【インタビュー 前編】KAMIJO、10年の集大成『LOUIS XVII』を語る「表現不可能なものは何もなくなりました」

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KAMIJOが1月31日、ニューシングル「美しい日々の欠片」と、ライヴBlu-ray & DVD『LOUIS XVII』を2作同時リリースする。新曲「美しい日々の欠片」は、愛する人を失う絶望を歌った冬のバラードだ。 切なく囁くような歌い出しは叙情的であり、感情の起伏をなぞる転調の嵐をはじめとしたアレンジの構築美はKAMIJO作品ならではの仕上がり。ソロデビュー10周年を経て、自身のルーツと理想を具現化した渾身の一作の誕生だ。

◆KAMIJO 画像 / 動画

一方のライヴBlu-ray & DVD『LOUIS XVII』は、ソロ10周年記念公演となった2023年8月28日のZepp Shinjukuワンマン<KAMIJO Solo 10th Anniversary Special Live「LOUIS XVII」>の模様を余すことなく収録したもの。豪華声優陣の演技と贅沢なバンドメンバーの演奏、そしてKAMIJOの歌で繋がれたルイ17世のフルストーリーは10年の集大成といえるベストライヴであり、その細部まで没入できる仕上がりだ。

2023年を『第74回NHK紅白歌合戦』のYOSHIKIステージで締め括ったKAMIJOは現在、<NEW VAMPIRE IS BORN>と冠した東名阪ツアーを開催中。タイトルが示すように、ルイ17世に続く新主人公の登場は完全オリジナルストーリーの幕開けとなった。この新章を前に、ライヴ映像作品『LOUIS XVII』でこれまでを総括し、シングル「美しい日々の欠片」に未来をみるロングインタビューを前編と後編の二部構成でお届けしたい。まずはその前編、ライヴ映像作品『LOUIS XVII』から。


   ◆   ◆   ◆

■ルイ17世と歩んできた10年の歴史と物語を
■ベストなライヴの形で表現したいと思った


──2023年8月28日に行われたZepp Shinjuku公演<KAMIJO Solo 10th Anniversary Special Live>が、『LOUIS XVII』として映像作品化されます。始動から10年をかけて、一つの作品を作り上げたということになりますが、本作のコンセプトでもあるルイ17世にまつわるオリジナルストーリー自体は、活動する中で書き足してきたんですよね?

KAMIJO:そうですね。ただ、最終目的地だけは最初に決めていたんです。僕は元々、LAREINEというバンドをやっていましたが、“La reine”とはフランス語で女王、つまり、マリー・アントワネットを意味する言葉なんですね。そしてVersaillesというバンドを経て、今がある。だからこそ、ヴェルサイユ宮殿の中に住むブルボン家のファミリーの方々の物語を描いていきたい思いが最初にあったんです。そこで、自分なりに歴史を深掘りしていく中で、ルイ17世という悲劇の少年に出会い、“これしかないな”と思ったんですね。孤独と共に生きたその少年を演じようと、僕はソロ活動をスタートさせました。

──ルイ17世の生涯のどこに一番惹かれたのでしょう?

KAMIJO:存在してはいけないところですね。物語の中では、生存しながらも彼は死んだことになっている。その時代とは違いますけれど、僕にも自己肯定の真逆のような気持ちがあって。“僕なんかが歌っていていいのかな”と思うこともあるんです。だからこそ、すごくルイ17世に共感できた。それもあって、史実では10歳で亡くなってしまった少年を輝かしい未来に導きたい……女性だったらシンデレラストーリーという言葉がありますけれど、虐げられていた男性が王になる話があっていいんじゃないかなと思ったんです。実際に書き始めてみると、現代社会の中での虐待だったり、エネルギー問題だったり、いろいろなものと自分の中でリンクしていったんですね。それらがすべて盛り込まれたのが、この『LOUIS XVII』という映像作品になりますね。


──ストーリーに引き込まれるんですよね。小説を読んで面白いなと思うのと同じ感覚を、『LOUIS XVII』として作品化された今回のライヴを観た後に覚えたんですよ。虐待やエネルギー問題といった着眼点を盛り込んで、独自の物語に仕立てていったところも興味深かったですし、取り組む意義も感じました。ただ創造的な欲求を満たすためだけのものであるなら、それこそ史実をそのままなぞるだけのほうが簡単だったと思うんです。

KAMIJO:そうですね。でも、現代社会において自分自身が伝えたい、自分にできることを表現したい思いがありましたし、それは自然と盛り込まれてきましたね。

──それはやはりソロ活動だからこそできるものですか?

KAMIJO:ここまで一つのストーリーで、完全に一本通すっていうのは、バンドではちょっと難しいかもしれないですね。やっぱりメンバーが表現したいことも、バンドだったら表現してあげたいですし、歌いたいですし。そういった意味では、ソロでなければできなかったことだと思います。

──そして始動から10年間、少しずつ積み重ねて、一つの作品に仕上げた集大成が『LOUIS XVII』だったわけですが。これまでの全楽曲の演奏のみならず、やりたいことを際限なく詰め込もうと思えば、もっといろんなことを形にしたかった…というのが正直なところだと思うんです。

KAMIJO:ストーリーに沿って全曲を作っているので、確かにそういった部分はあります。でも、自分で言うのもなんですが、客観的に自分を見ることができるほうだと思っているんですね。だから、どんなKAMIJO作品が観たいかな?と思ったときに、8月28日のライヴに初めて来られた方にも、ルイ17世がどんな人生を歩んだのか、フランス革命がいかに興味深い出来事だったのかを、ある程度わかりやすく伝えられる作品にしたい、という思いのほうが強かったんですよね、自分のすべてのエゴを出すことよりも。

──現状の出来うる限りのことで、より最適な形は何かということですよね。その中で一切の妥協も排したライヴだった印象です。それはおそらくマネジメントもプロデュースもすべて自分でやっているKAMIJOさんだからこそ、実現できたのだろうなとも思いました。

KAMIJO:もちろん、そういったバックオフィス的なこともあるんですけど、脚本を書く、映像を作る、といったところを自分でやっていなければ、表現できないライヴでした。


──『LOUIS XVII』を観るだけでも、いかに細かなところまでこだわって作ったライヴだったのか、すぐさまわかると思いますが。自分自身で改めて映像を見返してみると、どう感じるんでしょう?

KAMIJO:まず、10周年を迎えるに当たって、“ずっと応援してくださっているファンのみなさんと、どんな素敵な時間が過ごせるだろう?”と考えたんです。こういった区切りでは、ベストアルバムをリリースされる方も多いと思うんですね。もちろん、そういった形も素敵だと思いつつも、僕はファンのみなさんと作ってきた10年の歴史、ルイ17世とKAMIJOとで背中合わせで歩んできた物語を、ベストライヴと言って過言ではない形で表現したいと思ったんです。ただ、曲を演奏するだけではなく、今までが連続ドラマだったとするならば、それを1本の映画のように表現しようという意気込みで。先ほどの話と重なりますが、もちろん、この曲も入れたい、あの曲も入れたいという思いが最初はありましたが、すべては目的達成のために排除していって。

──なるほど。

KAMIJO:実際にステージに上がって感じたことは、やっぱり間違ってなかったなっていう確信。それも得られましたし、歌いながらも、常に“どうだ! どうだ!”という気持ちしかなかったんですよね。僕はバンドでもソロでも、作り込んだライヴをやりますけど、大暴れさせたり、じっくりと聴かせたり、いろんな形がある中で、“自分はこれだ”という形が作れた手応えが、その“どうだ!”という気持ちに表れていたんじゃないかなと思います。

──ソロ活動を始めてからここに至るまで、バンドメンバーは何度か変わってきましたよね。この映像で参加しているHIRO (G / La'cryma Christi)、YUKI (G / Rayflower, ex.Λucifer)、IKUO (B / BULL ZEICHEN 88, Rayflower)、shuji (Dr / ex.Janne Da Arc)の4名はどういった観点で起用したんですか?

KAMIJO:1990年代の日本メジャーシーンにおいて、楽曲で勝負していた人たち。歌謡曲、ポップスなど様々なジャンルがありますけれども、ロック畑から出てきて、そういったものと真っ向勝負していた、その空気感を知ってる人たち。そういう人たちと演らせていただくことで、メロディーを中心とした楽曲たちが、しっかり映えるだろうなと思ったんですね。あとはシンプルに一緒にやりたかった方々。この二つですね。

──それぞれKAMIJOさんとの交友関係はあまり見えてこないんですね。たとえば、「仲のよい友達に頼みました」といった軽い感覚のものではない気がするんです。だからこそ、きちんとした考えのもとに選んでいるのだろうと逆説的に思うんですよ。

KAMIJO:そうですね。以前はどちらかというと、身近な仲間とかにお願いすることが多かったですし、ソロではありますけど、バンドに近いような見せ方をしていた時期もありました。ただ、今回はサポートに徹していただくっていうのが、大事なテーマでもありましたね。

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