【インタビュー】Ken Yokoyama、怒濤の2023年は実験と冒険の先へ「ベストを尽くせないんだったら、やらなくたっていい」

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■サビは今までにはないループの仕方
■この感じは今までになかったな


──ソングライティングとして、Kenさんは今も曲先ですか?

Ken:そうです。曲は時間を掛けて書いているんだけど、歌詞は去年暮れから今年頭に掛けて、2〜3ヵ月間で全曲分、書いていったんじゃないかな。まだ世の中に出ていないものも含めて。その時期に感じていたことや、自分の視点からはこう見えるよってことが、「My One Wish」にも、「Time Waits For No One」にも如実に出てますね。

──さっき「歳を取った」という発言もありましたけど、歌詞を読んで、歳を重ねるのも悪いことじゃないと思いました。“棺桶に片足を突っ込んだ”という歌詞もありますが、先が見えているからこその踏ん張りとか、力を出さなきゃいけない瞬間って大事になりますからね。

Ken:楽曲はみんなで仕上げていくし、みんなに意見を求めるけど、歌詞はすごくパーソナルなんですよ。だからひとつベクトルが決まったら、そっちのほうに長く伸びちゃうというか。だから歳取ったんだなって。別に悪い意味じゃなくて、逆に若い子には歌えない歌詞だなって思いますね。

──歳を重ねた人にしか出せない説得力とか、この男が歌うから響くんだって言葉…すいません、この男って言っちゃいましたけど。

Ken:いや、めっちゃカッコいい言い方だと思いますよ。聞きながら、うんうんって(笑)。

──サウンドやアレンジという意味での楽曲は、いつも完成度高めのデモをKenさんが作るんでしたっけ?

Ken:いや、だいたい1フレーズ。デモを作るどころか、iPhoneにギター弾き語りの鼻歌を録って。それをスタジオに持って行って、「こんなのを思いついたんだけど」って、みんなの前で弾き語りするんですね。コードをちょっと覚えてもらって、ビートを付けてもらって、みんなで大きい音で鳴らしてみるんです。それをまたiPhoneに録音して、“この先になにがくるんでしょうか!?”ってのをいつもやってるんです。それを聴いていくうちに“イントロのつもりで作ったけど、サビに聴こえるぞ”とか。その逆もあったり。“いや、ここのコードを変えよう”とか。それを次回の練習までにポンポン作っていくんですね。作るたびにみんなに意見を聞いて、「2つ思いついたけど、どっちがいい?」とか、「こっちがいいよね」とか。そんな感じですね。


▲Jun Gray (B)

──“Kenメロ”って感じたぐらいだったから、新たなインスピレーションも湧きやすかったですか、「My One Wish」は?

Jun:「My One Wish」は楽曲として、一番の得意分野というか。2ビートが入ったり、8ビートも入ったり。Kenが持ってきたちょっとしたパーツから広がっていったけど、すごく作りやすかった。誰一人、悩むことなく作っていったんじゃなかったかな。

Ken:サビを先に思いついて、それに合わせてほかのメロディを付けて、最後にイントロとか付けてとか、ガチャガチャやったんだと思う。

Minami:う〜ん、覚えてないというか。これは作曲時期の最後のほうにできた曲だったんですよ。Ken Bandのあるあるパターンなんだけど、いわゆるKen Bandっぽい曲は最後のほうにポンポンできる傾向があります。それまでは実験的な曲で、煮詰まるじゃないけど、それぞれ練り込む感じで。でも最後のほうで得意分野の曲を作っちゃうことが多い。この「My One Wish」は、得意分野そのものですよね。

Ken:でもサビの感じとか、今までにはないループの仕方で、やっていて新鮮。ちょっと楽しいんですよ。すっごい細かい話なんだけど、聴く側と演奏する側ではちょっと違うというか、視点も違うじゃないですか。弦楽器の僕らは、歌ったりコードを変えたりしているけど、もしかしたらEKKUNは違いを感じていないかもしれない。この感じは今までになかったなというか。

──はい、挑発的ですよね。アンサンブルのやり口が。

Ken:アンサンブルはけっこういろいろ仕掛けました。

──だってシンプルじゃないですから(笑)。

Minami:そうなんですよ。

Ken:すごく面倒臭いことをいっぱいしてて。どうシンプルに聴かせられるかってのは、レコーディング中も考えたかな。だから演奏していても新鮮。

Minami:一回だけライブで披露したんですけど、気を抜けなかったですね。それだけ曲が細かくアレンジされているんです。緊張感を持って曲に向かわないと。

EKKUN:早くライブで披露したいなって思う曲で。

Minami:いや、披露したって話だから(笑)。

──そう、「披露したときは緊張した」って話をMinamiさんがした直後だから。EKKUNだけ一人で過去へワープしてて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』かと思った(笑)。

Minami:笑いのツボに入るって(笑)。

EKKUN:いや、披露したんですけど(笑)、リズム的にテンション高いし、コーラスも何ヵ所かあるんで、“早く披露したいなって。レコーディング中からそう思っていた”という話です。

──なるほど、美声ハーモニーを聴かせたいって話ですね?

EKKUN:いや、聴かせたいというか、ハーモニーがバシッと決まると気持ちいいんです。

Minami:歌いたいと?


▲南英紀 (G)

Ken:ちょっと話が脱線しちゃいますけど、いいですか? 僕、レコーディング中にすごいことに気づいちゃったんですよ。このバンドって、みんな、自分の不得意なことをやっているんです。

Minami:ああ〜、うん。

Jun:うん。わかる。

──えっ、納得しちゃう話ですか?

Ken:僕はメインボーカルがあんまり好きじゃないんですよ。最近は好きだけど、メインで歌いたくて始めたわけじゃないんで。コーラスが好きなんです。ところが、このバンドのコーラスは僕じゃない。なんか不得意なことやってるなって思うんですね。

Minami:僕はコーラスを歌うのは、あんまり…なんですよ。

Ken:Minamiちゃんは英語がすごく上手なんですね。僕は英語、そんなに得意じゃないんです。

──いや、Kenさんはバイリンガルですよね。

Ken:でも、英語はMinamiちゃんのほうが得意。ところがMinamiちゃんはメインボーカルじゃない。発音もすごいいいし、リズムにすごく気がいくというか。EKKUNよりもリズムに気がいくんですよ。

EKKUN:うん (力強くうなずく)。

Ken:だからMinamiちゃんはドラム&ボーカルすればいいのに。で、僕はギターだけ弾いていればいい。そしてEKKUN。さっき「美声」と言われてましたけど、歌が僕よりうまいんです。ピッチもすごくいい。

Minami:そう、上手なんです。

Ken:感情的かどうかはさておき、ピッチがすごく正確なんです。

Minami:コーラス録りも、ピッチが正確だからEKKUNは早い。

EKKUN:出ちゃうんですね、つい(笑)。

──“シンガー=EKKUN”の実力が(笑)?

EKKUN:そう、ついつい出ちゃう(笑)。

Ken:だからピンでボーカルやればいいって話で(笑)。

Minami:そういう意味ではJunさんが一番得意なことやれてる。

Ken:でもJunちゃんのベースは、ギターのオブリっぽいのかなと思ってみたり。普通のベースフレーズじゃないから。だからサイドギターやればいいのにと思ったり(笑)。

Jun:なるほどな、そうかも。

──みんな、言われたことにそれぞれ納得してるじゃないですか(笑)。

Minami:いや、おもしろい見解ですよね。

──つまり本来の自分のパート以外とか、別の角度からの目もそれぞれが持っているわけですよね。

Ken:うん、いい意味でお互いの分野に干渉し合えるなとは思います。

──だから膨らみも出ますよ。全員でアレンジしたり、意見をやり取りしていくと。話が脱線どころか、深い話でしたよ。

Ken:でもおしゃべりは、やっぱりKenが得意ね(笑)。

Jun:まあね。ただのしゃべり好きでしょ?

Ken:そう、だから歌わないでしゃべってるだけっていうのはどう?

Jun:“司会=Ken”で。

──そうなると、本当に話が脱線するので(笑)。

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