【コラム】daisuke katayamaが照らす、人生の岐路の光
日々は選択の連続であり、それによって人生が大きく左右されることもある。もしあのときああしていなかったら今の自分はなかったかもしれないし、あのときこうしていたらもっと違う人生を歩んでいたかもしれない。ついついたらればを考えてしまうのは、我々の人生は分岐点の連続で構成されていると無意識のうちに自覚しているからだろう。
すべての交差する道に陽が射しますように…daisuke katayama 2ndフルアルバムのタイトル『THE SUNNY ROAD JUNCTION』にはそんな願いが込められている。同作には少しの恐怖を伴い、エキサイティングであり、刺激的な一歩である“分岐点”に立つ主人公の目線で書かれた10曲が集まった。
daisuke katayamaは29歳で富士登山をきっかけに自然に魅せられ、デビュー10周年を迎えた2020年10月に「今の自分の本当の気持ちで素直に音楽をやって、素直に生きていきたい」という思いから本名である現在の名義に改称。それ以降、日本中や東南アジア、カリブ海など旅をしてキャンプや山登りなどを行うライフスタイルと密接な音楽を制作するようになった。
ゆえに歌詞には「千里」の《地平線の空に 連なる雲の峰》や「トリニダーの冒険」の《赤や黄 色鮮やかな 家がならぶ 旧市街と広場》、「wagon」の《見渡せば荒野とブルームーンライト ひと気もない》などといった旅の風景が綴られているのはもちろんだが、それ以上に心の奥にじっくりと向き合っている描写が多い。つまり彼は旅をして自然に触れていくことで、自分自身や大切な人、過去など様々な事象に思いを巡らしていると言い換えられる。
例を挙げるならば、先行リリースされた「enren」。タイトルは「炎」と「恋」が掛けられており、歌詞には焚き火のように消えゆく恋のもどかしい心情が描かれている。薪を焚べすぎると燃え上がってすぐ燃え尽き、薪を焚べないと冷めて消えてしまうという焚き火を通して、恋人との関係性を見出した彼だから描くことができた世界観だ。人間の核心を突きながらも在り来たりな表現にならず、さらにロマンチシズムを伴う音楽が生まれるのは、彼が自然と向き合い、静寂に耳を澄ますようにおのずと神経を研ぎ澄ましているからだろう。夜空に火の粉が舞い上がっていく様子を想起させる、粛々と紡がれるガットギターの優しいアルペジオとパーカッションの音色が織り成すサウンドデザインも非常に効果的である。
今作もアレンジを担当しているのはサウンドプロデューサーのGIRA MUNDO。彼は長年J-POPフィールドで幅広く活躍するだけでなく、2006年にブラジルで2枚のアルバムを制作するなどブラジリアン・ミュージックにも造詣が深い。日本のポップスに精通しながらグルーヴィなサウンドメイクを得意とする彼が、アレンジャーとして参加するというスタイルは、日々の暮らしと旅を両立させるdaisuke katayamaの生活に通ずるものがある。
旅の経験を綴った「トリニダーの冒険」は異国情緒あふれるサウンドで聴き手をキューバの古都・トリニダーへと連れ出し、「うつろ」では丸みを帯びたアコースティック色の強いサウンドで夢うつつの世界へといざなう。《気を抜けば明日が怖いだろう/気を抜かなきゃ今がキツいんだろう?》という歌詞が胸をえぐる「居酒屋地球」はひとりの夜にフィットするミニマルなリフレインが心地よく、チルなローファイサウンドとウクレレで彩られた「ぬるま夜」はラップも相まってスタイリッシュかつセンチメンタルなトラックに仕上がった。
ガットギターの立体的な音とストリングスがドラマチックに展開する「Starry」はまさに深い森で感じる大地の呼吸と星空の輝き、さらには《見上げた君の表情が/何より輝いたから/その光を守りたいんだ》という強い意志と深い愛情が音に昇華されている。それぞれの楽曲で主人公の見ている景色や心の在り方が一切の誤魔化しなく存在する…それは雄大な自然を目の前にしたときの人間の姿そのものと言っていい。
そんな様々な世界を見て感じてきた彼の生活が表れた10曲を味わったあと、心のなかに熱を帯びた鉱石のようなものが残った。その正体は彼の「自分のままで生きたい、自分の選んだ道を一歩ずつ歩いていきたい」という意志と願いではないかと思う。彼は旅を重ね、自然と接することで、それまでに気付かなかった自分と出会ったのだろう。それが彼の人生の充実へとつながっている。そんな彼から生まれたポジティブなエネルギーが音楽と化し、日々人生の岐路を迎える我々を明るく照らす。『THE SUNNY ROAD JUNCTION』、タイトルに偽りなしである。
文◎沖さやこ
初回生産限定盤
通常盤
daisuke katayama 2ndアルバム『THE SUNNY ROAD JUNCTION』
通常盤(CD) ESCL-5723 3,000円(税抜)
1.千里
2.enren
3.トリニダーの冒険
4.うつろ
5.ぬるま夜-Album mix
6.wagon
7.Starry
8.居酒屋地球
9.Gluttony
10.Sunny road
Blu-ray Disc(初回生産限定盤)
<daisuke katayama Streaming Live 2021>
Part1
1.Morgenrot
2.FOREIGN LAND
3.ギターマン
4.いつだって。
5.Fly
6.OYASUMI LANTERN
Part2
7.LANDER
8.コスモグライダー
9.Free
10.メドレー
11.AKATSUKI
12.FOREIGN LAND
13.World is mine
14.Moshimo
15.Morgenrot
〈MUSIC VIDEO〉
Starry -Director's cut
<Acoustic Journey 2022 THE SUNNY ROAD JUNCTION>
東京 duo MUSIC EXCHANGE
開場 18:30 / 開演 19:00
[問]duo MUSIC EXCHANGE / TEL:03-5459-8716
前売り¥5,000(税込/ドリンク代別) 席種:全自由
https://eplus.jp/sf/detail/3738130001-P0030001
2022年12月15日(木)
大阪 Music Club JANUS
開場 18:30 / 開演 19:00
[問]Music Club JANUS / TEL:06-6214-7255
前売り¥5,000(税込/ドリンク代別) 席種:全自由
https://eplus.jp/sf/detail/3738150001-P0030001
◆daisuke katayamaオフィシャルサイト