【インタビュー】Rude-α、「いつか来るタイミングを待つんじゃなくて、ただただいい音楽を作って、いいライブをすることにこだわりたい」
Rude-αが2023年5月31日に3年ぶりのアルバム『25.5』をリリースした。ISSEI、EQ、Shin Sakiura、TSUBAME、Mori Zentaro、AWSM.、80KIDZ、有元キイチ(ODD Foot Works)らをプロデューサーに迎えてのトラックはバラエティ豊かで親しみやすい。が、婚約破棄をはじめとする、この2年間の事件を踏まえたリリックはこの上なく率直で、胸に迫るものがある。その内容についてはもちろん、元ACE COLLECTIONの奏、元The Winking OwlのKenTらと結成したバンド、Bubble Babyの話題まで、Rudeの最近の活動全般について話を聞いた。
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■常に「ラップしてる」っていうより
■「音楽をやってる」意識
──沖縄に拠点を移してから順調にリリースしてきましたよね。
メジャーにいたときはやっぱり若干の縛りっていうか、例えば歌詞についても「こうしてほしい」っていうのがありましたけど、今は自分で本当に思ったことや感じたことを素直に書けるから楽しいです。だから好きな音楽は作れていると思うんですけど、まだ全然、現状には満足してないですね。
──メジャー時代はタイアップが多かったけれど、そうしてお題があったほうが作りやすい人と、縛りが何にもないほうが作りやすい人がいますよね。Rudeさんは後者ですか?
お題をもらっても書けるし、何もない状態でも書けますよ。今回のアルバムは本当に何も考えないで作ったっていうか、アルバム自体にコンセプトみたいなものはなくて、そのときそのときのアイデアで作った曲ばっかりです。例えば音楽をやったことが全然ない地元の女の子の後輩に歌わせたり(笑)。
──それが「Call My Name (feat. Bitna Park)」?
Bitna Parkって名前も俺が勝手に決めたんですよ。最近、その子のインスタ覗いたらBitna Parkって名前になってましたけど(笑)。
──その気になったわけですね。この曲に参加するのが例えばeillさんでも素敵かもしれません。
eillちゃんにはガチ恋なんで。「全財産渡して」って言われたら全然渡すよ、ってレベルで好きです。俺、最初に観たときから「もうこの子絶対売れますね。ってかやばいっす」って言ってて、しゃべってみたらちょっと小悪魔的で。日本というか地球にいる女のなかで一番俺の扱い方がうまいと思う。
──全女性で一番ですか(笑)。
俺、人のウソとかすぐ分かっちゃうんですよ。例えば知り合いが一緒にいた子に「こいつRudeだよ」って教えて、その瞬間に「え! わたしめっちゃ好きなんですよ」とか言ったとしても、「ファンだったら一発で気づくよ。そこまで好きじゃないだろ」みたいな。でも、もしeillちゃんに何か言われたら、裏の裏の裏の裏まで読んであえて転がすために言ってるな、って思いそうだなって。
──Rudeさん自身もウソをつかない人ですもんね。
そうっすね。思ったことは全部言えます。
──アルバムも一曲一曲すごく正直な印象を受けますが、並びがいいですね。曲順はどうやって考えたんですか?
飲んでたときにマネージャーから「今日中に決めないといけない」ってLINEが入って、俺、けっこう既読無視したりするんですけど、追いLINEまで入ったから、ちょっと焦ってきて。酔っ払いながら組んだセトリですけど(笑)、自分だったらこういう流れで聴きたいなって思った順番なんで、自信あります。
──トラックや曲調のバラエティもこれまでで一番な気がしました。
それはめちゃめちゃあると思います。いかにもラップみたいな曲って、作れはするけど、別に自分がやらなくてもいいかなって思ってるからあんまり作らないんですよね。常に「ラップしてる」っていうより「音楽をやってる」意識だから。そのとき聴いてたものとか、感情を乗せやすいものとか、そういうところにフォーカスしていったら自然とこうなったんだと思います。
──それは最初に会ったときから言っていましたね。歌とラップの線を引いていないという。
全然引いてないです。オジロザウルスみたいなマインドで尖ってるときもあれば、平井堅のときもあるんで。最近はもう、ラッパーになりたいっていうより平井堅になりたいっすね(笑)。「Fallin’」で“瞼の裏にいてよ Baby”って歌ってますけど、あれは「瞳をとじて」の“瞳をとじて 君を描くよ”っていうフレーズを俺なりに噛み砕いてるんです。目を閉じたときに浮かんでくる人って本物だと思うから。会ってなくても、離れていても、目を閉じて眠りに落ちる前にそこにいてほしい、っていう気持ちで。
──ISSEIさん、Shin Sakiuraさん、EQさんなど、メジャー時代に一緒にやっていたプロデューサーが大部分ですよね。メジャーと切れたからやらない、じゃなくて、「Rudeとやる」という考え方で組んでくれたということなのかなと。
そうだと思います。やめたあとでも気軽に連絡して「こういう曲作りたいです」って言ったらすぐレスポンスくれるし。ISSEIくんとは2曲一緒に作りましたけど、もともとメジャー時代のマネージャーの発注で作ったトラックなんですよ。いつまで経っても使われないから、この2年間ぐらいずっと「俺の作ったビートさ、けっこう気合入れて作ったけど、使ってくれないの?」みたいに言われてて(笑)。今回やっと使ったら、めちゃめちゃいい曲になりました。
──そう思います。さっき正直と言いましたが、リリックはほとんどドキュメンタリーですね。
本音で書きました。婚約破棄っていうつらいことがあったんですけど、ちょうどアルバム作らないといけないタイミングと一緒だったから、自分の弱いところや「悩んでる」とか「つらい」っていう気持ちを、たぶん初めて歌詞にしていったんですよ。33万の洗濯機買わされたりとか、家も契約して10か月ぐらいで退去したんで違約金取られたり、カルティエの婚約指輪買って渡して、結局破棄したから、美里の質屋かんてい局に売って、5万円で帰ってきたりとか(笑)。けっこう壮絶なことがいっぱいあって、そこで生まれた気持ちを正直に歌詞にしていきました。そうしたら心が落ち着いて、それまで見えなくなってたものが見えてきて、吹っ切れたと思います。「Alright (feat. ISSEI)」や「Easy On Me」でふざけたり、「25」や「For My People」では社会のレールなんか外れて踊ろうぜ、って歌ったり。でも、一番根底にあるのはやっぱり婚約破棄ですね。マジでやばかったんで(笑)。
Photo by manimanium
■ステージに立っているRude-αは
■俺が子どものころになりたかった自分の理想像
──「201」「Loser」「ex.」と破局から生まれた歌を聴いて思ったのが、Rudeさんってすごくちゃんと傷つくし、未練を味わい切るんだなと。
味わい切ります。病みましたけど、ちょっとした闇ぐらいないと歌詞なんて書けないって思ってるから。島袋洋平個人としてはめちゃめちゃつらかったけど、Rude-αとしてはありがたい経験なんですよ。それでお金も稼いじゃうわけだから。そういうふうにふだんから捉えてるんで、メンタルは最強だと思います。
──Rude-αがいてくれるから強くなれる、ということですね。
そう。ステージに立っているRude-αは、俺が子どものころになりたかった自分の理想像だから。やっぱ俺とは全然違いますね。発する言葉とか、歌詞にする言葉も。だから洋平がただ病むだけで、Rude的には「ありがとう!」です(笑)。
──ズバリ“病むわ”と歌っている「Loser」はなかでも強烈ですね。
“ガキンチョに駄菓子を買い与えてるFood Star”って言ってますけど、俺、小学校で講演会とかやるから地元のガキに顔知られてて、めちゃめちゃナメられてるんですよ。道歩いてたら「Rude、サインして」とか言われて、「は? “書いてください”だろ!」ってちょっとムカついたりして(笑)。元カノと別れてお金の使い道もなくなっちゃったから、コンビニでお菓子めっちゃ買ってあげたり。そういうリアルなことがいろいろ入ってます。
──HoodじゃなくてFoodなのが面白い。ちゃんと愛したから、ちゃんと引きずってちゃんと未練に苦しむんでしょうね。彼女も愛されがいがあったんじゃないですか。「面白い婚約者だったな」って。
たぶんね、求めてるとこがそこじゃなかったんですよ、その子。めちゃめちゃきれいに片づけてる部屋に俺が酔っ払って注文したトランポリンが届いたり、車もトゥクトゥクですからね(笑)。トゥクトゥクで二人で読谷まで行って、結局、俺が飲んじゃうから、彼女にヒール履きで運転させて。「もう! だからトゥクトゥクで来んなって言ったさ」ってずっと文句言ってました。今はわかり合えなくていいから、いつか笑って再会できる日が来たらいいなと思います。
──「Call My Name (feat. Bitna Park)」でネット文化を批判しているのも印象的でした。Rudeさんの曲ではちょくちょく出てくるテーマですよね。
自分自身もだけど、世の中が振り回されちゃってんなって思うんですよ。Twitterでバズりたくて過激なことを書いたり人を傷つけたりするのって危険だと思うし、インスタなんか見てたらもう全員が芸能人みたいじゃないですか。クラブのトイレなんて自撮りスポットみたいになってるし。でも俺、おしゃれじゃない女の子のインスタのほうがなんか好きなんですよ。どう見せるかみたいなことにこだわってない感じがして。「SNSやってないです」って言われたら、尖ったことしてるなって思ってめちゃめちゃ惚れちゃうかもしんないです(笑)。
──SNSは便利だけれど、弊害も大きいですよね。
SNSを改善していくよりも、ひとりひとりが考える力を身につけて、心の声に従うことが大事だと思うんですよね。シックスセンスって本当はみんな持ってるのに、気づかなくさせられてるだけだから。俺が人の優しさやウソに気づくのも、絶対シックスセンスなんですよ。外れることもあるけど。ぶっちゃけ俺は、自分のマインドはSNSなんか追いつけないところにいると思って生きてます。他人からしたら「なに言ってんだ」って感じでしょうけど、俺のなかには確実に「こいつら遅れてるな」って思いがある。世の中捨ててますから(笑)。人に何言われてもいいって思えれば、めちゃめちゃ強くなりますよ。
──昔からよく言われますね。音楽は世界を変えられないけれど、音楽は人の心に作用するから、聴いて変わった人が世界を変えるかもしれない、と。
心底そう思うっすね。俺はフレックスやファッションじゃなく心でやってるんで。「世界」って言うと話がでかすぎるって感じる人が多いと思うんですけど、個人のなかにも世界ってあるんですよ。目の前にいるあなたの世界を変えることはできると、俺はマジで思ってます。
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