【インタビュー】Klang Ruler、レトロウェーブなサウンドで現代の若者の閉塞感を歌った最新曲「Set Me Free」
ソロワークやプロデュース業でも注目を集めているトラックメイカーyonkeyが、幼馴染達と結成したバンドKlang Ruler(クラングルーラー)。メンバーチェンジを重ねていく中で、昨夏、ファッションデザイナー/ソロアーティストとしても活躍するやすだちひろと、YouTubeのフォロワー数20万越えのギタリストGyoshiが加入し、現体制に。彼/彼女達と同じく新世代アーティストとコラボレーションをするカバー企画<MIDNIGHT SESSION>が話題になるなか、昨年12月に発表したカバー曲「タイミング ~Timing~」が、Billboard TikTok 2022年上半期チャートで1位を獲得。MVの再生数も400万回を突破と大きなバズを生み、各所から熱い視線を注がれている。初登場となる今回は、バンドの成り立ちから、個性派だらけの各メンバーが音楽の道を歩み始めた経緯、さらにはレトロウェーブなサウンドで現代の若者の閉塞感を歌った最新曲「Set Me Free」についてまで、幅広く話を聞いた。
(写真右から:Vo.yonkey、Bs.かとたくみ、Dr.SimiSho、Gt.Gyoshi、Vo.やすだちひろ)
■音楽を見つけるまでは公園でゲームやっているような感じで先が見えなかった
■音楽をやりたいという思考に切り替わってからはすぐにスタジオで練習
──yonkeyさんを中心に幼馴染で結成されたそうですが、SimiShoさんは隣の家に住んでいたそうですね。
yonkey:はい。バンドを組んだのは高校3年生の頃だったんですけど、近いから誘ったっていう感じでしたね(笑)。一緒に音楽をやっていたわけでもなかったので。
SimiSho:夜に家の前で話したりしていて。そのノリで「バンドやる?」みたいな感じでした(笑)。
──yonkeyさんは以前から音楽をやっていたんですか?
yonkey:そうです。僕は習い事でクラシックピアノをやっていたんですけど、バンドを組むまでは、曲を作ったりとかはしたことなかったんです。
──なぜまたバンドをやってみようと思ったんです?
yonkey:自分でも曲を作ってみたいと思えるアーティストに出会ったのがキッカケでした。Skrillexとかが好きだったんですけど、やるならひとりじゃなくて、仲間と一緒にやりたいなと思ったので、じゃあバンドやるかって。なんか、ロックバンドというよりは、ダンスミュージックが混ざっているようなものがよくて。その当時はいろんなジャンルをやってみようみたいな感じで始めたのが、今のバンドです。
▲Vo. yonkey
──SimiShoさんは特に音楽はやっていなかったんですね。
SimiSho:小学校の時に地域の和太鼓をやっていたぐらいです(笑)。
yonkey:ドラムに決めたきっかけがそれなんですよ。
SimiSho:個人的にはベースとかやりたかったんですけど、yonkeyに「お前、和太鼓やってたからドラムね」って。でも、ちょっと自信はあったかもしれないですね。和太鼓やってたしっていう。
yonkey:高校生特有のなんでもできる精神で(笑)。で、そのときのメンバーで同じ専門学校に行きました。音楽をイチから勉強していこうってことで。
──結構思い切りましたね。その場の勢いとか盛り上がりだけで終わるのではなく。
yonkey:僕に関しては、そういうものをずっと探し求めていたところがあって。音楽を見つけるまでは、ずっと公園でゲームをやっているような感じで、先のことがいまいち見えなかったんです。音楽をやりたいという思考にパっと切り替わってからは、すぐにスタジオに入って、みんなで練習して、みたいな感じになっていきました。
──yonkeyさんはSkrillexの名前を挙げていましたが、SimiShoさんはどんな音楽が好きでした?
SimiSho:高校生のときはUVERworldさんをずっと聴いていました。バンドを組む前から、yonkeyとか他のメンバーと一緒にライヴを観に行ったりして、バンドのかっこよさみたいなものに惹かれていて。そこで自分もバンドをやりたいなっていう気持ちになっていきました。
──その次に加入されたのが、かとさん。yonkeyさんとSimiShoさんとは専門学校のオープンキャンパスと出会ったと。
かとたくみ(以下、かと):軽音楽部の先輩が、僕らの通っていた専門学校に進学していたので、「どうですか?」って聞いたら、「一回オープンキャンパスに来てみたら?」って言われて、高校2年のときから行ってたんですよ。そこから少し間が空いて、高3になって久々に行ってみたら、知らない奴らがブイブイ言わせていて。
▲Vo. やすだちひろ
──ブイブイ?(笑)
かと:我が物顔でオープンキャンパスにいたんで、何だコイツら!? 俺より後に来たくせに!って(笑)。だからちょっと近寄り難いなと思っていたんですけど、制服を着ているところを見られちゃって、「あれ? 学校一緒じゃん」って。
SimiSho:知らなかったんですよ、同じ高校だったのを。
かと:コースが違っていたんで。で、その日がお泊まりオープンキャンパスみたいなやつで。授業を受けた後にみんなでバーベキューして、泊まって、次の日も授業を受けるっていう感じなんですけど、同じ部屋になっちゃって。そのときにyonkeyから誘われた感じでしたね。ベースがちょうど抜けちゃって、探してたみたいで。でも、最初はちょっと、なんていうか、同じ学校の人と会いたくなかったんですよ(笑)。
──(笑)。なんでそんな嫌だったんです?
かと:あんまり学校が好きじゃなかったんで(笑)。でも、話してみたら良い奴だなと思ったし、当時の楽曲はまだ程度としては良くなかったと思うんですけど、熱意がすごかったんです。当時僕が入っていた軽音部の誰よりもすごかったので、こいつ本気だなと思って。あと、当時の目標も同じだったんですよね。「The Beatlesを越えよう」っていう(笑)。同じことを言ってる奴を初めて見たので、やろうかなと思って加入しました。
──目標は「The Beatlesを越えよう」だったんですね。
yonkey:はい(笑)。The Beatlesって音楽をやっていない人でもすごい人達だって知ってるじゃないですか。でも、それぐらいの感じだったというか。特に知識もなかったので(笑)。
かと:トップになりたいっていうね。
yonkey:そうそう。やっぱりそれぐらいの初期衝動は必要だと思って。やっていくとわかるんですけどね。いかにThe Beatlesが偉大なのかっていうのが。
──Klang Rulerの楽曲はスタイリッシュだけど、メンバーのみなさんの内面は実は熱かったりするんですか?
yonkey:最初の頃のライヴは熱い感じではありましたね。今も内面は熱いんですけど。
かと:当時は漏れ出てたよね。漏れ出てたというか、出してたというか。そういうものをすべて爆発させる感じの曲をやっていました。
──だいぶ音楽性は変わったんですね。
yonkey:まぁ、2015年からやっていますからね(笑)。時を経て音楽的な趣味も変わってきたし、知識を得て行く上で、たとえばこういう年代感の曲を作ろうとか、狙って作れるようになってきたし。そこは年々変わっていったと思います。
▲Gt. Gyoshi
──だけど、根っこにある気持ちは変わらないと。
yonkey:そうですね。そこは持ち続けてやってます。
──かとさんはどんな音楽好きだったんですか?
かと:音楽を始めたのが中学2年の頃だったんですけど、そのときはRazihelとかKlaypexとか、ダブステップのアーティストを聴いていて。そういう音楽を作りたいなと思って始めたんですけど、同級生のチャラめな奴に「音楽やってるんだろ? バンドやるからベースやれよ」って言われて。その日とか、その次の日のうちぐらいにベースを買いに行かされて、結局バンドはやらなかったんですけど。
──えっ?
かと:だからベースが置き物になっちゃっていて、もったいないから高校で軽音部に入ったんです。そこから高校の先輩とか、軽音部のコーチだったジャズドラマーの今村健太郎さんに過去の音楽を教えてもらって、いろいろ掘るようになりましたね。Klang Rulerに入るときは、The Beatlesとか、The Velvet Undergroundとか、Snarky Puppyとか、いろんなジャンルの音楽を聴いていました。
──そこから活動をしていく中で、やすださんとGyoshiさんが2021年7月に加入されたわけですが、その前にカバー動画シリーズの<MIDNIGHT SESSION>に参加したり、主催イベントでサポートをされていたと。先に参加したのがGyoshiさんで、3人が通っていた専門学校の1学年上だったそうですね。
Gyoshi:誘ってもらったときは、私はバンドをやっていなくて、ひとりでYouTubeにギターのカバー動画をアップしていたんですけど、それを観てくれたみたいで。学校では全然というか、私はあまり学校に行ってなかったので(笑)、そこまで接点はなかったんですけど、存在は知っていました。深夜練っていうのがあって、私は一回も入ったことないんですけど(笑)、それに毎週入っていて。私が朝出かけるときに、みんなが疲れ果てた顔で帰っていくところを見たこともあって。
yonkey:毎週金曜日は朝までスタジオが使い放題だったんですよ。ただ、警備が厳重で、スタジオから一歩も外に出られないから、朝まで強制的に音楽をしないといけない部屋みたいな(笑)。そこに毎週籠っていました。
かと:俺らだけしかいない日とかも結構あったよね?
SimiSho:あったねぇ。
yonkey:深夜2時ぐらいに1回限界が来るんですけど、それを乗り越えて始発までなんとか、みたいな。
──すごい状況ですね。そういう姿をGyoshiさんは目にしたことがあったと。
Gyoshi:みんな学生のときからすごく頑張ってたし、Klang Rulerのライヴを観に行ったりもしてたんですよ。普通に応援していたから、最初にギターが抜けるって聞いたときはすごく驚いて。自分が入るかどうかすごく迷ったんですけど、やっぱり音楽性もすごく好きだし、加入できるんだったらしたいなと思って。そこから最初はサポートで<MIDNIGHT SESSION>に参加しました。
──Gyoshiさんと音を合わせた感触はいかがでした?
yonkey:僕らのバンドって、ギターのサウンドはすごくロックなものを使うわけでもないし、わりと繊細なサウンドメイキングが要求されるんですけど。でも、リファレンスを出したときに、しっかりそこにあててくれるサウンドを作ってくれたり、フレージングもいろいろなパターンを持ってきて、これがいいんじゃない?って僕が選んだり。ディスカッションもしやすいし、制作もスピーディーに行くようになりました。
──器用なタイプのギタリストなんですかね。
yonkey:そうだと思います。歪みの音もしっかり作れると思うし、今流行りのクリーンだけど雰囲気のあるようなサウンドメイキングも素晴らしいなと思っていたので。入ってくれて嬉しいです。
──そんなGyoshiさんはどんな音楽が好きだったんですか?
Gyoshi:ギターを始めたきっかけは、アニメの『けいおん!』でした。それまではK-POPとか、どちらかというと楽器中心の音楽はあまり聴いてなかったんですけど、アニメを観て、ギターかっこいい!って急に思って、高校2年の途中から軽音部に入って。そのときはアニメソングとか、ELLEGARDENさんとかがめっちゃ好きでした。上京して専門学校に入ってからは、海外の音楽とかも勉強できて、Red Hot Chili Peppersとか、卒業してからはTom Mischにめちゃくちゃハマって、クリーンサウンドとかも弾くようになりました。
──そして、やすださんはPOLYというソロプロジェクトで活動していた中で声をかけられたと。
やすだちひろ(以下、やすだ):私は元々別のバンドでベースをやっていたんですけど、解散しちゃって。でも、音楽はやめたくないし、自分でできることを増やしたいからやってみようと思って始めたのが、POLYというソロプロジェクトで。でも、歌うのは得意ではなかったんですよ。憧れは昔からあったんですけど、上手じゃないから諦めていて。でも、ひとりでやるには歌も入れないと形にならないと思って始めたところ、最初は<MIDNIGHT SESSION>のコラボ相手として声をかけてもらいました。
──コラボしてみていかがでした?
やすだ:コラボもそうですし、一緒にスタジオに入らせてもらったときに、バンド自体の空気感とか、意欲的な姿勢とか、音楽に対するコミュニケーションがすごく取れているのを間近で見て、やっぱバンドってめっちゃいいな!って。そうやって高まっている中でお話をもらったので、本当に私でいいのかなっていう気持ちもすごくあったんですけど、こんな機会はないなと思って、入ります!って。
yonkey:僕らのバンドは、男女デュエットとか、サビで僕とちひろさんのオクターブで2声になっている楽曲が多いんですけど。僕としては、僕の声と混ざったときの感じとか、僕らが作るサウンドに、ちひろさんの声がすごくハマるなと思って。コラボを一回やったときに、先のことがすごく見えたんですよね。こういうオリジナル曲を作って歌ってみてほしいなとか、次々に浮かんできたので、一緒にやれたらいいなって。
──やすださんはどんな音楽が好きだったんですか?
やすだ:私は音楽というよりも、音楽を自己表現としてやっているような方が好きで。本当にレジェンドですけど、安室奈美恵さんとか宇多田ヒカルさんとかBoAさんとか、ファッションも音楽もライフスタイルもすべて楽しんでいる様子だったりとか、エンターテイメントとして人生を生きている人に憧れていたのが、音楽を好きになるきっかけだったんです。私、出身が兵庫の下町で、周りに楽器とかバンドをやっている人がいなかったから、音楽を歌うことは想像がついたんですけど、音楽を作るというのが想像に至らなかったというか。クラシックピアノをやっている人はいたし、私もやっていたんですけど、ポップスのほうが好きだったので、あまりのめり込めなくて。
──そこから音楽をやってみたいと思うようになったのは?
やすだ:上京してからアパレルショップで働いていたんですけど、先輩にライヴとかフェスに連れて行ってもらうようになって、音楽をやる側に行きたいっていう気持ちが芽生えました。元々憧れていたのは歌う人だったんですけど、やっぱりどうしても歌が得意とは思えなくて。それで、ベースってかっこいいなっていうフィーリングだけで始めて、バンドも始めたっていう感じでした。そこからいろんなことがあって、ボーカルとして誘ってもらえたんですけど、その当時もまだ歌に全然自信がなかったんです。ひとりで始めたときも、オートチューンをゴリゴリにかけてやればいいや!っていう精神だったので(笑)。正直、私がKlang Rulerのボーカルとして自信を持てたのって、「タイミング ~Timing~」からなんですよ。
──「タイミング ~Timing~」は大きなバズを生んだわけですけども、そこで自信がついたと。
やすだ:はい。でも、バズったから自信がついたというよりは、初めて自分の歌に対して良いコメントがたくさんもらえたんです。それまでは自分の歌声が嫌いで、コンプレックスだったんですけど、男性ボーカルと女性ボーカルの声の相性がめちゃくちゃいいとか、声を褒めてもらえるコメントを初めて受け取れて、私でいいんだ!って思えて。そこからポジティヴに取り組めるように、根本的なマインドが変わったかもしれないです。
◆インタビュー(2)へ
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