【対談 #1】逹瑯(MUCC) × YOMI (NIGHTMARE)が語る、<悪夢69>と歌うこと「10年前のアドバイスを今でも守っているんです」
■一回止まったほうが客観的な見方ができる
■プラスに変えるしかないってパワーも生まれる
──MUCCは過去のアルバムを再構築したセットリストでツアーを開催中。一方のNIGHTMAREの最新曲「FAREWELL」はバンドの原点回帰を思わせるダークな疾走感に満ちた曲調です。過去を見つめ直すことで気づいたり、再発見したりする部分もあるんでしょうか?
逹瑯:当時はすげぇ大変で難しかった曲が、普通にバーッと演奏できたり歌えるようになっていたりすると、“あ、成長してるんだ”とびっくりしますけどね。俺は人よりも自分の成長をあまり感じないほうだから、ちゃんと成長してるんだなって実感できるというか。フロアの空気感はやっぱり、リリース当時とは全く一緒ではないので、それが逆に良くてね。起きているいろいろなことの渦中にいる人と、それを抜けた人とでは、見える景色が違うから。俯瞰して過去のものも見えている状態で体感するフロアの空気感は、“すごくいいなぁ、当時は分からなかったけどこうなるんだ”って。そういうのはありますね。
YOMI:僕たちも、前シングル「FAREWELL」は原点回帰をテーマに、ツアーもわりと昔の曲を入れたセットリストでやっていたんです。さっき逹瑯さんが言ったように、“今のほうが昔の曲を上手く歌えているな”という発見があったり、“ファンの子たちはやっぱりこういうのが好きなんだな”ということが改めて分かったり。そういうのはあります。
──バンドの王道の良さを保つことと、新しいことに挑戦して切り拓いていくこと、それをバランスよく両立するのはなかなか難しいですよね。
YOMI:そうですね。昔のテイスト、というわけではないんですけども、新しいことをやりつつも自分たちの良さみたいなものも忘れずにやっていかないとダメだな、とは思いましたね。
逹瑯:新しいことばっかりに行き過ぎちゃう時ってあるもんね。
YOMI:うん、そうなんですよ。
逹瑯:MUCCもやっぱりそういうことはあって。10月からツアーで廻る『カルマ』(2010年発表)というアルバムなんかは特にそうだった。「エレクトロをやりたい」と言って突っ走って行っちゃってたので、お客さんにとっては、やってる内容が前作からいきなり変わり過ぎて困惑した時期じゃないかな。アルバム『球体』(2009年発表)では「メタルをやりたい」と言ってメタルに突っ走ったりとかしてたから。もちろんそれも大事で、一回自分たちが手探りで形にしたからこそ、“こうやればこうなるよね”というのが分かるし。やっと血肉になって、そこから先の次の制作の時にそれがニュアンスとか味付けとして活かせるようになってくるんだよね。“この曲にエレクトロの要素をちょっと取り入れてみようか”とか、“あの時やってみたアレンジが、ここのバックでちょっと感じられるぐらいがカッコいいよね”とか。
YOMI:わかります。
逹瑯:そういうことの繰り返しなので、長くやっていると小技が効かせられるようになってくるよね。それで言うとMUCCは、年単位のしっかりとした活動休止はしたことがないから、それをNIGHTMAREはやってみてどうだったのか、どう感じるのか? そういうことは分からないから、そこらへんも聞きたいけどね。
YOMI:活動休止に関しては…自分が機能性発声障害という病気になってしまって、声が出なくなって。2016年に僕たちは活動休止しているんですけど、やっぱり今振り返ってみると、たぶんその辺りの自分たちは、精神的にも肉体的にもすごく疲れていたんだなと思うんですね。復活してからは自分の声もかなり良くなりましたし、メンバー間の関係性や、一人一人の精神状態もすごくいい状態で戻ってこられたので、僕としては活動休止して良かったなとすごく思うんです。
逹瑯:やっぱり、ずっと走り続けていると当たり前のように疲れるじゃない? だけど、自分たちの意志ではなかなか休めない。バンドってもう自分たちだけのものではないから、止めるにはそれなりの理由は要る。「疲れたから一回休もうか」とはやっぱり言えないから、そういう時に何か一個理由は欲しくなっちゃうだろうし。探した結果、その活動の中のいろいろなことの疲れやストレスで声が出しにくくなった、というのもきっとあっただろうし。
YOMI:うんうん。
逹瑯:だから、活動休止して良かったんだろうね、と思う。そこで一回止まったほうが客観的に“あぁ、こうだったんだな、うちら”みたいな見方もできるわけじゃん?
YOMI:はい。
逹瑯:これは想像でしかないけど…MUCCはメンバーが一人脱退してるから、バンドに与える衝撃とかショックとかは、「一回止まりまーす!」って言うのと似たようなもんだろうなと思う。デメリットをデメリットのまま、ただマイナスにしておくだけじゃなくて、“もう起きてしまってしょうがないことなんだから、プラスに変えるしかないんじゃねぇか”って捉えるパワーが生まれる、というかね。“デメリットも一個のきっかけだから、頭の回転の仕方次第で、プラスに変えられるようなことが何かしらできるんじゃねぇか”って。だから、普通に活動してたら使わない筋肉を使ったというのはあったかもしれない。
──NIGHTMAREの復活は2020年で、コロナ禍のタイミングと重なったのも数奇な運命というか。この3年半の期間は困難ではありませんでしたか?
YOMI:たしかに、コロナ禍で思うようなライヴができなくなって、活動しづらい時期ではあったんですけども。それでもやっぱり、メンバー間の絆が昔よりは強くなっていたこともあって、そこまで大変だったとは感じなかったですね。どちらかというと活動休止前後辺りのほうが、個人的には大変だったなという感じですね。
──活動休止を経たからこそ、コロナ禍という壁を全員で乗り越えられた、という感じなんでしょうかね?
YOMI:うん、活動休止があったからこそ乗り越えられた、というのはあったかもしれないですね。
逹瑯:そこで一回止まってなかったら、コロナのタイミングで違う活動休止になってたかもね。
YOMI:そうですね、本当に。
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