【ライブレポート】Non Stop Rabbit、笑い・勇気・感謝全部盛りのツアーファイナル「こんな生き方をする俺たちを他人事だと思うな！」

人気YouTuberとしても活躍中のNon Stop Rabbit(以下、ノンラビ)が、9月15日、東京・EX THEATER ROPPONGIで＜無自覚とは言いつつ多少は自覚がある天才ツアー2022＞の最終公演を行った。喜怒哀楽の全てとノンラビらしさを注ぎ込んだ、全身全霊のワンマン。ライブ終盤では、幻となったあの豊洲PITを含む全国ツアーも発表された。

◆ライブ写真

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマが高らかに鳴り響く中、客席に向かって手を上げながらステージに登場した田口達也（G,Cho）、矢野晴人（Vo,B）、太我（Dr）。3人が位置に着いたところで、まずは今回のツアータイトルにもなった「無自覚の天才」のインストだ。高まる気持ちをギリギリのところで保っているような3人のプレイに、オーディエンスが一体となって送る手拍子が重なってものすごいグルーブ感。


ファイナルにふさわしい幕開けから1曲目「ALSO」へ。楽曲の勢いに合わせ、ドラムセットの下に仕込まれた8基の照明がぐるぐると回転していてまるで生き物のよう。この日はメンバーも何度か話題に出していたが、オープニングのレーザーや歌詞と連動した色やアイテムなど、照明の演出がかなり効果的に使われていた。オーディエンスの盛り上がりを前に晴人が思わず「最高！」と笑顔を見せた「乱気流」も、会場の広さを生かしたダイナミックな光の効果が印象的。「明るい歌」、「私面想歌」、「TABOO」と続き、文句なしに盛り上がりつつもしっかりとメッセージを伝える選曲で前半5曲を駆け抜けた。


最初のMCでは、今回のEX THEATER ROPPONGIという会場、そして六本木にまつわるトークを始めた3人。晴人は事務所の先輩のライブ、達也は裏方のアルバイトをしていた時代に舞台を観にここへ来たことがあるらしく、笑いを交えながらではあったが、そのステージに立てていることが感慨深い様子だ。

太我はYouTubeのチャンネル登録者数が1万人になったお祝いで事務所の社長に高級焼肉に連れて行ってもらうことになったが、その数日前に垢BANされたエピソードを披露（笑）。達也は「そんな思い出深いホールですが、ここに連れてきてくれたファンの皆さんへの恩返しも含めてしっかり盛り上げていきたい。普段はこんな序盤にやりませんが、盛り上げると言ったら下半身からと思いまして（笑）」と、狂騒の「Pant voice」へ。「誰が一番エッチか決めようぜ！」（晴人）なんて叫んでいたのに、次の「BIRD WITHOUT」では、心折れそうになっても自分らしく進めというメッセージを真っ直ぐにぶつけてくる。そこから「夏の終わり」、「恋愛卒業証書」という切ないラブソングに突入したこのゾーンは、楽曲としての振り幅と彼らの根本的な魅力がストレートに伝わってくる見事な構成だった。

引き続き六本木の思い出トークが繰り広げられ、矢野家のカエル失踪話なども飛び出したMCのコーナーを経て、次のパートは「偏見じゃん」、「推しが尊いわ」といったノンラビらしいユニークな着眼点が光る2曲で盛り上がる。ところが曲終わりに警報のような音が鳴り響き、メンバーが黒い男たちに連れ去られるというハプニング。人数の関係なのか太我だけ自ら捌けて行く姿がシュールだったが（笑）、再びステージに戻ってきた達也は全身青タイツ、晴人は全身黄タイツ。



2人は「豆知識」のミュージックビデオ同様の衣装で歌い始め、続いて燕尾服の太我も登場だ。髪を振り乱して指揮棒を振り終えた次の瞬間、服を左右に引き裂かれると全身赤タイツに変身というオチも大成功となり（笑）、なんだかクセになるあのユルーいステップを踏みながらミュージックビデオの世界観を再現していた。3人は「恥ずかしい！」を連呼しながら着替えに戻って行ったが、舞台裏からの生トークによると太我の衣装は達也が作ったらしく、SNSにアップされていたミシンの映像はこういうことだったのかと納得。彼らのDIY精神は笑いにも全力だ。


この日はノンラビがテレビアニメの主題歌を担当している『転生賢者の異世界ライフ』の作者・進行諸島氏も来場されているということで、「もし2期があったとしても、これで主題歌の話はなくなりましたよね」、「あいつら、タイツ履くもんなってよぎるから（笑）」、「アニメの世界と合わなくなっちゃう（笑）」、「たまたまなんですよ！いつもはこんなこと、しないんですよ（笑）！」、「いや、いつもの方がこんなんやろ（笑）」と、口々に弁明しまくる3人。そこから達也が「じゃあ、かっこいいとこ見せて帳消しに」と空気を切り替え、テレビアニメ『転生賢者の異世界ライフ〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜』の主題歌として書き下ろした「無自覚の天才」を披露した。イントロのギターリフを筆頭に、爆発的なキャッチーさが光るノンラビの最新作だ。

「三大欲求」、「ハニートラップ」もサビの存在感は圧倒的。帳消しを上回るほどのパフォーマンスを見せつけた3人だったが、MCのコーナーになった途端に「ジャンボリミッキー！」を踊り出してまたもや振り出しに（笑）。とはいえこれは、ここから始まる怒涛の盛り上がりゾーンへのウォーミングアップということで、「アンリズミックアンチ」からの4曲はオーディエンスもタオルを回してジャンプしつつ、達也と晴人は楽器をマイクに持ち替えツインボーカルで暴れまくる。声を出すことはできないが、ライブってこうだったなという感覚が実感として戻ってくるような熱気が会場に渦巻いていた。


最後のMCで達也は「今日はよく来てくれました。本当にありがとう。どんな規制があろうとも、こうしてたくさんの人の前でライブができて、皆さんの顔を見るとものすごく活力、パワーが湧いてきます」と感謝を伝える。その上で、これまで大きなハコでライブをやらなかったことも、さらに言うとメジャーデビューしたことも、そして2020年の豊洲PIT中止も、全部自分たち自身で決めたことだからと胸を張った。

「これからもそうしていきたい。みんなにもそうであってほしい。誰かの意見が重要か？　あの時言うこときいとけばよかった？　そういう時もある。でも俺たちは、自分で選んで後悔したい。だから今回もEX THEATER(ROPPONGI)を選んだ。たくさんの人をもう呼んでいいんじゃないか。東名阪、回っていいんじゃないか。ダメと言われたって、俺らがいいと言ったらいいんだよ。そんな気持ちでここに立っています」と会場を見渡し、「優等生なんかクソ喰らえ。俺たちは今後も優等生なんかでいたくないし、誰かに決められたくないし、自分で選んでいたい。そんなことを考えた時、やっておかなきゃいけない場所があるなって思った」と切り出し、進むために中止を決めたあの豊洲PITをファイナルとする全国ツアーを、来年開催すると発表した。


「またここから、素敵な思い出づくりを始めていきましょう！　こんな生き方をする俺たちを他人事だと思うな。お前らも同じ。優等生にならなくていい！」と叫び、ここまで支えてくれたみんなへの感謝を改めて伝えていた。そんなメッセージを込めた「優等生」のエンディングでは、声援と歓声の代わりにみんなのスマホのライトがステージに向けられ、ラストの「PLOW NOW」ではステージから飛ばされた3色のテープがキラキラと輝きながら客席に降り注いでいた。


途中のMCで達也は「本当に欲しかった時間を失ってしまった気がした」と振り返っていたが、コロナ禍にあっても自分たちの決断を信じてやってきたからこそのツアー、そしてこのファイナルは、バンドにとって大きな自信になったのではないだろうか。1月27日の愛知・ボトムラインから3月11日の東京・豊洲PITまで計8公演が行われる全国ツアー＜PITやんなきゃ始まらねぇだろTOUR2023〜あの日と違う事はたった一つ、俺たちはメジャーアーティストになった〜＞。今回発表されたこのツアーに挑むことで、Non Stop Rabbitとファンにとっての正しい時間がまた動き出すはずだ。

取材・文◎山田邦子
写真◎菊島明梨