【インタビュー】KIRITO、アルバム『ALPHA』に本当の集大成「人生の第三幕であり、最終章」

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■ALPHAは“究極の始まり”でありつつ
■親愛なるもうひとりが絶対的に必要


──続く「GRAND SCHEME」(“壮大な計画”の意)は、どういったニュアンスでつけたタイトルなんでしょう?

KIRITO:あらゆるものが進化していく中で、地球規模のものや宇宙的なものとかのバランス感も、決して偶然のものではなくて、何かにデザインされたものだよねっていうイメージでつけたのかな。それが神なのか創造主なのか……そうした存在の手によってデザインされたもので、もしかしたら、どうあがいてもそこから逃れられない中で、人間は右往左往しているようなことなのかもしれない、という風に考えていて。

──なるほど。また、この曲には“朱い月に見下ろされて”といったフレーズもあり、昔からKIRITOさんを知る人にとってはフックとなる箇所だなと。

KIRITO:そうなんですけど、そこもあえて昔のものを意味ありげに持ってきてるのではなくて、こういったモチーフの曲の時に共通して使われるキーワードとして、自分の引き出しの中から持ってくることがあるっていう感覚ですね。

──いわば、初期から世界観はブレてないということの証明でもあり。その「GRAND SCHEME」や「BALANCE」で攻撃性を打ち出しますが、作品を聴き進めていくと激しさ一辺倒ではないことが分かります。自分らしさが色濃く出るものを求めると、自然とこうした展開になるということなのかなと思いました。

KIRITO:たしかに、ヘヴィロックに対してのボーカルスタイルとしてシャウトの割合は増えてきてはいるけど、ただ、ボーカリストとして自分のタイプを考えれば、同時に“歌う”という部分もないとダメだと思うので。だから、歌う場面ではしっかりとそこを打ち出しつつ、それでいて新しい要素として、全面的にシャウトでガッといくスタイルも増えてきてるということですね。その割合も自分に合った形を考えてやってますし。やっぱり自分のスタイルとして、できるだけ幅があったほうがいいので。


──そして、攻撃的な序盤を経て登場するのが「REPEAT」。こういう日本人的な叙情性のある曲を、僕はさんざん大好物と言ってきたと思うんですけど。

KIRITO:ははは、そうですね(笑)。

──これぞKIRITO節だと思うし、憂いのあるメロディセンスや曲展開にグッと引き込まれましたね。これもまた自分らしさであり、求められているもののひとつだと感じることもありますか?

KIRITO:“求められているな”って感じるよりは、自分がやりたいことをやると、こういうものになるっていうところですかね。でも、自分が一番やりたいことが、やっぱり一番求められているものでもあるだろうっていう、そこの気持ちはリンクしていると思ってますよ。

──たしかに。また、「Gene」(“遺伝子”の意)はズバリのタイトルですが、間をとったリフやリズムアレンジなどは、KIRITOさんが初期から実践してきた“らしい”空気感の曲だなと。どこか甘さもある雰囲気も含めてそう感じます。

KIRITO:この曲はすごく自然に……珍しく降りてきたっていうか。なんかふとアイデアが出て、スルッとできたような曲ですね。

──そして中盤、「hope」や「不条理な闇」といったバラードが続き、ヘヴィでドラマティックな「Muddy stream」へと流れる展開はドラマがありますね。「hope」で描いているものはタイトルどおりに希望や光になりますか?

KIRITO:まず、進化というものをテーマにした時に、さっき話した“神のデザイン”のような力強さや大きな流れといったいろんな背景がありつつも、一方でそこには人間的なエモーショナルな部分……悲しみなんかも全部あるよねっていうところなんですね。だから、ここでの「hope」は、進化する上で通らなきゃいけない悲しみや絶望をいかにして乗り越えるのか、ということを描いてます。タイトルではあえて「hope」としてるけど、内容自体はほぼ絶望だったりする。ただ、そこで希望というものも、最後に無理やり人工的に作ってでも胸に置いておこうというところなんです。自然に湧いてきたものではなくて、人工的に作って、今はまだ機械的にしかできなくても、いつか時間を経てモノになるかもしれないよねっていう。ちょっと細かい話ですけど、「hope」という言葉を全部小文字にしたのも、無理やり芽生えさせた人工的なもの、っていう意味合いでつけていて。この辺りの流れはそういった内容ですね。


▲『ALPHA』初回限定生産盤

──だから、このセクションに入る前に「RITE OF PASSAGE」(“通過儀礼”の意)という曲があるわけですか。

KIRITO:そうですね。やっぱりストーリーの流れを考える時に、進化とはどういうことなのかを、いろんな角度から捉えてみるんです。進化していく上では、いいことばっかりじゃないし、もしかしたら進化というもの自体が、すごく痛くて絶望的なものを経た上でやっと生まれるもの、やっとなされるものなんじゃないかっていうことかな。

──そうした考え方はずっとKIRITOさんの根底にありますね。

KIRITO:前を向いて進んでいく、進化していくということは昔から表現してきたけど、それが単純にポジティヴな“楽しくやってこうぜ”みたいな視点じゃなく、そのために手放さなきゃいけないものや犠牲にしなきゃいけないものがあるという、そういうところに焦点を向けるようなやり方はずっと変わらないですね。やっぱり、そこは役割だと思うんですよ。いろんなメッセージを送るミュージシャンがいる中で、たとえば“前に進んでいく”という前提だとしても、それがすごくポジティヴで楽しいものとして表現する人もいれば、僕みたいに、同時に味わわなきゃいけない痛みだったり、失ったものに対する悲しさだったり、そういうところに焦点を当てるやり方もあるよねっていうところですね。

──そういった流れを経て、ラスト前の曲が「THE SUCCESSOR「OMEGA」」。“神に見捨てられた者同士”という歌詞は強力な一節だなって思いましたけど。

KIRITO:そうですか(笑)。たとえば、それは「GRAND SCHEME」のような“神のデザイン”の中からはみ出ようとする存在ですよね。歯車の動きから逃れて新しいものを作ろうとするというところで、その神の意思に反する道を行く決断をした者。進化というのは、もしかしたらそういう側面もあるのかなと。だから、どっちの考えもあるんですよ。創造主がデザインしたものだっていう考え方もあれば、同時に化学的な進化もあって、それは宗教的な目線から見れば神を冒涜するようなやり方ですよね。たとえば、地球から飛び出して月や火星に行くこともそうだし、遺伝子操作でクローンを作ることもそう。神を冒涜するようなやり方の繰り返しだと思うから。だから、進化っていう同じキーワードでも、曲によっては別の側面で捉えているんですよね。

──この曲では、自分自身もいろんなものからはみ出した存在、とも言ってるわけですよね。

KIRITO:そうですね。さらに聴いている人も、僕と同じ感覚を共有している者という過程で話を進めてますし。だから、このアルバムでのALPHAからOMEGAへの流れというのは、始まりがあって、そこから究極の形で受け継いでいく、つないでいくというイメージですね(同曲のタイトルにあるSUCCESSORは“継承者”の意)。


▲『ALPHA』通常盤

──ただ、このアルバムはOMEGAでは終わらず、「DEAR PLUS ALPHA」で終わるという。

KIRITO:『ALPHA』というアルバムを作る上で、最後が「DEAR PLUS ALPHA」になる流れは最初から決めてました。ALPHAというテーマのもうひとつの意味合いをしっかりと表現しないと終われないな、と考えていて。ALPHAは“究極の始まり”でありつつ、そこにはPLUS ALPHAが絶対的に必要で、ここでは“親愛なる自分以外のもうひとりへ”っていう意味ですよね。アルバムを映画的なストーリーとして捉えて作るから、こういうエンディングで終わらせることは早い段階から決めてたんです。

──また、この曲の最後の一音がストレートにメジャーキーで終わらない、どこか揺れる感じがあったのも印象に残りました。

KIRITO:そうですね、そういうところも込みで自分のイメージとしてあったので。

──『NEOSPIRAL』『ALPHA』と続きましたが、やはり今ソロで作品を作るとなるとコンセプチュアルなものが生み出されていきますか?

KIRITO:ええ。そこは歌詞を書く人間だし、特に僕の場合は世界観が大事になってくるので。どうしてもその脈絡の中でバラバラなものにはできないだろうなと思うし。歌う人間として、そこの思想が曲ごとにバラバラだと成立しないですからね。自分という人間が紡ぎ出す言葉やストーリーには、どこか根っこで一貫したものがないとダメだし、やっぱりそうなるよなってことは我ながら思うので。

──PIERROTとしてシーンに出てきた初期から現在に至るまでキャリアを重ねてきて、周囲を見回した時に、こういうモチーフは自身ならではだなと自覚的になるんじゃないですか?

KIRITO:まあ、そうですね。“自分がやるとこうなるよな”っていうのはあるし、別の言い方をすれば、“そういうやり方しかできないのかもな”っていう。ただ、いずれにしても自然に一番得意なやり方でやるのがいいんだろうとは思いますけど。

──同時に、今なお非常に関心を惹かれる分野でもあるわけですか?

KIRITO:ええ。ただ、単に興味があるっていうよりは、永遠のテーマみたいなものですかね。自分が生きる上で、やっぱりそういう世界と向き合いながら生きていくんだろうなと。しかも音楽として表現する上では、余計にそこはもっと深堀りしてやっていくでしょうね。同時に“自分とは何なのか”というところで、自分とも向き合った上で、“自分が今思っていることはどういうことなのか”を深掘る作業でもあると思うんですよ。

──たとえば、進化の分野などは一生かかっても解き明かせない世界でもありますよね。

KIRITO:まあ、それでいいと思いますけどね。そんな簡単なものと向き合ってきたんじゃないだろうなって。それはもう自分単位じゃなくて、人類単位で永遠の謎みたいなところだとしても、そこと向き合いながら、答えは出なくても近づいていくことをあきらめないっていうか。そういうものなんだと思います

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