【インタビュー】文藝天国、アルバム『破壊的価値創造』が導く原点「最高傑作であり、ロックンロール魂を忘れずにという決意の作品です」
■アルバム全体をひとつの作品として
■6曲つなげて聴いてほしい
──森がテーマの「緑地化計画」では、実際に森に行ってフィールドレコーディングしていましたよね。
ko:はい。出発点としては、まず森をテーマにした新しい香水を作ることになって、香水ブランド“PARFUM de bungei”を運営している文藝服飾班のメンバーで森に行ったんです。そこで感じた空気や匂いを落とし込んで香水が出来上がってから、その香水をもとに曲と映像を作りました。間奏部分に入っているのは、森に行った時に録った音です。楽曲アレンジは、例えば1番サビは森らしく生命力がある感じなのに対して、2番は無機質な雰囲気にしたくて。あえてドラムのライドを機械的なリズムで刻んで、そのあとの森の自然の音が映えるように意識して作るなど、編曲面でも森からインスピレーションを受けています。
── 一方で、歌詞は切ない恋の歌になっていますが、歌詞にも物語があるんですか?
ko:詳しく説明すると長くなってしまいそうなんですけど、主人公が水道水で、花に恋をするという物語が軸になっているんです。水道水は花に恋をするけど、花は天然の雨水のことがが好きだから、水道水は所詮偽物で本物にはなれない…みたいな葛藤をイメージして曲にしました。
すみ:そのミュージックフィルムは、曲の物語と繋がるところもありつつ、別の作品にもなっている感じですね。片想いの相手が振り向いてくれないというところとか、女の子がスキットルに水道水を入れて森に持っていくシーンなどは曲の物語とリンクしています。そこから世界を膨らませて、理想の自分に生まれ変わるための逃避行とか、輪廻転生のようなイメージの映像になりました。
──「緑地化計画」の次曲は前回インタビューでお話を伺った「ゴールデン・ドロップ」ですが、ほぼ曲間がなくそのまま始まるという展開に驚きました。
ko:曲間の繋ぎにはかなりこだわりましたね。極限まで曲間の空白を無くしたくて、リバーブも切っています。あと、「緑地化計画」のアウトロの終わりにドラムとベースだけの静かなパートがあるんですけど、実は気づかれないように「ゴールデン・ドロップ」のイントロのキーに転調していて。スムーズに繋がるようにしました。
──組曲的に、すべてを通して聴いてほしいという狙いがあるんですか?
ko:そうですね。1曲の長さが比較的短いので、僕としてはアルバム全体をひとつの作品として、6曲つなげて聴いてほしいと思っています。
──「ゴールデン・ドロップ」から「奇跡の再定義」も、曲が変わったことにも気づかないぐらいの繋がりで。特に「奇跡の再定義」のイントロは、いきなりクライマックスに突入するかのようなトレモロピッキングによるギターのインパクトが大きかったです。
ko:「ゴールデン・ドロップ」の最後でめちゃくちゃ暴れてから、さらにデカいファズギターで始まるというところはこだわりました(笑)。そして、「奇跡の再定義」の最後は、ずーっと続くアウトロをいきなりブチっと切って…まさに“破壊”されて「破壊的価値創造(もっと!)」が始まるという。
──なるほど。「奇跡の再定義」は、それこそ強烈なギターから始まりつつ、静と動が交互に入れ替わる構成がドラマチックな1曲ですが、どういうイメージで作っていったんですか?
ko:この曲は、今回のアルバム制作で最後に出来た曲ですね。制作途中で、(すみ)あいかから「ちょっとギターが物足りなさすぎる」という話をされて。
すみ:(笑)。たしか「センターをボーカルに譲ってない? ボーカルを聴かせる曲を作りすぎじゃない?」みたいなことを言いました。1stアルバムではギターとボーカルがバチバチぶつかっているような、歌に対して“俺のギターを聴け!”って食い気味に弾くくらいだったんですよ。それなのに今のボーカル(ハル)になってから、ちょっと“僕は裏に回るんで…”みたいなギターになっちゃってるんじゃないかなと思ったんです。ボーカルの声も重要ですし聴きやすいのは大切ですが、だからと言ってギターがおとなしくなる必要はないので。ギターの激しさが増すほうが、かえってボーカルの歌声の純度が際立つような気もしています。
ko:「もっとやりたい放題暴れたほうがいいよ」というふうに言われて、自分でも“確かに”と思う部分はあったので。ギターが通常よりも楽曲の多くの部分を担うような曲を作ろうと思って「奇跡の再定義」を作りました。
すみ:これこそ原点回帰がテーマかもね。
ko:そうだね。さらにボーカルにオートチューンみたいなエフェクトをかけたことで、ボーカルよりも楽器で生々しい躍動感を出すアレンジにしました。
──後半のダークなハードロック的リフも効いてますよね。
ko:最近、リアピックアップで弾く派手なギターの音を入れることがあんまりなかったかな、と思って入れてみました。そのあとのCメロにアコギが入ってくるんですけど、アコギを使ったのは文藝天国の曲では初めてで。僕の中では、このCメロこそが一番聴いてほしいポイントです。逆に言うと、ここだけしっかりちゃんと考えて作って、あとはもうフリーみたいな感じでギターを弾きました。
──アウトロまで含めて、あらゆるギターの音が盛り込まれていて。koさんのギタリスト魂が炸裂してますね。
ko:やり切った感はあります(笑)。でも、ギターを前面に出すところは出したいと思いつつ、ちゃんと全体で調和が取れたひとつの曲になってほしいという気持ちのほうが大きいです。
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