<改造ギターコンテスト>結果発表、圧巻の珍品・逸品・迷走作品
TC楽器主催<改造ギターコンテスト>の受賞作品が公開された。2022年もまた、全国から素晴らしい逸品・珍品・名品・絶品の数々が寄せられ、関係者の腰を正面から砕けさせている。
2022年4月に応募開始がアナウンスされ、4ヶ月強の期間を経て8月31日で応募は締め切られた。どうやら、その間に全国の猛者達はギターの改造・製作・リファイン…と、試行錯誤に明け暮れていたようだ。今回の<改造ギターコンテスト2022>では100を優に超える応募作品から上位24作品がセレクトされ、そこからグランプリ及び協賛13社による各賞が選出されることとなった。
見事グランプリに輝いたのは、Cooper-Dさんによる「強風により路線変更」と名付けられたテレ・シェイプの一本だ。ボディがバッキリと真っ二つに割れているが、それをざっくりとプレートでつなぐというパンキッシュな作りとなっており、事故物件を強みに変えるというアートのような一本だ。TC楽器のスタッフいわく「修理して元に戻そうとするのが我々中古楽器店員の当たり前の発想なので、こういう考えは全く頭になかった。トラブルを強みに変える逆転の発想にヤられた」と感服、文句なしのグランプリ決定となった。
▲グランプリ:Cooper-D作「強風により路線変更」
他13協賛各社の受賞作品は以下の通り。ちなみにBARKS賞は、溶接片手に1年もの期間をかけて作り上げたという、「いきすぎたDIY」さんによる「IRON V」。あり得ない重量と脳天気なLEDがおバカ加減を加速させているように見えるが、実は極めてストイックにギター作りに取り組んだ意欲作であり、そのあたりの笑える苦労エピソードを皆さんにお伝えしたく、本人への突撃インタビューを掲載させていただいている。ぜひともチェックを。
▲BARKS賞:いきすぎたDIY作「IRON V」
【グランプリ】
Cooper-D作「強風により路線変更」
洒落た感じに改造しようと塗装などして、ベランダで乾燥させていたボディが強風に煽られ3Fから落下して真っ二つに!しかしそんなアクシデントをも味方にして?独自の存在感に仕上がっています。金属製の留め具の穴を上手く利用して取り付けられたヴォリュームとトーンも見事なアイディア。通常なら元通りに直そうとするところ、この逆転の発想には脱帽です。偶発的な出来事を含めドラマを感じさせてくれた作品でした。
【ギターマガジン賞】
Igaaa・pop作「E・C」
クラプトンが愛用した“ブラッキー”と、レイド・バック時代に使用したエルボー・カットのエクスプローラーを合体させた本器。なんと“思いつきで1週間で作ってみた”そうですが、ザグリもしっかり埋められているうえに、メイプル・ネックのヘッド付け根にはあの煙草の焼き跡まで! 2つの名器を合体させた大胆な発想には本人もびっくりでしょう。
【BARKS賞】
いきすぎたDIY作「IRON V」
ネックからボディまで全て鉄で作られたフライングV。枠部分しか無いのに重量は6kgという常識を逸脱した存在感。何度も挫けそうになりながらも猛暑の炎天下の中で溶接を繰り返したという、偏愛が注ぎ込まれた逸品。まさにワンアンドオンリーの出来栄えは、誰の追従も許さない。「ふざけた作品と思われているみたいですが、至って真面目です(笑)」と笑う「いきすぎたDIY」さんの制作秘話インタビューも必読の内容だ。
【インタビュー】<改造ギターコンテスト>BARKS賞は戦車のような鋼のV…その名も「IRON V」
【AKIMA&NEOS賞】
Johnny AC/DC bad作「レッドスペシャルZO-3」
「見た瞬間にこれだと思った」というインパクトで選ばれた作品。マホガニーで覆われたボディにバインディングも付けられ、手にした質感もばっちり。このかわいいルックスの裏に制作の熱量が窺える。もちろん各ピックアップのオンオフスイッチとフェイズスイッチも搭載され、アーティスト愛に溢れたモデル。
【荒井貿易賞】
かずきち作「SB-605」
ぱっと見ると4弦にしか見えないのに良く見ると5弦、という良い意味での違和感が、次第にカッコよく見えてくる作品。Pタイプのピックアップが2つ、リバースでマウントされ、シリーズ/パラレルやアクティヴ/パッシヴの多彩なコントロールスイッチがお洒落にレイアウトされている。トップにはパイン剤のツキ板が貼られアーリーアメリカンをモチーフにしたという塗装が独自の存在感を生み出している。
【エフェボー賞】
谷村尚紀作「イタリアの最高傑作3号 Italian Blue」
DiezelのVH4とBOSSのTR-2が豪華にも内蔵されたギター。それぞれを匂わせるノブが取り付けられた外見からも興味をそそられる。キルスイッチも搭載され、かなり凶悪な音から不思議な音まで楽しむことができる。
【キクタニミュージック賞】
鉄オタNAO作「アンモナイトギター」
アンモナイトの化石が埋め込まれたアンモナイトギター。シンプルながらセンスの良さを感じさせる作品。本物のアンモナイトと知らずとも、一見してかっこ良さを感じさせてくれる。
【キョーリツ&ダダリオ賞】
高楼みる作「"Jaggler" ver.KC」
ジャンク状態だったというセルダーの左用のSTタイプをベースにリバースしたカートモデルの雰囲気を盛り込んでいる。追加されたフローティングトレモロに加え、本来のシンクロトレモロも使用できるなど、至れり尽くせりの機能満載だが、お金をかけないことにも拘って組み上げられている。
【スタジオペンタ賞】
万年初心者作「BIG stag」
圧倒的なインパクトを放つ鹿の角が取り付けられたモデル。ボディに反響板を取り付け音色を変化させたいとの思いから行われた改造だそうだが、見た目の存在感も強烈さを放っている。ブリッジに取り付けられた角は動かすとビブラートアームとしても使うことができる。
【SOLID BOND賞】
R.K.作「鬼鳴りグレ丸」
なんとアンプとスピーカーを内蔵させてしまったというフルアコ。ファズも搭載されていてハードなサウンドを出すこともできる。ジャンクのグレッチをここまで攻めた点が評価された。面白いのは他のギターを繋ぐとアンプとしても使用できるということ。ギターとギターが繋がっているというシュールな光景を楽しむこともできる。
【ネクストトーンギタートレーディング賞】
西脇一博作「「畳」の漢字型エレキギター」
代々続いている本職の畳屋さんが作ったという本格仕様。本物の畳を使って「畳」の漢字の形にデザインされている。まずはその大きさと重さに驚かされるが、本当に演奏に使われているから凄い。実際にピッキングの跡が畳についていて、和風のレリック感?を生み出している。ヘッドには柔道場で使われている畳が貼られるなど、細部まで拘って作られている。
【バードランド賞】
よっくん【Guitar】作「飛ばねぇ豚はただの豚だ ~弾いてみな!飛ぶぞ!~」
ピグノーズのギターをベースにヘッドレス化、ファンフレット仕様など至れり尽せりの改造が施され、マルチエフェクトとステレオアンプまで内蔵されている。ボディサイドに上向きに取り付けられた2つのミニスピーカーがステレオサウンドを出しており、弾いていて気持ちいい。塗装とトップの木目もうまくマッチしていてゴージャスな質感を生み出している。
【フリーダムカスタムギターリサーチ賞】
Salty guitars作「自家製トレモロ載せ玉虫色レスポール」
ギター本体に穴など開けることなく取り付けられるように作られたブラス削り出しのトレモロユニットが取り付けられている。簡単に元のテールピースに戻すこともできるという画期的な逸品。弦はテールピース部でロックでき、ブリッジにはオクターブ調節可能なローラーサドルが用いられるなどチューニングの安定面での拘りも充実。「玉虫色」というオリジナルカラーにゴールドパーツもマッチした即戦力な一本。
【モリダイラ楽器賞】
Imaginos作「ジャズベから作ったジャズマスター」
Jazzと言うからにはブランコテールピースの方がいいのではないか?そんな発想から制作された作品。手頃なJMタイプのボディがなかなか入手できなかったため、JBのボディを切ったり加工したりしながら作られたという。それがかえって独自の存在感を生み出している。JBタイプのピックガードに追加する形で作られたアルミのガードも効果的で全体的に秀逸なデザインに仕上がっている。
◆【インタビュー】<改造ギターコンテスト>BARKS賞は戦車のような鋼のV…その名も「IRON V」
◆TCP楽器<改造ギターコンテスト>オフィシャルサイト