【インタビュー】Petit Brabancon、antzが語るEP『Automata』「このEPで逆にわからなくなった」
Petit Brabanconが6月14日、全6曲収録の1st EP『Automata』をリリースする。yukihiro、ミヤ、antzといった3人のコンポーザーによる楽曲が、それぞれ2曲ずつ収録されたという意味ではサウンドバリエーションの多面性をうかがわせるが、それ以前の肌触りとして、重厚でエクストリームなサウンドが渦を巻いていた1stフルアルバム『Fetish』(2022年8月発表)には無かった新たなチャレンジに溢れて凄まじい。これは果たして進化なのか? 隠し持っていたものを曝け出した結果なのか?
◆Petit Brabancon (プチ・ブラバンソン) 画像 / 動画
BARKSではこれまでの作品同様、メンバーのパーソナルインタビューを試みた。ミヤ、yukihiro、高松浩史に続く第四弾は、ギタリストのantzだ。先ごろ公開したミヤインタビューで「めっちゃ好きですね。すげぇ良かったです。ハマったというか」と言わしめたantz作曲ナンバーが「Loser」だ。空気を揺さぶる重低音、有無を言わせぬ音圧、吹き荒れるディストーションは、Petit Brabanconサウンドの中核を貫くと同時に、新たな可能性を押し広げた。
「Loser」「Common destiny」制作秘話とコンポーザーとしてのスタンス、yukihiroとミヤの作曲ナンバー、ライヴを重ねたことで得た手応え、そしてツアー<Petit Brabancon Tour 2023「INDENTED BITE MARK」>について訊いたロングインタビューをお届けしたい。
▲1st EP『Automata』
◆ ◆ ◆
■yukihiroさんや京さんとの会話の中で
■出たワードを曲にしていった
──6曲入りの1st EP『Automata』がリリースされることになりました。今回のEPはかなり面白い出来になっています。antzさんとしては、手応えはいかがですか。
antz:そうですね。1stフルアルバム『Fetish』よりもすごくバラエティに富んでいるなと思いますね。
──詩はもちろん全部京さんなんですけれども、曲をyukihiroさん、ミヤさん、antzさんが2曲ずつ担当していて、それぞれの作家ごとの個性が非常に出ています。antzさんの曲は一番ヘヴィというか、エクストリームな部分出ていましたね。ちょっと意外な気もしましたが。
antz:意外ですかね?
──もうちょっと変化球的な感じでくるのかなと思ってましたが、意外と直球というかPetit Brabanconの王道的な感じでした。
antz:この2曲はツアー中の節々でyukihiroさんだったり京さんだったりと会話をする中で、「こういう曲が欲しいね」っていうワードが出て。“じゃあ、そんな感じのをやってみようかな”っていうのが発端になっています。自分からこういうのを持ってこようと思ったというよりは、そういう会話で曲に対してのワードが出たので、それを形にしよう、っていうところからですね。
──そのワードっていうのはなんだったんですか?
antz:yukihiroさんからは「リフで追って行くような曲」というのと、京さんからは「もうちょっと打ち込みっぽいというか、デジタルっぽいものがあったら面白いかも」みたいな話があって。
──それがそれぞれ「Loser」「Common destiny」になったわけですね。
antz:「Common destiny」に関しては、もうちょっと打ち込みのビートが強い感じのアレンジだったんですけど、かなり変わったんですよね。
──その要望は、あえてantzさんがリクエストされたっていう感じだったんですか?
antz:“作ってみてほしい”という感じではなかったです。特にyukihiroさんとは、「最近、なに聴いてます?」とか「こんなのあるよ」みたいな、そういう話をよくするので。それは昔からなんですけど。そんな中で、「こんな曲もあったら良いよね」「じゃあ俺、試してみますね」というやり取りがあって。そういう感じです。
──antzさんから“こういう曲をぜひやりたい、絶対やりたい”っていう強い希望があって作ったというよりは…。
antz:今後も変わらないと思うんですけど、自分は必要なピースを提供し続けるというスタンスですね。バンドが求める要素を提供できればと思っているので、その延長だったという感じです。
──なるほど。yukihiroさんとミヤさんの曲が、1stアルバムのPetit Brabanconとはかなり違う曲になっているじゃないですか。
antz:そうですね。
──だから結果的かもしれないけど、antzさんの曲がPetit Brabanconの王道を担うような位置付けになっている。そういうことになっちゃったという感じが…なっちゃったという表現はあまり良くないですけど(笑)。
antz:まぁ、なっちゃったんですかね(笑)。でもバンドに必要な要素なのは間違いないと思うんですよ。このEPで新しい方向性の提示はありましたけど、そこに全てシフトしていくわけではないし。そういう新しい方向性、懐の広さみたいなものが今回、yukihiroさんなりミヤさんの曲で出たとは思います。
──「リフで追って行く曲」というワードが出てきた時に、「Loser」のわりと荒々しい、ニューメタルというか、当時のハードコアとメタルの中間にあるような、ああいうふうに荒々しい音というのが、antzさんの中でガッと浮かんできたという感じですかね。
antz:そうですね、そういう要素も出していいバンドだな、と自分も思えたので。そのワードを聞いて、イメージが湧いたというのはあったと思います。
──antzさんは個人的にそこら辺のやつはかなり聴いていたんですか?
antz:もちろん。めちゃめちゃ大好きです。ゴリゴリ行くやつは大好きだったので。そういう要素が欲しいなって、普通に思ったんですよね。
──とすると、曲自体はわりとすんなりとサクサクできた感じなんですか?
antz:どうだったかなぁ。でもけっこう、こねくり回しましたね。手グセになっちゃうとつまらないから。自分が興奮できないというか。そういう意味でいろいろいじり回して。
──自分がパッと浮かんだものをそのまま音にしても面白くない。もうちょっとひねった違うアプローチを考えたい、と。
antz:自分にないものを求めるというか、刺激を求めるという感じですね。イメージはあるんだけど、“こんなもんじゃねぇだろう、こんな簡単なわけないなぁ”みたいな。テクノの人のインタビューであったんですけど、“自分で作ったシーケンスフレーズを何拍かずらしたりすると、自分が思ってなかったようなフレーズになったりする”という話が、ずっと心に残っていて。そうやって違うフレーズを作っていくと、新たな視点で新たな展開が出てくる、みたいな話なんですが、自分もそういうのは試したりしているんです。自分がまず興奮できないとあまり意味がないので。それでボツになる曲もいっぱいあるし。やっぱり自分がまず興奮できる、アガれるっていうのがまず重要なんです。それでライヴをやるイメージができるので。
──というと?
antz:以前は曲を作るけど、“どんなライヴになるかわからない、どんなバンドになるのかわからない”っていう中で手探りでやってたんです。でもツアーを経て、“こういうふうになる”っていうイメージとか、“こういうお客さんがいて、こうなったら興奮できるだろう”みたいな想像ができるようになった。
──ライヴはまだ合計10本もやっていないと思いますが、それでもやっぱりその経験は大きかったと。
antz:そうですね、バンドとしてステージに立っている経験は、やっていない時と雲泥の差があると思います。
──なるほど。
antz:それで、最初に曲を出したそのままでいけちゃう場合もありますけど、メンバーの解釈が変わるとけっこう変わってくるので。半々くらいですね。テンションだけは持ち続けて、アレンジはあまり詰めないようにしています。良くも悪くも100%自分の思い通りにはならないので。
──それがバンドですよね。
antz:そうですね。
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