【インタビュー】Psycho le Cému、デビュー20周年記念作品に刻んだ「自分たちはやっぱり生粋のバンドマン」
■バンドならではの楽しさを感じられる曲
■23年掛かってやっとできるようになった
──皆さん、seekのおっしゃるように「もう一度、くちづけを」の演奏は難しかったですか?
AYA:僕の場合、どちらかというと得意なほうでした。最近自分がやっている音楽に近かったので。だから今回、seekのデモをいじってアレンジもやらせてもらったんですよ。最初はもう少しロック色が強かったんですけど、そこにピアノを足したりコード変えたりとかしましたね。デモのデータは、ほぼほぼループを貼っているだけの最小限の状態で、コードもずっと同じ繰り返しでシンプルだったので。もう少し広げたいなと思ったから、「いじっていいですか?」と、提案させてもらいました。
seek:俺に無いところはAYAくんが埋めるみたいな凸凹コンビのパートナー関係はもう長年ずっとあります。むしろ俺はアレンジをいじってほしいと思っているし、AYAくんはいじりたいと思っているから。
AYA:やっぱりコロナ禍で最近は、みんなでスタジオに入って音を合わせることもなくて。家でひとりつくることが多いので、ある程度ちゃんとした“図面”を書いてみんなみんなに渡さないと、イメージが食い違っちゃうんですよね。
DAISHI:ライヴアレンジを変える時もAYAくんはキチッとつくってきますよ。口でこうこうこうって説明するんじゃなくて。そういうのが楽しいお年頃なんじゃない?
AYA:あはは! 遅ない? 40歳超えとる(笑)。
seek:それもええやん(笑)。まだまだ楽しめる。今回はAYAくんが現在持っているパワーで曲のパワーを増幅させてくれた。“そうそう、これこれ!”みたいなアレンジになりました。
▲seek (B)
──ピアノのフレーズが躍動的で、印象的でした。
AYA:本当ですか? イントロはseekがデモで弾いていたギターの音をピアノに置き換えただけなんですけど。
seek:“あ、俺がギター弾いてたやつ、ピアノに変えられた”って(笑)。“ああ、そういう考え方もあるんや、すごいな”と思いましたね。それも面白かった。
──曲調は何と言ったらいいのか、ワールドミュージック的な感じですかね?
DAISHI:ラテンロックとかジャジーとか書かれることが多いですね。
seek:全く意識してなかったですけどね。
──リズムパターンはラテンとかサンバかもしれませんね。
AYA:ラテンっぽさはリズムから感じるんですね。バンドで言うとTHE BOOMさんをイメージしていて。seekが昔から聴いてるからその遺伝子があるんかなって。
seek:姫路の血とTHE BOOMの血が(笑)。
DAISHI:最近海外だと、いろいろな人種が入り混じったような音楽が流行ってますよね。
▲YURAサマ (Dr)
──なるほど。少し話が戻りますが、YURAさまがテンポを落とす提案をされたのは何故ですか?
YURAサマ:僕というよりも、全体的に“この速さじゃ、みんなで合わせられんのじゃないかな?”と思ったんです。スネアがずっと16(分音符)で入っていて、その中でのアクセントの位置がいろいろと変わっていく。印象的なリズムをずっと刻んでいる状態なんです。で、みんなもごちゃごちゃと弾くし、“この16を感じながら、バンドで合わせられる!? しかもアクセント結構変わるで?!”と思いながら(笑)。でも最終的に、思ったよりできたなと思います。しかもそれがシングル曲になり、ライヴでもメインどころに入ったし。“長年やっていると、いろんなことできるようになるんだな”とは感じましたね。
──ドラムソロはインパクト大ですよね。
YURAサマ:ありがとうございます。 ツアーの時は何も考えずにいろいろと試して毎回挑んでいました。メンバーが「今日のはあそこ良かった」とか言ってくれるんですけど、自分としては何も考えずにやっているから、一切フレーズを覚えてない(笑)。
seek:どこかの公演が終わった時に、AYAくんが「今日のこれええから、これメインにしてほしい」って言うてた。
AYA:山梨かな? よく覚えとる。“今日は良かったな”と思って。
YURAサマ:全然覚えてません(笑)。結局レコーディングの前はフレーズをちゃんと考えていきました(笑)。
DAISHI:ツアーのどれとも違った気がしますよ。でもレコーディングのが一番良かった。
seek:ソロコーナーをつくったのもAYAくんだったんですよね。最初はなかったので。
──AYAさんはどういう意図でソロコーナーを入れたんですか?
AYA:“あまりPsycho le Cémuではやらないな”と思ったので。そういうソロ回しみたいなのも、たまにはいいなと。
DAISHI:ソロ回し好きよね。ライヴのアレンジとかでも結構入れてきましたから。昔は全然せんかったよね?
AYA:昔はせんかった。でもたまに入れたくなる。あと、そんなに長いギターソロを弾きたくなかったのもあります。だからみんなに振り分けようと思って(笑)。
──皆さんの見せ場になっていますし、華やかでカッコいいです。Lidaさんはどのようにアプローチしましたか?
Lida:もう、虚無感しかなかったです。“これ、ギター2本要るか?”から始まって。AYAくんがアレンジをしてきた段階で、AYAくんのギターが既に入っているわけですよ。コードがバーッと入っていて、ピアノがメインで鳴っているし、リズムが重要でもあるし……ってなると、“俺要るか?”っていう(一同笑)。
──そこから試行錯誤したという。
Lida:楽器を変えてみるという案で、一回アコギを入れてみたらよりサンバ調になって、“ちょっと違うな”ということでカットになり。最後まで悩みつつも、“こんな感じかな?”というセッション的な感覚で隙間を縫ったり。サビでは、普段弾かないようなややこしい二拍三連で弾いているつもりです。なので、別に“無くてもいいギター”を弾いてますよ。
seek:苦労したかもしれないですけど、Lidaさんの今までにない引き出し、遊びの部分がすごく出ていると感じますけどね。今までのつくり方だと、Lidaさんがベーシックの部分を弾いていて、AYAくんが……。
AYA:“無くてもいいほうのギター”を(笑)。
seek:あはは! 色を付けるほうのギターを弾くイメージだったから。そこが今回は逆だったので。AYAくんが基盤となるようなギターを弾いていて。
Lida:そう。なので実際は自由度が高いわけですよ。歌とユニゾンで弾いているところがあったり、“ここを変えるとマズいな”というところがあったりもしながら、わりと自由に、思いつくことを弾いた、という感じでした。
seek:3番Aメロの“海鳴り”というワードのところでギターが急に出てくるのは、“Lidaさんなりに海鳴りを表現してるのかな?”とか、僕はいろいろ思い浮かべながら聴いてました。
AYA:一瞬出てくるヤツな。
Lida:“♪ピリリリリ~”っていう(笑)。あれは、もともと違う場所に入ってたのを移動させたの。“ここで歌とピアノだけになるし、そこに入ったほうがシーンが変わる感じがしていいかな”と思って移動させて……ま、別に“無くてもいい”んですよ(一同笑)。
seek:でも、あれがスパイスになってる。俺は聴いてて“お、なんか面白いアプローチしてきたな”と思ったので。
AYA:イントロも俺が弾いてるところに“ジャカ!”って重ねてきていて。これも別に“無くても大丈夫やな”っていう。
Lida:俺の中ではスタート感を出したかった(笑)。
YURAサマ:演奏する時も“来い来い来い!”って思って待ってる(笑)。
Lida:よくよく聴くとちょいちょい入ってる、そういうフレーズは僕です(笑)。最後に入れる隠し味みたいな感じで。
──各自様々な新しい試みをなさったのが、この新曲なんですね。
seek:そうですね。これって普通ならバンド然とした会話ですけど、僕らは23年掛かってやっとできるようになったんやな、と。このタイミングでそういう、バンドならではの楽しさを感じられる曲を書けたのは、良かったなと思います。
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