【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、9thアルバムに“いつかの未来”と音楽的新機軸「シティポップを僕らしく」

ポスト
no_ad_aritcle

■月に縦孔が発見されたじゃないですか
■掘り進めると空洞があって観光地の設定

──「電脳少女」もシティポップ色が強いですね。

AKIHIDE:そうです。“シティポップといえば”っていう、滲んだ感じの音色とコーラス。ストラトキャスターの軽くてポップな音を活かしました。シティポップ感が強い曲は「UNDER CITY POP MUSIC」と「電脳少女」ですね。歌詞は疑似恋愛をテーマにしているけど、いろんなことに当てはまるのかなって。さまざまな欲望が手軽に入る世の中ではヴァーチャルな恋もあって、でも、それは決して悪いものではない。アルバムの舞台の“UNDER CITY”の中では救いでもあり、現実世界の僕らにもそういう側面はあると思うので、後ろ向きではない疑似恋愛の歌になっていると思います。

──サビがめちゃくちゃキャッチーですね。

AKIHIDE:シティポップってサビ頭の言葉のインパクトが強いんですよね。“ディスプレイ ガール”っていう言葉がうまくハマったなって。ちなみに、ミュージックビデオのスマホ画面の女のコのアイコンは、実は僕の顔を女性にしてもらったんですよ。

──やっぱり。似てるなぁと思ったんです。

AKIHIDE:ははは。僕なんです。AKIKOっていうコードネームが付いてるんですが、完成に至るまでプロトタイプをいっぱい作りましたよ。スマホの中の彼女に歌わせたら電脳というテーマにも合うなと思ったんです。


──「UNDER CITY POP MUSIC」と「電脳少女」に至る前のイントロダクション的なインスト「Elevator Song」は、SF映画の音楽のようで幻想的です。英語と日本語のボイスがLRチャンネルに入っていますが、この曲が地下世界への入り口なんですね。

AKIHIDE:僕、ディズニーランドが大好きなんですが、行くと英語と日本語の解説が一緒に流れていたりしますよね。ああいう雰囲気でエレベーターが降りていって、日常から非日常の街に移るみたいな曲にしたいと思ったんです。例えるとアトラクション“スター・ツアーズ”に乗るような(笑)。曲が途中でテンポアップするのは、最初はゆっくり降りていくんですけど、だんだんスピードが上がって深いところに潜っていくイメージですね。

──ギターソロはシティポップというよりも、ピンク・フロイドみたいだなって。

AKIHIDE:ソロはロックな感じにしたいと思っていて、おっしゃるように’80年代というより’70年代のイメージだったかもしれないですね。エコーをエフェクター接続順の前のほうでかけているんですけど、そうすると音がちょっと濁るんですよ。わざと分離の悪い音にしている。そういうこともあってピンク・フロイドっぽいのかもしれないですね。

──なるほど。今作ではAKIHIDEさんが描いた“UNDER CITY”の世界観マップも見ることができますが、曲を作る前から地図の構想があったんですか?

AKIHIDE:確かマップは途中で作って、みんなに見せたら「これがジャケットでいいんじゃない?」って盛り上がったんですよ。


──ちなみに「UNDER CITY POP MUSIC」ミュージックビデオの地下都市は、街が逆さまになったみたいに見えたんですが。

AKIHIDE:あれは上から吊り下がっているんですよ。月に縦孔があることが発見されたじゃないですか。そこに入れば基地が作れるんです。エレベーターで掘ったあたりが縦孔のもとで、さらに掘り進めると空洞があって、そこが観光地になっているみたいな設定。もともとは映画『ブレードランナー』みたいな世界観が頭の中にあったんです。

──わかります。「Elevator Song」を聴いた時、『ブレードランナー』を思い出したので。

AKIHIDE:大好きな映画で、ミュージックビデオに出てくる看板にもそういう要素を入れているんですよ。近未来的だったり、オリエンタルだったり、不思議な日本語が出てくる雑多な街が舞台になっている作品じゃないですか。“烏口”という看板も『ブレードランナー』のオマージュだし、ジャケットにネオン管を使っているのもそう。「Elevator Song」のアナログシンセとアルペジオの組み合わせも『ブレードランナー』テーマ曲に触発されていますね。

──掘れば掘るほど楽しめるアルバムですね。「赤い鳥籠」はもっと地下の深くに潜っていく印象のある曲です。

AKIHIDE:意図的にシティポップとは違うちょっと暗い感じの曲を作ってみました。ただ、ベースにヒップホップとかで知られる808(’80年代のリズムマシーン)を使っているので、今まで僕が作ったダークな曲とは違って、重低音がブンブンいってますよね。

──特にエンディングのギターソロ裏のシンベの音が暴力的ですよね。フレーズは歌詞とリンクしていて舞い踊るイメージというか、アラビア音階を使用してます?

AKIHIDE:ソロはフレーズもスケールも中東の雰囲気に持っていきたかったので。中盤のソロは、そのニュアンスを出すために、実はものすごいスピードでフレット上を左右に動かしているんですよ。ヴィブラートのように上下ではなく、横に揺らしているというか。

──振り幅の大きな横揺れビブラートという感じでしょうか。

AKIHIDE:そう。それをすごく速く細かくやっているんです。人力で面白いことをやってみたかったので。


──「サカサマの月」は和の世界観で、これまでのAKIHIDEさんのソロプロジェクトに通じる楽曲ですね。

AKIHIDE:「サカサマの月」はワンコーラス目の歌詞で自分に嘘をついていて、ツーコーラス目で本音を歌っているんです。水面に反射しているサカサマの月と偽りの気持ち、月を見上げた時の別れたくないと思っている素直な気持ちの対比ですね。

──6曲目の「Spy Summit」はフュージョントラックですが、アルバムの中では少し異なるポジションでしょうか?

AKIHIDE:もともとはライブイベント<Being Guitar Summit>用に書き下ろした曲で。<Being Guitar Summit>が10周年で、僕のアルバムも同時進行で制作していたから関連づけた曲があったほうがいいかなと思って書いた曲です。タイトルを「Spy Summit」にして音の奪い合いみたいなニュアンスにしました。

──スライド、ワウ、ワーミーなど、何人もの人格を持つようなギターソロの掛け合いも聴き応えがすごい。

AKIHIDE:<Being Guitar Summit>には、増崎さん、五味さん、柴崎さん、僕がいるんですね。そこで、いつもの4人のギタリストが集まって、各自がここを弾いたら面白いかなってコードとかアレンジを分けて作った曲なんです。だから、この音源では自分が4人いるようなイメージ。それぞれのソロについては、おっしゃるようにワーミーやワウ、スライドなど、変化をつけて別人格のような感じでギターを弾いています。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報