【インタビュー】Psycho le Cému、デビュー20周年記念作品に刻んだ「自分たちはやっぱり生粋のバンドマン」
Psycho le Cémuが11月2日、メジャーデビュー20周年を記念したミニアルバム『もう一度、くちづけを』をリリースした。同日には<Psycho le Cému「RESISTANCE~君がいる世界」>と題した全国ツアーも開幕。12月まで2ヶ月にわたって行われるこのツアーは、各会場2DAYSを実施。<Day1 少年の右目/Day2 少女の左目>と両日異なるタイトルを掲げ、今年5月にスタートした新コンセプト“RESISTANCE”のストーリーを更に推し進めている。
◆Psycho le Cému 動画 / 画像
ファンタジックな衣装をトレードマークに、演劇的な要素を大いに取り入れたライブを行ってきた彼らだが、結成23年目、デビュー20周年にして今、「自分たちはバンドマンである」というアイデンティティーをメンバーが異口同音に語り始めている。その背景にある想いや、新曲に込めたメッセージなどを深掘りした。
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■年々色気が増しているDAISHIさんの声を
■より前に出せるような曲にしたいなと
──前回のBARKSインタビューは新コンセプト“RESISTANCE”を打ち出すタイミングでお話をうかがいまして、その後、5月3日の結成23年記念日に新コンセプトを掲げた公演<RESISTANCE~覚醒の狼煙~>がLINE CUBE SHIBUYAで開催されました。そして同年7月からは<RESISTANCE~領域拡大~>ツアーが実施されましたが、一連の日々をどう振り返っていますか?
seek:以前であれば新しいコンセプトでライヴをする時、ステージにお芝居の時間が20分~30分枠で入ったりして、分かりやすく提示していたと思うんです。ところが、今回のコンセプトの場合はそれがなく。舞台演出を通してシナリオを感じてもらうという新しい見せ方に挑戦したんですよ。それがLINE CUBE SHIBUYA公演で、観てくださった方には驚いていただいたりとか、好評でしたね。
DAISHI:音楽をより聴きやすくなったというか、入り込みやすい新たなエンターテインメントになったなと思いました。
AYA:得意なところを封じると別のところが伸びてくるというか。音楽だけで勝負するようになって、普段意識しないところも意識するようになったし、良くなっている手応えはあります。僕的にはまだ手探りですけど。
YURAサマ:“自分たちはやっぱり、生粋のバンドマンだな”と改めて思ったんですよ。何だかんだ言って、バンドとして演奏している時が一番カッコいいなと。なので、“RESISTANCE”というコンセプトでは曲に重点を置いて、演奏をしていれば楽曲達が物語を引っ張っていく、というつくり方をしています。ファンの人にも、僕達の一番カッコいいところをたくさん届けられている手応えも感じていますね。
Lida:結成して23年を超えているわけですけど、幕間のコントやオープニングの仕掛けとかを削ぎ落した中で、普通に音楽ライヴとしてやってみたら、それが逆に、僕としては素直に新鮮でした。バンド感という一つの塊みたいなものがツアーの初日からあって、お客さんにもそれは改めて新鮮に見えたのかなと。“あぁ、Psycho le Cémuって、曲ちゃんとしてるんや”みたいな(笑)。それを自分らも再確認できた気がして、得るものが多かったですね。
▲DAISHI (Vo)
seek:ツアー初日の新横浜から“開いている感じ”というか、ツアーファイナルみたいな空気があったんですよ。関東近郊だけのツアーとはいえ、どの会場でもドラマがあったし。水戸や山梨へ行ったのは初めてやったし。“さぁ、旅や!”という感じはない代わりに、行き帰りの移動車の中で反省会をしながら。
AYA:ちょうどいい距離なんですよ、片道1時間ぐらいやから。
seek:ここ3人(seek、DAISHI、AYA)でワーッ!と言うて、YURAサマとLidaは黙々と運転してるっていう。
YURAサマ:“帰りの車中の反省会の反省会”をしたいぐらいです(一同笑)。
DAISHI:3人はアルコール入ってますからね(笑)。あれ何やろうな? 居酒屋とかではならん空気やな。真っ暗なのがあの空気にさせるんやろうなぁ。
seek:名古屋や大阪だと夜走りするから、自分たちに運転の順番が回ってくる可能性もあるので飲まないんですよ。でも関東近郊やったら“たぶんこの2人で運転は終わるやろうな”と。「失礼ですけど、お酒飲んでます~」って。
Lida:いやいや、最初っから飲むモードに入ってた。もう会場出た時から!
DAISHI:一人で飲むの寂しいから、AYAくんとseek分のハイボール買っていくんですよ(笑)。
YURAサマ:3ヵ所目ぐらいになると、もう申し訳なさとかないんですよね(笑)。そういう流れができてるから。
seek:毎回感謝の気持ちで……運転していただいてありがとうございます!
Lida:いやいや、車に乗ってすぐ「お疲れ様でしたー、カンパーイ!」ってやってた(笑)。
──不公平だ!ということで、喧嘩にならないんですか?
Lida:もう、別世界やと思ってます(笑)。
seek:喧嘩にはならなかったですけど、水戸の帰りかな? AYAくんとDAISHIさんが降りた後、飲み散らかした缶をそのまま置いてったのを見て、さすがにこれはマズいなと。YURAサマが怒るぞと思って、「ちゃんと反省したほうがええぞ」ってLINE送ったら……。
AYA:「申し訳なかったです」って俺は書いて送ったんですけど、DAISHIさんは絵文字のペコッていうスタンプだけで。
DAISHI:その話やめとけ! ロクな取材にならんから、本題に戻そう(笑)。
▲Lida (G)
──全部書かせていただきます(笑)。<RESISTANCE~領域拡大~>ツアーが終わったのが8月26日。新曲「もう一度、くちづけを」は全公演で披露していたんですよね。
seek:ツアー初日から、ライヴ先出しという形でやり始めました。曲についてはMCとかで全く触れずに本編ラストで披露して、そのままステージを去るというPsycho le Cémuとしては新しい演出で。レコーディング前だから、アレンジの正解も決まっているわけじゃないので、毎回変えたり。日によって変えていくドキドキ感とか、「今日の良かったから、レコーディングの時、このフレーズ感残しといてほしいな」みたいなやり取りは、普段なかなかできないので、面白かったですね。
YURAサマ:セットリストを2パターンつくっていたんですけど、ファイナルまで合わせると最終的に5パターンあったんですよ。“そんなに変える?!”と思うぐらい。“このまま行きたい”という肝になる部分は自分の中であったので、そこは動かさず、“ここは変えても大丈夫かな?”という部分をみんなで話し合って変えていったんですけど。その幅の広さというか……実力が付いたからなのか、“すごいな”と思いました。
DAISHI:やっぱり、コロナでライヴがなかなか思うようにできなかった時期を経ての、有観客ツアーって感じがしましたね。だって、あのツアーは飛ばなかったもんね?
seek:そうやな、無事に終わった時はホッとしたな。あと、水面下では次の展望が決まってきていたので、新しいアートワークの写真の準備をしていて。ツアーファイナルのリキッドルームで発表したいなと思っていたんですよ。SNSが盛んやからボタン一つで簡単に最新アーティスト写真も発表できるんですけど、“お客さんにドキドキしながら見てもらう形での告知がしたいな”と。ツアーの帰り道の車中では、ふざけてばっかりじゃなくて実はそんな話にもなっていて(笑)。それで、リキッドの会場入口からフロアの入口までの、あの長い動線を活かそうということになり。アンコールの間に、会場中に新ヴィジュアルの集合ポスターと各個人ポスターを百数十枚張っておいてもらったんです。お客さんは、ライヴが終わって扉を開けたら、入場時の景色と全く違うからビックリしてくれて。好評でしたね。そういうワクワク感もひっくるめてエンターテインメントの一つの形やと思うし。
DAISHI:B2サイズの大きなポスターを、渋谷駅の地下の柱に貼ってあるようなイメージで貼ってくれてたから、“スタッフさん頑張ってくれたな”と思いましたね。
seek:スタッフチームも久々にアナログな手法で、みんなで手づくりで演出したこと自体を「楽しかった」と言うてくれて。それがすごくうれしかったですね。
▲AYA (G)
──「もう一度、くちづけを」は、ツアーで披露するために早くからつくってあったんでしょうか?
seek:結構ギリギリで、LINE CUBE SHIBUYAでのライヴが終わってからじゃなかったかな? 「アカツキ」を出してから1年近く空いていたので、ツアーでは次の新しい曲をやりたいなという気持ちからのスタートやったと思います。
──気怠く大人っぽいムードがあり、Psycho le Cémuの楽曲としてはリズムも新鮮。プレイアビリティーが高くないと表現できないグルーヴ感のある曲ですよね。
seek:YURAサマは最初、「できひんのんちゃう?」って言うてましたからね(笑)。
YURAサマ:「テンポ落したほうがいいんちゃうかな?」とは言いました。
seek:でも、テンポは下げたくないというのが俺としては強くあって。あまりミディアムバラードみたいな印象にはしたくなかったんですよ。原曲はコロナ禍の2021年1月とか2月頃にできていて。僕的には、バンド結成23年、デビュー20年というタイミングで、改めて“Psycho le Cémuの武器って何なんやろう?”と考えた時、“年々色気を増してきているDAISHIさんの声をより前に出せるような曲にしたいな”というのが着想にはありました。
DAISHI:曲を聴いた時、僕の得意なタイプの曲調だなと。“姫路バンドマンメロディー”をちょっと感じましたね。
──すみません、それってどういうメロディーなんでしょうか?
Lida:誰も分かんないですから(笑)。
YURAサマ:DAISHIくんの中だけのヤツです(笑)。
DAISHI:僕の中だけでなんですけど(笑)、MASCHERAさんとかILLUMINAさんとか、よく聴いていた先輩バンドのメロディーにあるような哀愁を、この曲にはすごく感じたんです。言葉にするのは難しいんですけど、歌謡曲っぽい感じなのかな? seekも学生時代は先輩バンドの曲をよく聴いていたので、“その辺を聴いてないとこうはならんよな”みたいな独特のメロディーなんですよね、姫路バンドの。カラッとした青春パンクみたいな曲だと、僕、けっこう自分の歌い方に変えるのに時間が掛かるんですけど、これはスッとすぐに歌える感じでした。
seek:逆に演奏陣のほうが、たぶん大変だったと思う。
◆インタビュー【2】へ
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