【インタビュー】Ken Yokoyama、怒濤の2023年は実験と冒険の先へ「ベストを尽くせないんだったら、やらなくたっていい」
Ken Yokoyamaが9月20日、シングル「My One Wish」をリリースした。5月発表の「Better Left Unsaid/Whatcha Gonna Do」に続く2023年第二弾シングルには全3曲が収録された。表題曲「My One Wish」は、Ken Yokoyama十八番の疾走感あふれる乾いたパンクチューン。8ビートから2ビートへの展開やサビのループ感などグルーヴを展開させていく手法は、彼らの本質と新機軸が交錯して新鮮に響く。一方の「Time Waits For No One」は往年のハードロックを連想させるエッジーで重いギターリフが曲の中核を貫く痛快な仕上がりとなった。また、ゲストボーカルに木村カエラを迎え、コロナ禍の配信ライブで披露したミュージカル『アニー』のカバー「Tomorrow」を改めてレコーディング収録するなど、それぞれに個性際立つ3曲が収録されている。
◆Ken Yokoyama 画像 / 動画
2023年第一弾シングル「Better Left Unsaid/Whatcha Gonna Do」はレーベル直販/受注生産のCDとサブスクという変則的な形でリリース。第二弾シングル「My One Wish」には3曲入りスタジオライブ音源が付属する初回盤と通常盤を用意、全国のCDショップで発売されている。このインタビューでも明かされているが、シングルはこの後にもう1作が控えており、三部作として届けられる予定だ。
これまであまりリリースされることのなかったシングル作品の連発、加えてそれぞれ異なる販売方法など、今、Ken Yokoyamaは何を見据えているのか。「My One Wish」を軸に、リリース方法の実験、一昨年から構想していたという怒濤の2023年計画、“Kenメロ”と“マイナー”の関係性、そしてExtra Discやホールツアーについてじっくり訊いた1万5千字越えのロングインタビューをお届けしたい。「このバンドって、みんな、自分の不得意なことをやっているんです」といったレアなトークも飛び出す爆笑インタビューとなった。
◆ ◆ ◆
■シングル3作に関連性は特別ないんです
■けど、それぞれに目的があって
──今回のシングル「My One Wish」は、前作「Better Left Unsaid」の続編というか、仕掛け第二弾的な感じがありますね。今度は通販だけじゃなく、通常盤もあるし、欲しがり屋のみんなへのExtra Disc付きの初回盤もある。まず、その企みについて教えてください。
Ken:企みですか?
──これをやろうって、いきなり事が進み出すことは無理で、事前に準備も必要じゃないですか。このタイミングでどんどん音源もライブも仕掛けているのは、その向こう側にどんなマインドや考えがあって、そして自分たちを突き動かしているのかと。
Ken:まず、今やっていることは、一昨年から去年にかけて計画していたことで。それが、やっと実現しているわけです。コロナ禍のなかで、“でも、この時期はこんぐらいやれてないと人生寂しいよね”ってところもあって。で、音源もライブも、“それ、うまくハマるの?”ってぐらい詰め詰めにしたスケジュールを去年組んで、今実行してる。だから今、ヒーヒー言ってるんですよ(笑)。
──Minamiさんも、だいぶ、頬がこけちゃっているし(笑)。
Ken:それは経年変化です。
Minami:本当にそう…いや、自ら絞ってますよ(笑)。こっちの二人(KenとEKKUN)との対比がすごいでしょ。
Ken:僕が太っちゃったんで。僕とEKKUNが“コロンタン”なんです(笑)。で、JunちゃんとMinamiちゃんが“ヤセタン”になって。
──子供たちにもウケるキャラ設定に。
Ken:僕はもうちょっと丸く、コロンタンにならなきゃいけない。ヤセタンがキツいこと言っても怖いだけじゃないですか。コロンタンになって初めて、キツいことを言っても柔らかく通じるようになる(笑)。
──この取材も、ヤセタンの二人はキツいこと言えないですよ。
Ken:そうです。もうコロンタンがズバズバいくんで。
Minami:で、質問はなんだっけ(笑)?
▲横山健 (G, Vo)
──スケジュールを詰め込んでしまったがゆえ、今はヒーヒーだということですが。
Minami:ああ、でも充実してますよ。
──そうですよね。コロナ禍は、誰もが動きたくても動けない状況で、みんな目の前が真っ暗になりましたから。そのときに比べたら、やることいっぱいで。
Ken:そう。あの時期に比べたら、ライブも音源制作もやれる喜びってのをすごく感じていますね。ひとつは、そういうコロナ禍の反動ってのもあるけど、もうひとつ、音楽の聴き方や聴かれ方がだいぶ変わったなってことをコロナ禍で実感したんです。
──はい。
Ken:だから、普通にアルバムを出すよりも、もうちょっと曲を多く作って、シングルをポンポン出して。シングルを出すと、それを口実にライブもできるし、こうやってメディアで話す機会も増えるじゃないですか。そうやってどんどん出ていきたいなと。そういう気持ちが大きなモチベーションですね。実は、シングルは三部作なんですよ。
──「Better Left Unsaid」「My One Wish」という2枚で終わるわけじゃなく、さらにもう1枚用意していると?
Ken:そうなんです。シングルがもう1作あるんです。
──Kenさんがおっしゃるように、アルバムとシングルの意味合いや価値観は、時代と共に変わってきたと思うんです。
Ken:うん、変わりましたね。
EKKUN:シングルは、アルバムの前段階にかますやつっていう印象があったんですよ。まあ、前戯みたいな(笑)。
Ken:僕は、自分のことをアルバムアーティストだと思っていたんですよ。アルバム至上主義、アルバムだけ出してりゃいいって。シングルなんて、それこそ“なんて”と呼ぶぐらいの感じ。気が向いたときに出せばいいし。シングルで頑張ってらっしゃるアーティストさんはいっぱいいるから、僕らがそこに入っていく必要はない、みたいな。
──どうしてそういう考えに?
Ken:シングルは曲数も少ないし、アルバムよりも消費物に近いじゃないですか。だから、あまり必要性を感じなかったんです。現に僕らも過去にシングルは3枚しか出してないので。それもミニアルバム的なボリュームを持たせて、シングルとはいえ、作品性を重視していたんです。ところが音楽の聴かれ方がサブスク中心になり、アルバムの価値がすごく落ちたんですよね、今は。アルバムを作る理由は、ミュージシャンのエゴと、一部のコアファンが喜んでくれる以外にないんじゃないですかね。
──海外のバンドやアーティストの中には、ライブに来たお客さんに新曲を入れたUSBをプレゼントするような施策をとっていた方もいましたから。
Ken:アルバムを大事に考えている僕らからしたら、そんな嘆かわしいことが…って思うけど、揺るがない事実ですもんね。
▲松本”EKKUN”英二 (Dr)
──現実だから受け止めなきゃいけないし、文句言ってるだけじゃ、なにも始まらないですから。
Ken:そう。ただね、こうやって人前で話すときは現実を受け止めているようなこと言うけど、部屋に一人でいると、一人のミュージシャンとして嘆かわしいって思いだけで止まっちゃってますよ。“あ〜あ”っていう感じで(苦笑)。今回、シングル三部作をやろうって発想したのには、さらにもうひとつ理由があって。僕がアルバムの意味を完全に見失ったんです、去年。どうせアルバムをリリースしたって、リードトラックしか聴かれなくて、他の曲がかわいそうだと思っちゃったんです。たとえば12曲作っても、1曲ないし2曲だけが聴かれ、あと10曲は捨て曲同然になってしまうなと。誰がそう思うとか、僕らがそうするとかじゃなくて、事実そうなっていってしまうんだろうと。これが、僕らがアルバム2枚目とか3枚目の若手だったら、まだいいですよ。でも今度で8枚目になるんです。
──しかも、各自がミュージシャンとしてキャリアも相当重ねてきていますからね。
Ken:僕は曲を作る立場で、家で一生懸命にひねり出しても、これって熱量の無駄だよな、と思っちゃったんです。もちろんアルバムも出すんですけど、アルバムに辿り着く前にシングルの連発で、手応えをちょっと試してみたいって気持ちがあります。
──シングル三部作は大いなる実験という意味も多分に含まれているんですか?
Ken:そうなんです。今回のシングル3作に関連性は特別ないんですけど、それぞれに目的があって。1枚目「Better Left Unsaid」はPIZZA OF DEATHの自社流通による通販限定。枚数も限定にしたんで、もう売ってないんです。今回の2枚目「My One Wish」は、流通業者や小売店にお世話になって、広く出していこうと。で、3枚目には3枚目の狙いがあるんですよ。
──ファンが手にする方法も変化させながら、どういう反応が起こり、どんな人のところまで届くかを、自分たちでしっかり感じたかったわけですか?
Ken:そうですね。その検証結果が出るのは数年先だと思うし、無駄な実験で終わっちゃうかもしれないけど、ちょっとやってみようと。
──チャレンジすることに価値がありますからね。やらないよりはやったほうがいいに決まってます。
Ken:少なくともシングルは出るわけで、曲数も増えるわけで、そうしたら理由を付けてツアーに出れるわけで(笑)。
▲5thシングル「My One Wish」
──去年のうちから三部作の作曲などソングライティングは、すでにスタートさせていたということですね。
Ken:そう、去年中にはシングルの曲は全部出来上がって、今年2月にまとめて録ったんです。「Better Left Unsaid」がリリースされた頃には、実はもうアルバムレコーディングも始めていたんですよ。
──なんと! 始まったら展開の速さがすさまじいですね。話を聞いてるだけで目がクルクルしちゃうぐらい。
Ken:いや、僕もこういう忙しさは経験したことなかったから。さっきも言ったように、自分はアルバムアーティストだと思っていたから、アルバムを1枚出したら、2年間はツアーをまわって、いろんな形でライブをやって、その間に少しずつ新しい楽曲を作って、それでまた前作の2年後にアルバムを出す。そういうサイクルで活動をやってきた人間が、シングルとかいろいろやり始めちゃったんで、自分でも現在地はどこだろうな?ってね…そう思うことはある(笑)。
──シングル三部作となったとき、作曲やアレンジするにあたり、別のスイッチも入ったんですか?
Ken:いや、特別に変えてはいないですよ。シングルやアルバムリリースに関わらず、曲はいつも書き溜めているんで。なにかリリースしてしばらくしたら、そろそろ新曲を作りたいよねって必ずなる。それで、「なんか曲持ってこい!」とJunちゃんからも言われて(笑)。
──ははは。
Ken:それで曲を書き溜めていって、シングル分はもうあって、それをはみ出すぐらいの曲数は去年のうちにできてたのかな。その中から何枚シングルを出して、どういう組み合わせにしようかって選んでいったのも、去年でした。
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