【インタビュー】Ken Yokoyama、怒濤の2023年は実験と冒険の先へ「ベストを尽くせないんだったら、やらなくたっていい」

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■第三弾はタイトル曲がめちゃいい
■それだけは言っておこうかな


──さて、2曲目「Time Waits For No One」は、サウンド的に各パートのエッジを生かしていて、マイナーのメロやコード感をお互いに引き立て合ってます。だから曲ばかりでなく、サウンド像からしてものすごく気持ちいいんですよね。トリックをまた仕掛けてますか?

Ken:細かいところをけっこうディスカッションしたり、セッションしたり。かなりやった覚えがありますね。こういう曲をやると、僕らはテンポが速くなっていきがちだけど、なんとか抑えようと。でもドライヴ感を出したいから、そのドライヴ感はどこからくるのかって話もけっこうしました。

EKKUN:時間も掛かった気がしますね。

Jun:そうだね。「My One Wish」よりは厄介だった。

Ken:こっちのほうが曲としてシンプルなだけに、ちゃんとドライヴ感が出せないと普通になっちゃうんですよ。ドライヴ感が出れば、カッコいい曲。なければ、ただの曲なんです。ドライヴ感の決め手はハイハットじゃないか、とか。拍の裏も感じさせつつ、8分音符を聴かせる感じ。

EKKUN:隙間というか、どうハットを刻むか。刻み方はいろいろ議論にもなりました。

Ken:ミッドテンポの曲ほど、ドラムがどうリズムを取るか、そこにシビアになるんですよ。聴く人によっては分からないところだったり、もしかしたらどうでもいいことなのかもしれない。でも作る側は、ちょっと疑問に思ったことを、ちゃんと机の上にあげてみんなで議論しないと、仕上がりが濁るんです。“ベストを尽くせないんだったら、やらなくたっていいじゃないですか”ってことになっちゃうんです、僕は。やっぱり姿勢としてはいつだってとことんやらなきゃ意味がない。

──それこそ熱量の無駄使いになっちゃいますからね。シングル三部作として挑んでいるから、なおのこと、1曲入魂の姿勢というか、細かいことにもこだわりたいと?

Ken:はい。とことんやったうえで、場や空気を保つために、最終的に「まあ、こんなもんでしょ」って言葉も出てくるわけです。


▲松本”EKKUN”英二 (Dr)

──3曲目「Tomorrow」は、ゲストボーカルの木村カエラさんが選曲したという話ですが、Kenさんはかなり前から交流がありましたね?

Ken:そうですね、共通の友達も多くて。「いつか、なにかやろうよ」ってお互いに言っていたのが、やっと一昨年の配信ライブで実現して。そこで「Tomorrow」をやったんです。今回、そのレコーディングを改めてしてみたいなと。

──それだけの手応えが配信ライブのときにあったわけですか?

Ken:個人的にめちゃくちゃ楽しかったんですよ。5人で演奏した瞬間が。

──3人は、配信ライブのときがカエラさんと初顔合わせで?

Minami:そうですね。やっぱり華があるから、新鮮な空気を吸えたみたいな感じでした(笑)。このメンバーでずっとやってきたバンドだし。チバさん(The Birthdayのチバユウスケ)と「Brand New Cadillac」をやったときもそう。たまに変化があると楽しいですよね。

EKKUN:カエラさん、キラキラしてました。輝いてた。

Jun:EKKUNはアガってたもんね(笑)。リハを何回かやったときから。

──EKKUN、女性に対して純情すぎること多いですからね(笑)。

Jun:ピュアでね。

EKKUN:曲のエンディングのかき回しのとき、カエラさんに見つめられて、“ちょ、ちょっと、アエ〜!!”ってなって(笑)。

──ぷちパニックに(笑)?

EKKUN:そうそう。あんまり見つめられたら好きになっちゃうって(笑)。

──“俺の3本目のスティックが〜”みたいなノリで?

EKKUN:そこまでいかない、やめて。俺が言ったみたいにしないでくださいよ(笑)。

Ken:いいなー、今のは文字にしてほしいな(笑)。

Jun:リハはリハとしてカエラさんは歌っていたんだけど、実際の配信ライブになったとき、“この人はやっぱスゲーな。プロだな”って思いましたよ。配信ライブを観てくれた人も“あっ、カエラが出てきた”みたいにテンションが上がったと思うけど、俺も演奏していて一緒だった。この人はやっぱプロフェッショナルな人だなっていう。

Ken:人前に出るべくして出ていく人ですね。

──いわゆるオーラが違うという?

Ken:うん、そうですね。

──でも今回の3曲の流れは、冒頭でも言ったようにストーリー性があって、すごく感心しました。

Ken:繰り返しになっちゃうけど、カエラさんに救われたんですよ。


──Extra Discには、スタジオライブをレコーディングした3曲を収録しています。あらかじめ3曲に絞ってレコーディングしたんですか? それともいくつかレコーディングしてみて、この3曲を選んだんですか?

Ken:いや、3曲だけです。Extra Discを作るために、3曲だけ、スタジオライブをした感じです。

──生ライブでお馴染みの2曲も入っています。でもライブと違う解釈がビシビシに入り込んだアレンジやプレイになっていますが?

Ken:そこがスタジオライブの狙い。お客さんを前にすると気持ちも高ぶって、どうしてもラフになっちゃうから。あと、ちゃんとレコーディングスタジオで鳴らす普通のレコーディングでは、もっと綺麗になっちゃうじゃないですか。その中間があってもいいよなと思って。

──それに、本当はこういうふうに聴かせたい楽曲なんだなって。決着をつけたような印象もありますが?

Ken:決着をつけたい曲を選びましたね。例えば「Love Me Slowly」は1stアルバム『The Cost of My Freedom』からの曲で、あのときにはキーボードも入っていた。今回のバンドバージョンは、何年も前から存在していて、たまにライブでやっていたんですよ。こうやって形にすることで決着がつくじゃないですか。今の4人ならこういうアレンジをして、こうやって鳴らすんだって。「Fuck Up, Fuck Up」にしても、今、ライブではJunちゃんが歌っていて、今回もJunちゃんが歌っています。こうなるよねって決着をつけたかったんだよね、Junちゃんが。

Jun:違います(笑)。

Ken:Junちゃんが「絶対に「Fuck Up, Fuck Up」をやらせろ」と。

Jun:それも違います(笑)。選曲で、この曲が最後に決まって。しかもレコーディングの2週間前。それまでは違う曲をやるはずだったんですけど、急にKenが「やっぱ、あれは引っ込める。歌って」と言われて、「えーっ、マジで?」と。俺は歌うのが苦手なんです。ベース弾くのは大好きだけど、歌うのは好きでもなんでもなくて。でも、“これぐらいのことはできます”というのが、今回の「Fuck Up, Fuck Up」で。

Ken:いや、胸張ってそう言ってるけど、酷いからね、歌は(笑)。

Jun:いやいや、まあまあだよ(笑)。

──とにかく、いろいろたっぷりと楽しませてくれる第二弾「My One Wish」です。そして気になる第三弾シングルですが?

Ken:タイトル曲がめちゃいいんですよ。それだけは言っておこうかな。

Minami:個人的に、今回いっぱい録った曲の中では一番好きです。


▲横山健 (G, Vo)

──そこまでのヒントだけにしておきましょうか(笑)。10月からはホール会場の東名阪ツアー<My One Wish Tour>も行います。今や、ライブ会場を選ばない活動をしているKen Yokoyamaですし、コロナ禍の活動で新たに開いた扉が、それでしょうから。

Ken:まさにそうですね。コロナ禍はホール会場とか、オールスタンディングの開場でも“その場から動かないで”ってライブしかできなかった。そうすると、小中学生連れの親子さんが最前列でライブを楽しめたりしてね。普段のカオスなライブだと、後ろで観るしかない女性のお客さんが、ギターとかベースを弾く手元まですごく観ながらライブを楽しんでくれたり。それこそ、この間の日比谷野音がそうだったし、これはこれですごくいいなと。声を出せないのが不満だったんですけど、声さえ出せるのであれば、いろんな会場でのライブはすごくいいなと。音響もちゃんとしているところも、ホール会場のいいところですからね。

──次のホールツアーは新たな側面や力が発揮される内容に?

Minami:どうなんですかね(とニヤリ)。

──あっ、分かった。Minamiさん、ドラムを叩いて歌うんでしょ(笑)?

Minami:あははは!

EKKUN:俺はピンで歌うのかな?

Jun:じゃあ俺はサイドギターか。

Ken:ってなると、俺がベースを弾くってことになるのかな。あと司会か(笑)。

Jun:しゃべり担当だね、Kenは(笑)。

Ken:フロントマンといえば、FUGAZIに稀代のフロントマンがいるんですよ。ダンスがめちゃカッコいい。

Minami:そう、外人にしかできないダンス。そんなことをやろうってKenさんは考えているんですか(笑)?

──また話を脱線させてしまいましたが、今までと違う会場だから、観に行く側の気構えも違うし、新しいライブを体験できるんだって感じでいいですか?

Ken:そうですね。今年5月の野音<DEAD AT MEGA CITY>もすごく楽しくやれたし、お客さんも“暴れられないライブはどうなんだろうな?”と思っていたものの、“思ったより楽しかったな、これもありだな”と思って帰ってくれたと思うんですよ。次のホールライブもそういう感じでできれば。

Jun:どうしても暴れたい人は、こっちもそういうライブを用意するから、そっちでも楽しんでくれたらいいし。

Ken:1本のツアーで、今後ホールとライブハウスを混ぜこむのもありだしね。そういうのもおもしろいよね。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎野村雄治

■5thシングル「My One Wish」

2023年9月20日(水) 発売
【初回限定盤(2DISC)】¥1,800(+税)
【通常盤】¥1,200(+税)
01. My One Wish
02. Time Waits For No One
03. Tomorrow (w/KAELA KIMURA)



■<Ken Yokoyama「My One Wish Tour」>

10月03日(火) 名古屋 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
10月13日(金) 大阪 メルパルクホール
11月09日(木) 渋谷 LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)


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