【インタビュー】Waive、日本武道館ワンマンをもって解散を宣言…その真意を語る「明確な大義名分を掲げない限り、僕らは燃やし尽くせない」

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■“自分たちがこういうことをしたい”
■そこを原点に波紋のように広がっていくべき


──新曲も生まれているんですよね? アルバムリリースに向けて今、どのくらい進んでいるのですか?

杉本:ゴールはまだ見えないです。リリース時期は漠然と考えていますけど、具体的に何かをやってるかというと、正直、ずっとゴロゴロしながら“どうしよう?”と考えている期間ではあります。これはインタビューを読んでくださってる方々に伝わりづらい部分かもしれない話で。さっき田澤くんが言っていたことと少し被るところもあるんですけど、近年のWaiveというプロジェクトが完全なるインナーになっていってて、その人たちに理解してもらうための曲づくりになっていた、というのはあるんですよ。

──良くも悪くもですね。

杉本:“解散中”と掲げていたことでさえ、“こうだと傷つかないでしょう”とか“こうだと喜んでいただけるでしょう”とか、なるべくファン目線に立ってやっていたつもりでもあったし。我々は解散を選んだことのあるバンドだから、ファンにとってのプライオリティーとして二番手以降にあるべきだ、というプロジェクトになっていたと思うんです。だけど今回は、 そこを“広げていこう”という意思があるし、仮にそうじゃないとしても、バンドが在るべきところに戻ろうと思っていて。


▲杉本善徳(G)

──ファンの心情を慮ってではなく、バンド主体で発信するという原点回帰でしょうか?

杉本:“自分たちがこういうことをしたいし、こういうものをつくりたいな”から始まって、それを支持してもらうことが、大げさに言うと“アート”だと思うので。本来もっと我が儘なもので、クリエイター側がプライオリティーの一番上にいるはずなんですよね。そこを原点として、そこから波紋のように広がっていくべきだと思うから。ところが、その中心に“ファンの意見”みたいなのを据えてしまっていたことで、熱量が注げなくなってしまっていたのかもしれない。だけど、やっぱり我が儘に“自分たちはこういうことやりたいよ!”って。ファンがどう思うかよりも、まずは僕らが先頭に立って引っ張っていくんだという意識の下で動こうと思っています。リリースは正直、リリースしようと思えばなんぼでもできるんですけど、“メッセージ性のある音楽をライヴで伝えていく”みたいな活動をするには、どうしても3ヵ月とか4ヵ月要るのかもなと感じ始めてしまっているんですよ。

──なるほど。

杉本:今日も車に乗ってここまで来る間に、鼻歌で何曲かメロディーつくってきたんですけど、ほぼほぼボツになるわけですよ。でも、そういう積み重ねの中から、数ヵ月後、形になる可能性を感じる歌詞や仮メロが生まれてくるので、そこは意識しないといけない。バンドが長くなってくるとどうしても、“これまでに書いてない曲を書かないと”という意識が出てきて、本当に書きたいものじゃないのに、“隙間の曲”をつくろうとしてしまったり。もしくは、“昔からやってて大事な曲だったけど、今は恥ずかしくて歌えなくなってきてる歌詞だから、これみたいな印象の新しい曲を書こう”とか。そういうのってテクニカルなことで、良くないなと思うんです。

──先ほどおっしゃってた“アート”の定義から逸脱してます。

杉本:そう。もっとピュアに生まれるべきものだし。やっぱりちょっとズレてて、Waiveがやらないとダメなことで、過去のWaiveを意識しないでやれるものと考えると…プロだから曲なんて暇さえあれば幾らでも書けるんですけど、“Waiveのための曲を書く”というのが、やってみると案外難しいなと思っていて。他のプロジェクトのための曲を書いている時と違うスタンスになってきているから、時間が掛かってしまってるというのはありますね。

──やはり、Waiveはそれだけ特別だということですよね?

杉本:カッコよく言うとそうです。でも、 特別に思っているというよりは、さっき田澤くんが言ってたみたいに、他にいろいろなことをやっている中でWaiveと向き合うと、あまりにも個性的過ぎるんですよ、Waiveは。かなり変わってるし、それだけ古いのかもね。今のスタイルに乗っからないとダメなことは絶対にあるけど、そこだけを意識してつくってしまったら、ものすごく違和感がある。だからと言って、古いことだけをやっていたら届かない目標を掲げているし。やるべきことの難しさがあるんです。ヒット曲を持っているわけではないから、“これをやったら喜ぶんでしょ?”みたいな定型もないし。たとえあったとしても、それを意識したところで、やっぱり届かないような目標に向かおうとしてるわけで。終わりが決まっている以上、そうそう無駄打ちできるわけじゃないし、頭を使って戦略的にやらないといけない。最初の解散までもきっとそうだったんだけど、当時は若いがために無限にこういう時間が続くと思っていたし、ルーズに生きていたからね。


▲田澤孝介(Vo)

──まぁ、若い頃はリミットを考えずにできますよね。

杉本:何に対してもね。時間もそうだし、プロダクションが制作費を出してくれるから、どこかからお金が沸いてくるみたいな財布が無限な感覚が、たぶん心の奥底のどこかにあったし、焦らなかった。それが今は全てのものに有限を感じるから、“その中で何をするんだ?”となった時に、歳を取ったから経験値も増したとはいえ、頭の回転は確実に遅くなった自覚があるので(笑)、そのぶん一生懸命考えないとできないのかなと。でも、考え過ぎて動きが遅くなったらダメだから難しいんだけど、かなり考えてはいますね。

──どんな新曲たちが生まれてくるのか、楽しみです。ライヴを観ていると、やはり初期からWaiveを応援してきたのであろうファンの方々が、当時の曲で歓喜なさっていますよね。でも、新しいファンも獲得しようとした時、プラスアルファで必要な要素もある。バランスが難しいですね。

杉本:言葉がついてきてほしいんですよね。例えば“Waiveの代表曲”と言われるとか、何か分かりやすいものになっていかないといけない。新しい人ばかりを意識して曲をつくると、古くから応援してくれている人が不満を抱きがちになるのは心理として仕方がないと思うんですけど、その人たちも巻き込めるぐらいの“良かったね”が生まれる曲をつくりたいし。もっと言うと、「遅いよ!」と言われたいんですよ。

──それはどういう意味ですか?

杉本:“あなたたち、この曲を早い時期につくることができてたらブレイクの可能性も増してたのに!”と思ってもらいたいなと。僕、Waiveってずっとそういう宿命にあると思っているところがあるんですけど、例えば“伊達政宗がもっと早く生まれていたら戦国時代は変わっていたんじゃないのか?”みたいな。Waiveってそういう位置のバンドだと思っていたから。

──シーンの勢力図において、今とは違った存在になり得ていたと?

杉本:「数年早く活動が始まっていたら、たぶんシーンの中でこうだったよね」とか、逆に「数年遅かったらこうなれたのに、ちょうどデッドスポットみたいな時期に出てきちゃったよね」とか、結構周りから言われるし、自分でもそう思うんです。昨日も実は、とある後輩から「Waiveってちょうど不遇な時代に活動していましたよね」と言われて。やっぱり先輩たちは音楽を取り巻く状況が良かった時代の人たちだから、そう言われても然りと思っていたけど、 その後に出てきた子たちから見ても「Waiveは2〜3年前後していれば、目の上のたんこぶのような鬱陶しいバンドだったのに」みたいなことを言われるので、それを最後の最後に証明したいなと。

──なるほど。

杉本:“この新曲でこういう状態になったんだったら、「解散する」とか言わずに続けたらいいのに”と言われるような、そんな解散をしたいという気持ちがあるので。ファンの方には本当にわかりにくい話だと思うんですけど(笑)。“じゃあ続けなよ”と言われそうなことを話してるのは理解してるけど、“でしょ?”と言って終われるようにしたい。そうならないとしても、それを目指さないんだったらラクに終わったほうがいいので。険しい道を敢えて選ぶんだったら、1人でも多くの誰かに“名残惜しいな”と思ってもらいたい、というのはちょっとあるかも。


──誇らしい解散を目指すわけですね。田澤さんは今のお話を受けて、どう思われますか?

田澤:僕は、言うてもこのバンドにおいては“つくる人”ではないというか。

──クリエイトする側ではなくパフォーマーに徹している、ということですか?

田澤:うん、パフォーマーなので悩みの質が全然違うなという感じで聞いていましたね。すごく大変そう、みたいな。こう言うとめっちゃ他人ごとやけど(笑)。

──杉本さんがつくられるデモとか歌詞の断片とか、田澤さんはもらって聴かれるんですか?

田澤:くれる時はくれます、最近は。今つくっている新曲もそうですし。でも、結局はレコーディング現場で実際に歌を当ててみて、やり取りをして、自分なりに解釈していって。一回それをやって、初めて“ちゃうねん、こうしたいねん”とか“うんうん、なるほど。こういうことか”っていうのがでるんです。ただひたすらやり取りを重ねて、理想に近付けていく作業なので。僕は解釈の力とそれを具現化する技術をとにかく持っておかなあかんなという感じなんですよ。

──Waiveにおいて、表現する立場に注力してこられた田澤さんが、解散に向かう今、“自分が言いたいことを具体的に曲に落とし込んでいこう”とか、意識が変わった部分はありますか?

田澤:ないです。考えたことないですね。

──あくまでもヴォーカリストとして、という向き合い方なんですかね?

田澤:何て言うんだろう…Waiveでは始まりがそうやったから。これまでみたいな比率で、たまに僕の曲があるというのはあり得るかもしれないですけど、核となるメッセージみたいなものは、自分が発しようとは思わないですね。それを受けて感じることを言葉にしたい、とは思ってますけども。

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