【インタビュー】kalmia、ミニアルバム『twilight』で新たな地平へ「何かを抱えてる人のもとに届いてほしい」
■ちょっとネガティブなところを歌う歌詞を書くようにしています
──それぞれの要素が今のバンドの音ににじみ出ている感はありますね。この4人になったのが2019年からなんですけど、ここまでの活動についてはどんなふうに思っています?
千葉:そうですね……自分が想像してたというか、組み立ててた人生図からしたら、だいぶゆっくりだなと思うんですけど。でもこうじゃなかったら、たぶん今回のアルバムも出せていなかったですし。そういうことはちゃんとわかるように、1年ずつを過ごしてきていますね。ゆっくりだけど1歩ずつ、みたいな感じではあります。
──そうですか。では、このバンドが身上としているのはどんなところですか?
千葉:これは難しいですね……プロフィールではいちおう「歌声を~」みたいに書いてるんですけど、そうですね……僕が書く曲にはポジティブなものが少ないんですよ。全体的に見ると、何曲かしかなくて。でも決してネガティブというわけではなくて。曲を聴いて、歌詞を見たら、1回考えてもらいたい、みたいなバンドでありたくて。ストレートに何かを伝えるわけではなくて、「こう言ってるんだけど、あなたにはどういうふうに聴き取ってもらえるだろう?」みたいに、一歩考えてもらいたい。そういう、ちょっと回りくどいバンドです(笑)。
アヤ・つかさ・西村:あはははは!
千葉:ストレートに言えばいいんだけど、でも「言わないからこそ響く」みたいなものを伝えていきたい、みたいな感じですね。
──ふむふむ、そのことについては、あとでまた聞きますね。その前に、いま話に出た歌声についてですけど、千葉さんは自分の声質についてはどんなふうに思ってますか? かなり透明感があると思いますが。
千葉:何て言うんでしょう……本格的に歌い出してからは、声だけは褒められてきてたんですよ。それは、最初はうれしかったですけど、最近は考えなくなったっていうか。
──意識することなく?
千葉:うん、そうですね。意識することなく、自分の書きたい曲、言いたいことを書くようにはしています。
──いずれにしても、この声は大きな魅力だと思います。そして今度の作品『twilight』は今年に入って2作目になるミニアルバムですね。作っていて、バンドに関して何か気付いたことはありますか?
千葉:僕らは現状、インディーズバンドとしてやっているんですけど、ライブハウス規模を想定してない楽曲が多いんですよ。200、300人規模じゃない、もっと大きなホールだったりで音を鳴らすイメージで曲を作っているというか。この1年は、そっちにもっと振り切れたかなと思っています。
──それはライブをやりながら「もっとデカいところが自分たちの音に合うんじゃないか」と?
千葉:そこはうすうす、ずっとありましたね。僕らは「ザ・熱いバンド」というわけじゃなかったし、すごく汗かいてやるバンドというイメージも持たれていないと思うんです。いや、やっていくうちに、そりゃ汗かくし、熱いこともやりますけど(笑)、そういうのを全部やった上で、「やっぱり楽曲がここだけじゃないよね」「自分たちはもうワンステップ上がっても遜色ないよね」と再認識したんです。
──たしかに今作の楽曲たちも広いというか、イメージが大きいものが多いですね。それから基本的にメロディーがポップですよね。そのへんも意識してます?
千葉:意識はしてます。やっぱり最低限、口ずさみやすいようなメロディーを考えながら作るようにはしてます。
──それはなぜです? どうしてそれを大切にしたいんですか?
千葉:なぜか? ……考えたこと、なかったかも(笑)。でもRADWIMPSがそういう曲だったから、ですかね。自分的には。何て言うんでしょう……あるっけ? そういうんじゃない曲って? うち。
アヤ:メロディーがポップじゃない曲? まあフレーズ的にポップじゃない瞬間はあるけど、サビはだいたい耳なじみはいいよ。
千葉:(笑)そう、サビに行ったら、全部ポップになる。わがままなんかな? 「全部聴いてほしいです」みたいな(笑)。全部、(リスナーに)歌ってもらいたい。そこはずっと、意識はしてました。考えてはなかったですけど。
──そのポップネスも魅力的です。それから今度は歌の世界についてですけど、先ほど花の話がありましたが、宇宙とか空に関する表現もすごく多いですよね? 「Contrail」は飛行機雲、「アストロノート」は宇宙飛行士のことだし、今作はその傾向がはっきり出ています。
つかさ:花も多かったけど、宇宙とかも広がってきたよね?
千葉:宇宙も好きだったんだよね(笑)。宇宙はずっと行ってみたくて……前に違うインタビューで「宇宙旅行に行ってみたい」と話したことあるし、ちっちゃい頃は「空飛びたい」って思ってたし。小学生ぐらいの時、めちゃめちゃ風強い日に外に出て傘さして、歩いてみたりしました。飛べるんじゃないか?みたいな。
アヤ:かわいい子供だ(笑)。
千葉:(笑)たぶん自分が一番行きたいところが空だったり宇宙だったりするのかな。
つかさ:たしかに、すごく魅力を感じてるのかもね。
▲つかさ(G)
──再びですけど、それは何ででしょう?
千葉:人は飛べないからじゃないですか? 自分だけでは。でも宇宙に行ったら、浮けるじゃないですか。まあ飛ぶわけじゃですけど、そういう環境に行ってみたいんですよね。水の中も浮力が働いて、すごい好きなんですけど……重力嫌いなんかな? 俺(笑)。
アヤ・つかさ・西村:あはははは!
アヤ:地球、向いてないかも(笑)。
千葉:(笑)まあ空が好きなのは、人が飛べないからだったりします。鳥とか見て「いいな」って、すごく思いますね。
──ということは、ふだんから空を見たりします?
千葉:見ます(笑)。
──空が好きなんですね(笑)。それが曲のロマンチックな風景につながってたり、心模様を表すものになっていると思います。
──それと、さっきのポジティブな歌があまりないという話と関係しますけど、うまくいってない時や心がモヤモヤする時の感情、それから失恋だったり、そういう表現の曲が多いですね。
千葉:はい。幸せな曲ってあんまりないですね。たぶん全体的に(今まで作ってきた曲を)見ても、そうです。ラブソングにしても、自分は失恋の曲が耳に残ったりするほうで……あの時にこう思ってたけど言えなかった、そんな自分たちのこととかを歌ってくれてるような曲、とか。だから自分も、ラブソングだけど、ちょっとネガティブなところを歌う歌詞を書くようにしています。
──そうですね。基本的に、幸せ感はあまりない……ですよね。
千葉:(笑)幸薄い。
──いや、幸せじゃないわけでもないけど(笑)、何かを心に抱えているというか、影があるというか。迷いとか、後悔とか、そういう側面を描いてますよね。
千葉:そうですね。すごく幸せ、ずっと元気、人生楽しい!みたいな人は、たぶんライブに来ないんですよ。まあ来る人もいるとは思うんですけど、何かを抱えてる人のほうがライブハウスに来たり音楽を聴いてたりすることが多いと思う。もちろん、自分もそうだし……そういう人たちのもとにどんどん届いてほしいな、というのはあります。
──そこで通じ合う人がいるでしょうね。「Contrail」の《人生が採点制だとしたら僕の評価は/マルよりバツの方が多いのかもしれないけど》なんて、そういう部分だと思うし。まあ、よほど能天気じゃないと、マルばかりの人はいないと思いますけど。
千葉:(笑)まあ、そうですね。
──それから人生について歌ってる曲もありますよね。「黎明讃歌」や、さっきの「Contrail」もそうです。これは性格によるものなんでしょうか?
千葉:たぶん、ずっとそんな感じです。考えてるわけじゃないんですけど……不意に「どこまで生きるんだろう?」「その間に何をするんだろう?」とか、「今までに何か間違ってきたのか?」とか。「でも間違ってたんだとしたら今こうなってはないな」とか、あらためて感じる瞬間が多いので。曲の中にそういうことを入れることが多いですね。
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