【インタビュー】UNISH、音楽、思考、言葉、そして未来
■もっと分母が大きいところで勝負したい気持ちがあって
■聴いてもらえる人が多い場所で活動したいなと思っています
――1曲ずつ聞いていきたいのですが、まず「パラノイア」はどんなイメージで作った曲ですか。
宇野:「パラノイア」は完全に“怒り”です。これはみんなの前で言っているんですけど、とある人と喧嘩した時の話です。喧嘩というか、自分に対して当たりが強いなと思ってしまったことがあって、僕はこう見えて意外と繊細で(笑)。人間味がないとかよく言われるんですけど、意外とそんなこともなく。
――知っていますよ(笑)。大丈夫。
宇野:意外と、相手のことを考えちゃうんですよね。何を思っているか?とか。だから相手が怒っていると、それをすごく感じてしまうというか、「パラノイア」は病名で、みんなから見られていると思い込む恐怖症みたいなイメージです。言いたいことがあるならもっとはっきり言ってほしいな、という思いで書きました。向こうからしたら気を使ってくれてるのかもしれないけど、遠回しに言われることが自分には一番こたえるので、“はっきり言えよ”ということです。
▲「パラノイア」
――それを直接言えないから歌にするみたいな。
宇野:そうですね。だからその時、ラッキーと思いました。これを曲にできるから。
――さすが。転んでもただでは起きない。
宇野:久々にムカついたんですよね。あまりそういうことはなくて、人に対して怒ることって年に一回ぐらいしかないんですけど、だからラッキーと思いました(笑)。
――その次の2曲目「独りぼっち」は、何を歌おうと?
宇野:実は「独りぼっち」が最後に作った曲で、「ロベリア」より前なんです。シキドロップが充電期間に入ることを公表したのは去年の7月ですが、もっと前のミーティングでその話が出た時に作ったのが「ロベリア」。時系列的に言うと、「パラノイア」があって、「ロベリア」を作って、2曲だと締まりが悪いからもう1曲出そうと思って「独りぼっち」を作った感じです。「独りぼっち」は、この曲を作った時の僕の気持ちを入れつつ、それを恋愛ものに落とし込みました。たぶんみんなもわかってくれていると思うんですが、あえて言うのであれば、察してくださいという感じですね。ただ、けっこう前向きな曲なんですよ。“素直な眼差しが私を苦しめるの”というフレーズがすごく好きなんですけど、前向きな気持ちを止めることはできないじゃないですか。僕が感じたその気持ちを恋愛ものに落とし込んだ感じです。
▲「独りぼっち」
――そして最新曲の「ロベリア」は?
宇野:これもみんなには言ってるんですけど、一時期、めちゃめちゃお金がなくなったんですよ(笑)。自分の中では昔話になってるんですけど。“自分を見失ってしまった”という感じですね。夢に向かって進んでいる自分がよくわからなくなってしまったというか、何のため夢に向かわなければいけないのか?を見失ってしまった時に、でも、まだ咲いていない花をきれいだと言えたらかっこ良いよなと思って、花が咲くまでの時間を大切にできたらいいなという曲です。
――自分に向けて話しかけるような。
宇野:そうですね。自分に対して作った曲です。もっと頑張れよ、というところですね。“夢物語だなんて、言われなくてもわかるから”というフレーズは、本当にその通りで、でもその時間も大切にできたらいいなという感じです。
――あまり自分事は書かないと言いながら、思い切り自分事じゃないですか。3曲ともすべて。
宇野:そうなんですよね(笑)。「ロベリア」は特に露骨に出ていると思います。でも僕は自分の体験談しか書かないので、作り話は一切作るつもりはなくて、ただ、あまりにも露骨すぎる曲は好きじゃないというだけで、だから少し遠回しな言い方をしてるところはあります。というか、遠回しな言い方じゃないと恥ずかしくて書けないという感じですね。
――なるほど。ちなみに「ロベリア」という花はたまたま身近にあったとか、そんな感じですか。
宇野:なぜ「ロベリア」という単語を思いついたのかというと、特に深い意味はなくて、“もう嫌な事ばかりだ”というフレーズを最初に思いついたんですよ。最近嫌なことばかりだなと思った時に、“ばかりだ”が“ロベリア”になったんですよね。
――ああそうか、韻を踏んでる。
宇野:ロベリアが先にあったわけではなくて、たまたま韻が合ったのでロベリアがいいなって。しかもロベリアの花って可愛らしいじゃないですか。有名な花でもなんでもないし、そのへんに咲いてる花だし、でもきれいだよね、というイメージとマッチして、これだと思いました。
――ジャケットもロベリアの花をモチーフにして作っていますね。
宇野:そうです。うちの嫁さんが作ってくれました。今回の3曲のジャケットは全部アーティストのhamiさんがやっています。僕、信頼してる人としかものを作りたくなくて、どうしても一緒にやってほしかったんですよね。
――良い話。今日は話せて良かったです。心も体も元気そうで安心しました。
宇野:たぶんシキドロップのファンのみんなには、悲しい思いをさせちゃっているなと思うし、ライブができずに充電期間に入っちゃったんで、みんなと会えずにこういう状態になっているのは申し訳ない感じですけど。ただ、それがあったからUNISHが動き始めたところもあったし、プラスにはとらえてほしいなと思っています。
――UNISHは、ライブパフォーマンスも含めて、今後どんな活動をしていくんでしょう?
宇野:ライブは今のところ考えてはいなくて、特に自分が歌うというシチュエーションはほぼ考えていないです。さきほども言いましたが、DJとか、音を使って遊ぶことがやりたくて、もし僕が歌うのであれば、効果音の一つぐらいのつもりでパフォーマンスしたくて、“ライブ”というものはあまり考えていないです。“セッション”みたいな感じですかね。そういうものは今後やってみたいなって、たくらんではいます。もうちょっと自由にやりたいというところはあります。
――楽しみですね。
宇野:今後のリリースも、どういう方向になるかはわからないですけど、テックハウスっぽい雰囲気はやっていきたいなと思っています。あと、名前の話でも言いましたけど、海外向けの活動も考えているので。ライブをやらないで日本でやっていくのはすごく難しいことですけど、海外向けなら可能だと思うし、もっと分母が大きいところで勝負したい気持ちがあって、聴いてもらえる人が多い場所で活動したいなと思っているので。それができる時代だと思うので、今アーティスト活動をやっているのはすごいラッキーだなと思っています。
取材・文:宮本英夫
リリース情報
2.1(wed)Release
UW-003 uwhat records / NEW WORLD RECORDS
◆https://lnk.to/UNISH_Lobelia
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事の関連情報
2022年5月のDAM HOT!アーティストは心之助、Rhythmic Toy Worldら7組
【インタビュー】シキドロップ、挑戦と冒険が詰まったアルバム『名付け合う旅路』
【インタビュー】シキドロップ、ポップなサウンドと深い内省に沈む歌詞とが鮮やかなコントラストを描く「銀河鉄道」
【インタビュー】シキドロップ、「傘」が示した挑戦と現在位置
【インタビュー】シキドロップ、こぼれおちるものに耳を澄ましながら前進する「残響」
【インタビュー】シキドロップ、現状への憂いと、次なる挑戦へのときめき
【インタビュー】シキドロップが示す、『イタンロマン』という生き方
【インタビュー】シキドロップ、闇から光へ
【ライブレポート】シキドロップの新たな挑戦