【インタビュー 前編】KAMIJO、アルバム『OSCAR』が一大巨編な理由「書き終えたときに考えさせられたのは人生」

■ワーテルローの戦いで誰が利益を得たか
■史実に見出す人もいるかもしれません

──突き詰めれば突き詰めるほど、新たな発見は出てくるものなんでしょうね。そして、勇壮なオーケストレーションで始まる「Symbol of The Dragon」へと続きます。

KAMIJO：これは2020年2月にリリースしたシングルをリテイクしたものになりますね。このアルバムの中では、登場人物にナポレオン・ボナパルトが出てきて、フランス革命最後の戦いであるワーテルローの戦いを舞台にしているんですけども、そこでナポレオン・ボナパルトはサンジェルマン伯爵から「負けろ」という理不尽な指示を受けて、それに従って負けるんですね。

──それは史実ではないですよね。

KAMIJO：史実ではないです。それによって、このストーリーの中では、クリムゾンファミリーという一族が強大な力を持ってしまうわけなんですけれども、なぜワーテルローの戦いでサンジェルマン伯爵はナポレオンにわざと負けろと言ったのか。それは歌詞にある通り、ルイの将来のため、未来を繋ぐため、でしかないんですけどね。


──サウンド的な面では？

KAMIJO：シングルではV-Drums(電子ドラム)やサンプリングを使っていたドラムが生ドラムになったことで、大きくパワーアップしましたね。LEVINさん(La’crima Christi)のスタジオlab.Lでご本人にチューニングしていただいて、YUKI(Versailles)が叩いて。この曲に関しては歌もリテイクしました。僕は2019年からスフィア製のマイクを使っていて、それ以降の5枚のシングルはそれで録ったんですが、今回は以前使っていたノイマン製U87に戻してみたんです。そうしたら、やっぱり全然抜けが違ったんですよね。「Eye of Providence」だけは当時のテイクが気に入ってたのでそのままなんですが、他のシングル曲はすべて録り直しました。

──“Symbol of The Dragon”とは、何を表すものなのでしょう？

KAMIJO：ワーテルローの戦いに敗れたナポレオン・ボナパルトを、ロンドンにいるクリムゾンファミリーの元に「預かって欲しい人間がいる」と言って、サンジェルマン伯爵が連れて行くんですね。そこでクリムゾンファミリーの一族は、ナポレオン・ボナパルトか死なないことに気づくんです。それで、自分たちも彼のような永遠の命が欲しいと、何代にも渡って、ナポレオンの体を使って、山奥の収容所で研究し続けるんですね。その間、その研究所からは、ドラゴンのような叫びがずっと響き渡っていた。

──なるほど、“Dragon”ですね。

KAMIJO：結局、なぜサンジェルマン伯爵が預けたかというと、クリムゾンファミリーは自分たちの欲のために、ナポレオンが生きていることを公にせず、自分たちだけが永遠の命を手に入れるために研究材料にするだろうと見込んでいたからなんです。そして、現代にまた彼を引き取るという算段だったんですね。そういったストーリーがあるんですが、僕が著した小説の中でも描いている通り、ナポレオンが戦いに勝つためのジンクスのようなものがあって、それが龍のように声を張り、大きな声で叫ぶということなんです。“Symbol of The Dragon”の由来はそこですね。

──聞けば聞くほど、物語に秘められた出来事が浮かんできます。歌詞にある“青き血”は貴族の象徴であり、それに対する“赤き血”は人間の血という解釈になりますよね。

KAMIJO：はい。あとはストーリー上は敵になっている人間の欲を表現した一族の名前がクリムゾンファミリーということから“赤”という意味もありますし、裏テーマとしては、ワーテルローの戦いで誰が一番利益を得たのかという史実に、その意味を見出す人もいるかもしれませんね。

取材・文◎土屋京輔
撮影◎逸見隆明／Lestat C&M Project

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