【インタビュー】KIRITO、アルバム『ALPHA』に本当の集大成「人生の第三幕であり、最終章」

■僕の辞書に“守り”の文字はない
■生き方として攻め続けるしかない

──『ALPHA』の制作はある意味、自分史を紐解く作業だったと思いますが、今感じることはありますか？

KIRITO：いくつになっても答えは見えないんだなってことですかね。ただ、今話したように答えにたどり着かなくても、最後までそこに向かおうとしたことのほうが大事だと思うので。最後の最後まで答えに近づこうとし続けるんだろうなと。

──なるほど。

KIRITO：それと過去の作品も含めて、やっていることはヤバい見え方だったとしても、言っていることは絶対に間違えてなかったという自負もありますよ。そこが一番大事だし、エンターテインメントなんで、過激なことやれば賛否両論が起こるじゃないですか。でも、そうなったとしてもブレないでいるためには、自分が言ってることは間違ってないんだっていう責任や自覚がないとやってこれなかったと思う。今回の「BALANCE」のミュージックビデオだって、パッと見は危ないようでも、伝えていることは間違ってないから。それはどこで賛否両論が起こったとしても別にブレないし、アートやエンターテインメントなので賛否があるのは全然いいし。ただ、作り手に責任がなかったらダメだと思うんですよ。人騒がせをするためだけの理想も責任もないようなギミックだったら、それはレベルが低すぎる。いろんな手法で賛否が起こるようなやり方をしたとしても、根っこにある思想に対して本人に責任がないと、一貫したメッセージにはならないと思うので。そこはずっとやってきたつもりですよ。

──今回、キャリアの最終章という話が出ましたが、舞台に立つ者としての残された時間を考える瞬間もありますか。

KIRITO：やっぱり、それはありますよ。いつまでこのスタイルでできるのは分からないけど、限りある中で、どこまで攻めていけるんだろうかっていうところをすごく考えてますけどね。

──こうして“攻め”というワードが出るということは、そこは失いたくない部分なんですね。

KIRITO：そうですね。僕の辞書に“守り”の文字はない（笑）。それはもう、絶対的にそうです。本当に最後の瞬間まで攻めきると思います。生き方として攻め続けるしかないんじゃないですかね。


──ところで、今回の楽曲のアレンジをサポートメンバーと詰めるようなこともあったんですか？

KIRITO：Masa(B)とAllen(Dr)のリズムパートは最初から結構カッチリ作って音を渡したんですけど、ギターパートに関しては、1ヶ月間くらい、JOHN(G)とスタジオに入ってみっちり作っていきましたね。

──おお、みっちりとですか。

KIRITO：もう、みっちり。基本的に僕がギターを持ってフレーズとかを考えて、それを仮で録音していくなかで“これかな”となったら、直後にJOHNが何回か聴いた上で本チャンを入れるっていう。セクションごとにその繰り返しをしてたから、かなり時間もかかっちゃったんだけど。ギターのフレーズやリフって口で言っても伝わらないじゃないですか。

──それを対面でやっていたんですか？

KIRITO：対面っていうか、僕のななめ後ろにJOHNがいて（笑）。データのやりとりではなく、一緒に同じ空間でやりましたね。自分のスタジオで作業するんですけど、ギター録りに関してはJOHNとふたりでやってるから、JOHNが録る際には僕がエンジニアなんですよ。

──そこでは厳しいジャッジも下されて？

KIRITO：そうですね。かなり厳しかったですね。さらにその後、歌録りで丸1ヵ月かかったんで。締め切り的なものは、どエラい超えましたけど。

──ある意味、贅沢に時間をかけたという。

KIRITO：まあ、贅沢っていうか（笑）、そうなっちゃいますよね。で、そのあとの歌録りは完全にひとりの作業で。

──歌録りに関してはスムーズに進みました？

KIRITO：いやぁ、そうはいかなかったですね。ほぼ難航してました。自分の歌録りに対するジャッジも当然厳しくなるから、ゴールがどこになるのかが見えないまま、こっちも1ヵ月かかったんですよ。

──ちなみに、最後に録り終えた曲は何だったんでしょう？

KIRITO：最初の曲(「THE ULTIMATE BEGINNING「ALPHA」」)です。配分も考えてそうしましたね。歌録りに関してはメロディのあるものから先に録っていって、喉に負担のかかるシャウトで押していくような曲は後にして。「THE ULTIMATE BEGINNING「ALPHA」」はほぼシャウトで押す曲だから、もうこれで喉が潰れてもしばらくはいいかなと思って録ったテイクが入ってます。


──そして、アルバムを携えて11月後半からツアー＜KIRITO Tour 2023-2024「ALPHA-CODE」＞が始まりますね。

KIRITO：自分の体力的なものも、精神的なものも、本当に限界まで出しきってやりきたいですね。自分の今までの限界をしっかりと越えたい思いが強いから。昨年の『NEOSPIRAL』のツアーもそういう意気込みで臨んだんですけど、途中、自分のせいで怪我をしたりして悔しい思いをしましたから。今回は悔いのないように出しきろうという気合いが今まで以上にありますね。

──今言われた体力的な部分で何か感じることもあります？

KIRITO：いや、そこは今のところないんですけどね。ただね、キャリア的なこととか考えると、いつ変化がきてもおかしくないんだろうなと他人事のように思いつつ……でも、今のところ全然大丈夫なので。逆に、いかに時間軸に対して逆らっていけるのかってところも、自分自身に課しているチャレンジなのかな。

──そこで新たな進化の形が生まれるかもしれないし。

KIRITO：ね、そういうものも見せられたらいいなと。もしかしたら、後進の人たちの新しい参考になるんだったら、それもいいなと思うし。

──ああ、それはいい話ですね。過去にない攻めの姿勢で走り続ける先輩の姿を見せるというのも、ひとつ役割としては必要だと。

KIRITO：やっぱり、それが自分にとって一番向いているやり方だし、自然なやり方なんですけどね。これがKIRITOらしいというか。その姿が、後の人から見て「このキャリアでこういう進み方もあるんだ」っていう新しいモデルケースになるかもしれないし。ただ、それはまあ結果論なので。そこまで考えてやっているわけじゃないですけど。

──ツアーを継続していくなかで、近年は食生活とか含めてフィジカル面に気を配っていたりします？

KIRITO：一応、レコーディングの時点から鍛えたりはしてますね。やっぱりこれだけハードな作品を出して、ライヴも年々ハードになっていくから、そこに対応できるような体づくりはやっておいたほうがいいだろうっていうことで。それぐらいですけどね。なので、作品としてはやりきったので、あとはそれをライヴでどう見せるかっていうところです。そこまでやりきって完成ですよね。

取材・文◎早川洋介




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