【インタビュー Vol.3】ASH DA HERO、アルバム『Genesis』で高らかに宣言「新たな革命を起こしにいく」

■なに遠慮してんの？来いよって感じ
■お互いに引き出し合えるチーム感

──けしかけ役のNarukazeは、自分のギタープレイのテーマは？

Narukaze：自分の場合、プレイに時間を掛けるよりも音色選びに時間を掛けるタイプなんですよ。「New Revolution」とか「Genesis」とか「エゴイスト」あたりは、あまり他の人が使わないような音色で、そこでひとつ個性を出せたと思っていますね。あと「Avengers」もそう。曲にうまくハマった音を作れるとプレイも冴えるし、プレイヤーとしていいですよ、やっぱり。自分が弾いている以上、自分でも何回も聴きたい作品にしたいじゃないですか。過去には、録ったけどあんまり聴かないなっていうのもけっこうあるんで（笑）。でも今回は満足度が高い。

──過去のいろんな経験もあるから、勢いで突き進むだけじゃなく、完成度をさらに高めることができたわけですか。

Narukaze：そうですね。レコーディングならではの楽しみ方もすごくできたと思います。



WANI：対して俺のドラムは、けっこう勢いを重視してます。ASH DA HEROに加入する前に、いろんなアーティストのサポートドラマーをしてきたけど、サポートに徹するために自分をちょっと抑えるという期間を過ごしてきたんで。そういう部分がASH DA HEROのメンバーになってからも自分に残っていて。合宿のときに「WANIさんはそうじゃない。ドン！と来るリズムで」とか「違うだろ」ってASHとNaru君から言われたんです。そこで、“…あっ、俺は完全に自分を忘れてた”って思い出させてくれた。“そうだ、俺は勢い重視で主張するドラマーだった”って本来の自分に戻ったんです。レコーディングだからといって丁寧に叩くわけでもなく、今回のアルバムはあえて勢いを大事にしました。

ASH：いや、本当だよ、すごい勢いが出た。だってレコーディングでクリックとズレてるんだもん（笑）。

WANI：クリックのモニター音を小さくして、ライブ感覚で叩くっていう。

Sato：ベースはドラムと一緒にレコーディングしたんだけど、やっぱり同じフレーズでもデモとはだいぶニュアンスが違ったんです。WANIさん独特の呼吸というのがあるから。そこに一番気持ち良く合わせられるように、自分の弾き方を含めてベースでどう呼吸していくかって。

ASH：最高最高。レコーディングだからってクリックなんかに合わせる必要ないから、マジで。

──バンドサウンドはメンバー全員が同じタイム感で突っ走っていれば、カッコいいから。

ASH：マジでそう。今回のアルバム、クリック聴いて録った歌なんて、1曲もない。全部バンドのサウンドを浴びて歌ってるんですよ。だから、“デモのときよりリズムが速いな”とか“このテンポだと歌のニュアンスもちょっと変わるな”とかもちろんありましたよ。でも最高にカッコいいバンドサウンドなんで。



──その変化を楽しんでいた？

ASH：俺は、オケが出来上がって最後に歌を入れるという、まあ、サッカーのストライカー的なポジションなんで。みんながパス回しでつないでくれたものを、最後にドーンとゴール決める役まわり。練習のときよりパス回しが速いし、オーバーにボールを上げてきてるなとかもあった。だからと言って、ラフという意味ではないんです。歌入れ本番では、0.1secみたいな世界で歌のリズムの正解を出す作業もしていて。エンジニアさんが「今のテイク、良かったよ」とか言っても、「ごめん、もう一回。バンドサウンドに俺の歌が合ってないから、もう一回やらせてください」って俺が言うわけですよ。歌入れでは、そこに一番こだわった。0.1秒の差は自分にしか分からないかもしれないけど、その差はリスナーの耳に曲が入っていったとき、感覚的に大きな違いになってしまうから。

──バンドで歌うってことにこだわってますね。ずっとバンドをやりたくてもできなかった7〜8年間だっただけに。

ASH：バンドっていうのは、ものすごくわがままになれるんで。さっきのWANIさんの話じゃないけど、「なにを遠慮してんの？ もっと来いよ」って感じでお互いに引き出せる。お互いに遠慮することなく、わがままに言えるチーム感。それがバンドの素晴らしさだと思うんで。それを感じながらアルバムを形にできました。


──『Genesis』は、ASH DA HEROがバンドとして呼吸を始め、激しく鼓動を打ち、そして熱量を高めながら新しい側面も見せていく。コンセプチュアルな作品ではないのかもしれませんが、ものすごくストーリーも感じさせますが？

ASH：そうですね。そのために曲の並びは最後の最後まで考えました。結果として1本のストーリーを描き出すアルバムになったなと思います。「Rain on the roof」までの流れが、ASH DA HEROの現在地と未来みたいなところで。「Rain on the roof」には、意訳的に“雨宿り”という意味を持たせているんです。ここでもう一度、自分自身や僕ら自身を見つめ直す中で、新たなアイデンティティや夢を獲得していく。そこが『Genesis』という物語のひとつの転換地点なんです。そして最後は「世界をぶん殴れ」で、みんなで世界をぶん殴りにいこうぜっていう。そのぶん殴った先で、再び「Genesis」にループして戻るっていう流れがある。

──5人で世界をぶん殴りにいく。

ASH：なぜ、世界をぶん殴ろうと思ったのかと言ったら、俺たちはこうやって新たな革命を起こしていくんだって宣言でもある。そういうアルバムです。曲順どおりに聴いてもらっても楽しめるし、順番を逆にして聴いてもストーリーがつながるような作品。ある種、メビウスの輪のようにずっとループできる、そしてストーリーもずっと循環している。それが作為的ではなく無作為に生まれたってところが、このバンドのすごく運命的な化学反応だなと。奇跡的なアルバムになったと思うし、こういうアルバムを待っていた、というものが作品として形になったと思いますね。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎堅田ひとみ






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