【ライブレポート】ザ・ワイナリー・ドッグス、選ばれし者たちがもたらす純粋な音楽的興奮

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11月17日、ザ・ワイナリー・ドッグスの3度目のジャパン・ツアーが東京の恵比寿ザ・ガーデンホールで開幕を迎えた。改めて説明するまでもないはずだが、メンバーはリッチー・コッツェン(G, Vo)、ビリー・シーン(B)、そしてマイク・ポートノイ(Dr)。ビリーは去る7月にMR.BIGのフェアウェル・ツアーで来日したばかりだが、この3人での日本公演は実に約7年半ぶりとなる。それは単純に、前作にあたる『ホット・ストリーク』の発売から最新作の『スリー』の登場までに同じく7年半の年月が流れているからでもあるわけだが、長引いたパンデミック期を経てきたからでもある。

この日のライヴは実は追加公演にあたり、それが結果的にツアー初日という形になったが、ハード・ロック界随一のパワー・トリオによる超絶かつエモーショナルなパフォーマンスは、この夜の到来を待ち焦がれてきたはずの熱心なファンを狂喜させた。これから各地での公演が重ねられていくだけに具体的な演奏曲目については一切記述せずにおくことにするが、グランド・ファンク・レイルロードの「アメリカン・バンド」をオープニングSEとしながら1曲目が始まった瞬間からアンコール終了に至るまでの間、その場に居合わせた誰もが純度の高い音楽的興奮を味わっていたに違いない。オーディエンスは暴れるわけでも、ものすごい大合唱を繰り広げるわけでもない。ただ、まさしく選ばれし者というべき3人がステージ上で熱演を繰り広げていた90分超の時間は、喜びに満ちた、とてつもなく密度の濃いものだった。


リッチー・コッツェン


ビリー・シーン


マイク・ポートノイ

第3作にあたる『スリー』が発売されたのは今年の2月のことで、同時期から彼らは精力的に欧米でのツアーを展開してきたが、この作品に伴う時間の流れは、このジャパン・ツアーの終了をもって完結することになる。すでにこのツアーで90本近くを消化してきているだけに、ライヴ自体が研ぎ澄まされ、脂の乗りきったものになっていることは言うまでもないが、リッチーはごく最近のインタビューの中で、この日本公演がひとつの区切りとなり、ザ・ワイナリー・ドッグスとしての活動がしばらく停滞することになると認めている。

当然ながら、10月下旬に公表されたマイクのドリーム・シアターへの復帰もそれと無関係ではないはずだし、一方のビリーも2024年にはMR.BIGの欧米でのツアーが控えている。もちろんそれはザ・ワイナリー・ドッグスの終わりを示唆するものではないが、この稀有なバンドの今現在のライヴを体験できるのは、今回だけだといえるだろう。そうした意味でも、彼らの音楽を愛する人たちには誰ひとりこの機会を逸して欲しくないし、ザ・ワイナリー・ドッグスのライヴを未体験の人たちにもぜひ各会場に足を運んでみて欲しい。ツアーはこの先、大阪、広島、名古屋と続き、11月24日に東京・LINE CUBE SHIBUYAでクライマックスを迎えることになる。この重要局面を、お見逃しなく!

文◎増田勇一


◆THE WINERY DOGS ライブ情報
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