエンスを解放に導くため開演前にマインドセットする姿も印象深い。この<GREENROOM FESTIVAL>の後には、アジアツアーの一環として<サマソニ>で星野源がキュレーションを手がけたBEACH STAGE、加えて<サマソニ・エクストラ>として代官山 SPACE ODDでの単独公演に出演した。なおUmiは、<Coachella 2023>にも出演を果たしており、その世界的注目度を証明した。


Vをフィーチャリングに迎え、“遠距離”をテーマにした楽曲「wherever u r」は、現在兵役中のテテの誕生日にリリースされた特別な1曲。以前よりお互いの音楽のファンであったという二人がそれぞれの想いを寄せ合って完成した今作についてUMIは、「“好き”という気持ちは距離や時間などに縛られてはいけないと思っていて、 この曲はそのことに気が付いてほしいなって思ってできた楽曲です:) 」と、そしてVは「ファンの皆さんに楽しんで聴いていただきたいです。またARMYの皆さんに会える日を心から待ち望んでいます」とコメント。BPMをぐっと抑えたR&Bテイストで、アコギのアルペジオが実に美しい。伸びやかなUmiの歌声と甘美なVの歌声も情感たっぷりで、切なさと愛おしさが共存する素晴らしい出来栄えだ。実際に同曲は、米国、英国、カナダ、ドイツなど89カ国/地域のiTunes「トップソング」チャートで1位を獲得した。


そして間もなくリリースされるEP『talking to the wind』は、高く評価されたUMIのデビューアルバム『Forest in the City』(2022)の続編と称したEPというのだから期待は高まるばかり。<サマソニ>直前にリリースされ、日本語もリリックに織り交ぜられている「happy im」と、昨年11月にリリースされた気持ちファンク風の「why dont we go」を含めた全4曲が収録される予定だ。この「happy im」「why dont we go」からは、デビューアルバム『Forest in the City』からさらに解放的でポジティヴなバイブスが伝わってくる。UMI本人は、新作EP『talking to the wind』で新しい自分を表現し、愛や人生において、“迷う”という選択肢を受け入れる事をテーマにしていると述べている。さらに成熟したUmiの音楽世界が聴ける1枚となりそうだ。





音楽を通して人々を癒したいと願ったUmiとその歌は今、その磁場を確実に拡大させていったことで、癒しと共に、信念を抱く人々をリードするしなやかさも携えている。生き方が多様化する時代だからこそ人としてどう生きるかが問われている中で、個々の人生はもちろん、自然や平和について、より真剣に向き合わざるを得ないのがこれからの時代。Umiというアーティストとその作品は、より良く生きようとするすべての人の心に寄り添い、2024年も時代の音楽として鳴り響くはずだ。

文:堺 涼子

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EP『talking to the wind』


2024年1月19日配信開始予定

<収録曲>
1. why dont we go | ホワーイ・ドント・ウィー・ゴー
2. happy im | ハッピー・アイム
3. lovetoomuch | ラブトゥーマッチ
4. not necessarily | ノット・ネセサリー

UMI feat V of BTS「wherever u r」


▸再生・ダウンロードはこちら
https://UMIjp.lnk.to/whereverur

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